教えてください
投稿直後に少し加筆しました。申し訳ありません
本を持って部屋に戻る。ミーナにはもう休んでもらうことにしたから部屋にはいない。自分で招待状を引き出しにしまってどうするか少し考える。
「ステファンけ・・・たしか、こうしゃくだって、おじさまはいっていましたね・・・」
レイチェル様に聞いてみれば何か教えてくれるだろうか。ジョン様でもいいけれど、タイミングもあんまり無いし、お父様に話が行って心配されるかもしれない。それはレイチェル様でも同じだろうか?うーん・・・でも彼女が1番リスクは少ない気がする。今度、叔父様の家で勉強するときに聞いてみよう。でも、一体いつになるのやら・・・。
「・・・4さいが できること すくないなあ」
持ってきた本を読む気にもならずに机の上に放置してなんとかゲームの内容を思い出そうと試みるものの何も思い出さない。だから少し現状だけで推察してみよう。
「かぞくに なじめない・・・かあ」
そもそもヤンデレになる原因がそれだ。公爵家、つまり家ではそんなことは少なくとも表面上は無いはずだ。エレーナお姉様とは軽口を交わしているところもみるしトパーズお姉様とも仲良くしているし、お母様との仲も悪くない。お父様のことはサナト様って呼んでいるけど別段会話は普通だった。だから少なくとも現段階でヤンデレになる要因が家にはない。
「・・・・・・かぞく?」
そこでようやく、はたと気がついた。ケビンお兄様には、まだステファン家という家族がいることに。
「・・・もしかして・・・」
『家族になじめていなかった』というのがフェイバー家のことじゃなくてステファン家のことだとしたら?
「こっちをかいけつしてもステファンけが、どうにもならないかぎり・・・」
お兄様のヤンデレルートはほぼ確実だろう。これは、のんびり次におじい様の家に行ったら、なんて言っている場合じゃないかもしれない。家族関係は時間が経てば経つほど解決が難しくなる。
「・・・いちか、ばちか」
記憶が戻ってから安全な道ばかり選んで来ていた。誰ならバレないか。どうすれば王子と婚約しないで済むか。どうすれば自分がケビンお兄様にひどい目にあわされないで済むのか。自分が自分がだった。幼女のスペックだからと言い訳をして何にも、攻めて来なかった。魔法使いになるって約束したのに。
「・・・おとうさま」
きっと、お父様は全部知っている。その上でお兄様を連れてきているはずだから。記憶が戻ってから、今日が1番頭が冴えている。行くなら、今日しかない。そんな気がした。
「・・・よし」
そっとドアを開けて周りを見渡すとお父様の部屋を目指す。この時間ならまだ起きているはずだ。メイドも寝静まる時間帯だ。廊下には誰もいない。もしかしたら、ガーネットがつけているかもしれないけど、そんなことは今はどうでもいい。
お父様の部屋のドアの隙間から光が漏れていた。まだ起きているんだろう。そっとノックするとやや間があってから返事があった。
「誰かな?」
「スカーレットです。おとうさま」
「・・・スカーレット?」
ドアが開くとお父様が立っている。私ひとりだけだとは思わなかったのか驚いたような顔をすると私の身長に合わせて屈んでくれた。
「どうしたの?怖い夢でもみちゃったかな?」
「・・・どうしても、ききたいことが、あるんです」
「・・・入って」
私の真剣な顔に何かを察したのか部屋に入れてくれた。ソファに私を座らせると自分も横に座る。エリックの姿も見えないからきっとひとりで仕事をしていたんだろう。
「聞きたいことってなあに?」
「・・・おにいさまの、まえのおうちのことを、おしえてください」
お父様は深くため息を吐いた。話しにくいことだろうとは思っている。まして、4歳児に聞かせる内容でもないだろうことも反応から察せられる。でも、今日答えてほしい。普段は身体に引っ張られているのか、なんだか思考や行動がやや幼児退行している自覚は十分にある。明日もこんなに頭がフル回転してくれるという保証はない。だから今日は引き下がるつもりは一切ない。
「・・・どうしてか、理由を聞いてもいい?」
「・・・いままでの、おにいさまのこうどうが、おねえさまたちと、ちがいすぎるんです。サファイアのおにいさまとも、ちがってて、なんだか、わたしに ずっといてほしいような かんじが します」
どうして今さら気がつくのか。叔父様の言葉が原因なのか分からないけれど、考えれば考えれるほど、ケビンお兄様の行動は行きすぎている。妹が可愛いだけならトパーズお姉様にだって同じことをしていいはずだ。それなのに、トパーズお姉様にはそういうことはなさそうだった。
「・・・スカーレットには、分からないこともあるかもしれないよ?」
「いいんです。おしえてください」
私の顔を見るとため息を吐いてお父様は左手を軽く上げると追い払うような手の動きをした。人払いをしたのだろう。代りにエリックが控え室の扉から出てきた。
「聞いていたよね。後はお願い」
「かしこまりました。人払いと護衛は私が」
「頼んだよ」
そう言うとお父様は真剣な顔で私を見ると口を開いた。
「・・・いつか、聞きに来るとは思ってたよ。こんなに早いとは思ってなかったけど」
「・・・わたしも、ほんとうはおとうさまにきくつもりなんて、ありませんでした」
「・・・それだけ、ケビンが切羽詰まってたってことだね?」
「はい」
「・・・分からないことも多いと思うけど、誤魔化さない。ただ、ひとつ約束して」
「なんですか?」
「ケビンに、話を聞いたとちゃんと話して欲しい」
「・・・え?」
黙ってて欲しいと言われると思っていたから拍子抜けする。お父様は私の頭を撫でると約束なんだと言った。
「ケビンが、もしスカーレットが聞いてきたら隠さず話して構わないその代わりスカーレットに話を聞いたことを自分に伝えるように言ってほしいって言っていたんだ。スカーレットは賢いから絶対聞いてくるって言ってね」
「・・・わかりました。かならず、はなします」
「・・・よし。始まりは5年前なんだ」
そう言ってお父様が語った内容は衝撃的なものだった。




