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返事

部屋に戻ってからウダウダと机に突っ伏している。ブライト王子のことではない。あれ以上は大人たちがいいように纏めるだろうし私に出来ることはやった。


それよりもケビンのことだ。好きだと告白されて、それに対する返事を明確にしないといけない。私は『好きだけどそれは家族として』だと思っているけれどそれは逃げているだけなんじゃないんだろうか。



「ねえ、ミーナ」


「なんですか」


「ミーナはこいに なやんだことありますか?」


「・・・はい」


「・・・わたし、なんてこたえるのがいいのか わからないんです。ブライトおうじには はっきりこたえられたのに・・・」


「・・・わたしも、言いたいことを言えずにここに来ました」



ミーナが私の向かいに座るとぽつりぽつりと話始めたのはここにミーナが来た理由だった。



「私には、婚約者がいます。彼は同い年で趣味も合うしとても優しくてハンサムで素敵な方で私はとても彼のことが好きなんですが・・・私じゃなくて、私の姉が好きなようなんです」



なんでも、遊びに来る度にミーナのお姉様と仲良く話すのにミーナとはぎこちなく一言二言しか話してくれなかったのだという。



「卒業したら結婚する約束でした。貴族の結婚なんて愛がなくてもしなくてはいけない・・・。そんなことは分かっていたのに、私は我慢もできず、かといって彼に真意を問いただす勇気もなく、父が先代様と親交があったという理由だけでこちらを訪ねてきたのです」


「・・・そうだったんですか」


「・・・お嬢様と会えたことは得難いことで、ありがたくて、うれしいと思っていますが、なにもしなかったことは後悔しています。だからお嬢様は思っていることを相手の方にそのままお伝えしてください」


「・・・ありがとうございます。ミーナ」


「いいえ」


「・・・ミーナもはなしてみたら、どうですか?」


「・・・お嬢様にはなんでも分かってしまいますね。誰かにそう言って背中を押してほしかったんです。私も、1度話をしてみようと思います」



そう言って顔をあげたミーナはとても綺麗だった。私も、ちゃんとケビンと向き合おう。ミーナに図書室に行ってくると告げて部屋を出る。きっとミーナも少ししたらお母様のところに話をしに行くだろうから私は部屋を出ていた方がいい。それに、なんの約束もしていなかったけれどケビンも図書室に来るはずだ。


中に入ると誰もいない。いつもの定位置のクッションに身体を沈めて考えるのはケビンのこと。



「・・・たすけたい、なんて、ごうまんなんでしょうけど・・・」



あんなに小さく丸まって泣いている姿を見て何も思わないでいられるわけがない。だってケビンは大人びてるけどまだ10歳だ。多少、病んでしまっていたとしても、それだけで彼を遠ざける理由にはならない。



「まほうつかいか・・・」



怪獣を助ける魔法使いをケビンは私に求めたし、私もそれでいいと思っている。彼の魔法使いになるためには、やっぱり私に力が必要だと思う。これから先、ケビンの前の家族が何かしてこないとも限らない。そのときに、対処できるだけの権力と知識がいる。



「・・・ケビンがこうしゃくに なったらなんだかんだと まとわりついてきそうだし、くちだししてくるかもしれない」



嫌な思いをさせることになるだろう。それは嫌だった。だって、そこから抜け出して家に来てくれたのにそれじゃ何も変わらない。



「・・・ケビンにも、ぜんぶ、はなそう」



当主になろうと思ってることも、何もかも話そう。そうと決まればあとはケビンが来るのを待つだけだ。いや、あと10分だけ待って、来なかったら探しに行こう。あの絵本で魔法使いは怪獣の元に出向いて行ってたのだから。


そう思ってから5分ほど経って扉が開くとケビンが中に入ってきた。その顔はどこか緊張している。



「・・・やっぱり、ここにいた」


「はい。おへんじを、しにきました」


「・・・うん」


「わたし、おにいさまのことは、かぞくとして、だいすきです。たいせつだとおもいます。でも、おとこのことして すきかといわれたら・・・わかりません」


「・・・わからない?」


「ブライトおうじには はっきりいやってことわれました。でも、わからないんです。おにいさまのことは、すきだけど、かぞくあいだけなのか、そうじゃないのか。でも、おにいさまのこと、まもりたいって おもいます」


「スカーレット・・・」


「・・・わたし、とうしゅになろうと、おもってます」


「・・・うん」


「おにいさまの まえのかぞくが なにかしてきたときに、わたしがとうしゅなら かれらは まとわりついてこれない はずです。それに、わたし、おとうさまの しごとに きょうみがあるんです!」


「・・・ふふ、あはは」


「おにいさま?」


「スカーレットが当主になれば、絶対にブライト王子は手出しできなくなるからそうなればいいのにって思ってたのに、まさかスカーレットがそう言うなんて思わなくて・・・。それに、分からないってことは、まだ男として好きになってもらえるかもしれないってことだよね」


「ま、まあ、そう、ですね?」


「・・・僕も、少し変わりたいって思った。スカーレット以外の全部が壊れてもいいって思ってたけど、そしたらスカーレットまで壊してしまうよね。だから、スカーレットの大切なものを僕も少しは大切にできるようになりたい。守りたいって言ってくれた君に相応しくなりたい、君をちゃんと大切にできるようになりたい・・・だから・・・少し、離れることにする」


そう言ってお兄様は笑った。








ここで、とりあえず幼少期は一区切りです。長々とお付き合いいただきありがとうございました。次回からは学園生活編になります!

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