ピンクor薄緑
お母様はピンクのよそ行き用のワンピースを持ってニコニコしている。私は薄緑色のワンピースを持ってニコニコしていた。
「王子様に会うのだから可愛くしていきましょうね」
「いいえ、薄緑でいきます」
「可愛い方がいいじゃないの」
「すきでもないのに かわいくするのは いやです!」
「むう・・・スカーレットが1番薄い色が似合う顔つきだから着せたいのに」
「おかあさま とのおでかけなら きても いいです」
このやり取りを1時間もしている。いい加減にお母様には諦めてもらいたい。ため息をぐっとのみ込むと開いてる扉を誰かがノックした。見てみれば準正装のお父様が呆れた顔をして立っている。
「まだ決まらないの?いっそ行くのやめる?それでもお父様はいいけど」
「行くって言ったのでしょう」
「熱が出たとか言えば大丈夫じゃないかな。公式な行事というわけでもないし」
「ぴんく きるなら いきません」
このままだと本当に行かなくなると思ったお母様は力なく俯くと「わかったわ」とつぶやいた。
「・・・薄緑でいいわ・・・。もう!王子様よ!?憧れでしょう!?」
「?おかあさま おとうさまより へいかが すきですか?」
「そんなわけないでしょう!お母様は一目見たときからお父様が・・・」
冷静になったお母様がお父様もいたことを思い出したらしい。真っ赤になって固まってしまった。
「僕が、なに?」
「な、なんでもありませんわ!」
「えー?」
「・・・お嬢様、こちらへ。お着替えいたしましょう」
長くなると思ったミーナが私をクローゼットの中に連れていく。本来なら部屋で着替えるのがもちろん正しいが、ああなった二人を止めるのは難しい。案の定着替え終わって出てきてもまだやり取りは続いていた。ため息をついてからお母様の太ももを軽く叩く。
「おかあさまが おとうさま すきなのは わかりました。だから、もうやめてください」
「す、好きだなんて!!
「すきなんでしょう?」
「・・・ええ、そうよ!好きよ!だから、スカーレットにも素敵な人と結婚して欲しいのよ!!」
「おうじさまだからって すてきとは かぎりません」
「ぐぅの音も出ない正論だね。それじゃあ行ってくるよルティシア」
「・・・お気をつけて」
「あ、僕もルティシア大好きだよ」
大きな爆弾を投下してお父様は私を抱っこして部屋を出た。後ろからお母様の叫び声がしたがお父様は楽しそうに歩いていく。
「おかあさま まっかでした」
「照れてるんだよ」
そう言ってお父様は楽しそうに笑った。