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ただいま

久しぶりに帰ってきた我が家は咲いてる花が変わった以外には大きな変化は無さそうだった。


玄関ホールに入るとすでにお姉様たちが待っていて私を見つけるとエレーナお姉様とトパーズお姉様が我先にと私に抱きついた。



「スカーレットっ!ああ、久しぶりに見ても可愛いわスカーレット」


「おじい様のお家はどうだったの?」


「たのしかったです!こんどは、4にんで おいでって おじいさま いってましたよ!」


「・・・そうね」


「たまには、遊びに行ってもいいかもしれないわ」



お姉様たちの波が収まると今度はお兄様・・・と、思ったのだけど一向に近づいてくる様子がない。近くに寄ってみるとどこか心ここにあらずだった。



「おにいさま?きゃっ!」


「おかえり、スカーレット」



私を抱き締める力が強い。叔父様に言われたから気になるというのもあるのかもしれないけど、4歳の妹が遊びに行っていたくらいでこんなことになるだろうか。



「ほらほら、3人とも。スカーレットは疲れてるんだから離してあげて?」


「おじい様の家は少し遠いものね」


「スカーレットは長い間馬車に乗ることもないし・・・」


「・・・そうですね」



お父様の鶴の一声でお姉様たちは私から少しだけ離れる。部屋に戻ったらミーナにも挨拶しないと・・・。



「スカーレットは馬車の中でもお昼寝してないからね。少し休ませてあげようね。エリック、頼めるかな」


「かしこまりました」



ミーナが出てこないことに首をかしげるけれどエリックが一緒に行ってくれるようなので着いていく。お姉様たちも私の部屋の前までずっとついてきた。ハグをしてから別れて、エリックと中に入るとミーナが忙しなく歩いていた。



「ああ、これでいいかしら・・・。いえ、お布団もふかふかにしましたし 寝間着も柔らかに仕上げました。くまさんも可愛らしくベッドの上に収まっていますし埃もありませんけれど・・・ああ!お茶の仕度がまだでした」


「ミーナ」


「きゃあっ!?」


「かわいい ひめいです。おてほんに しないとですね」


「お、おおおおお、お嬢様?いつからそちらに・・・?」


「『これでいいかしら』あたりからです」


「も、申し訳ありません!」


「おこってないですよ。エリック、ミルクティーをおねがいしてもいいですか?カップはふたつ・・・みっつがいいですか?」


「ふたつでよろしいかと。すぐにお持ちします」


「お茶なら私が・・・!」


「ミーナは わたしを きがえさせてください」


「・・・そうですね」



エリックを見送るとミーナは手際よく用意してくれていた寝間着に私を着替えさせてくれた。



「ただいまです、ミーナ」


「・・・おかえりなさいませ」


「ミーナはかわりありませんでしたか?」


「・・・お嬢様がいない以外は」


「ミーナも こられたら よかったんですけどね」


「・・・しかたありませんわ」



ミーナがしょんぼりする。よしよしと頭を撫でるとタイミングを見計らったかのようにドアがノックされた。



「はい」


「おまたせいたしました。飲んだらお休みになってください」


「わかりました」


「それでは失礼いたします」


「よし、ミーナ、そっちに すわってください」


「いや、でも・・・」


「わたしいがい だれも いないし だいじょうぶですよ」



そもそも、見られたとしても誰も怒らないだろう。私がせがんだって言えばいいのだし。



「失礼いたします」


「はい。それでは、スカーレット・アルディ・フェイバーの おちゃかいを!はじめます!」


「えっと・・・?」


「ミーナはおきゃくさんですからね!さ、のんでください。エリックがたまにいれてくれる ミルクティーはおいしいですよ」



お願いしても気が向かなければ作ってくれない特別なミルクティーだが、今日は私も帰ってきたばかりだったというのもあって作ってくれたんだろう。カップに注がれているミルクティーからはスパイスの香りがするのでミルクティーというよりはチャイだけど。



「・・・私、はじめていただきますわ」


「そうでしょうそうでしょう。わたしだって、これで2かいめ です」



紅茶はたまに淹れてくれるけれど、これだけは滅多にお目にかかれない。スパイスは贅沢品だからだ。正体が周りに知れないように『ミルクティー』と言っているのかもしれない。



「いただきます・・・!」


「どう、ですか?」



チャイは苦手な人もいる。エリックはそれも見越してティーポットに普通のミルクティーも入れてきてくれてあるから苦手だったらそっちを飲んでもらおう。



「不思議な味です。でも、体がぽかぽかとあたたまりますね」


「おんなのひとには オススメです!」



ふたりでお茶を楽しむのは実は初めてだったりする。改めて見るとミーナは所作が綺麗だし、気が利くし、優しいし顔立ちだって可愛いし、それでいてしっかりしているし・・・。



「わたしが おとこのこなら ミーナとけっこんしたいですね」


「え!?」


「・・・あ、まってください!うそじゃないですけど!」



どうしてこう、ポロっと口から出てしまうんだ!お口がゆるゆるなのも大概にしておけ!と心の中で自分を叱責する。



「あの、うれしいですわ。お嬢様にそう言っていただけて・・・!」


「へ?」


「私、実は最近自分に自信がなくなっていたのですが・・・お嬢様にそう言っていただけて、嬉しいです」


「ミーナ・・・。だれが なんといおうと ミーナは とっても かわいいですからね!」


「・・・はいっ」



4歳の私の言葉にこんなに嬉しそうにしてくれるミーナに少し不安になる。叔父様に相談してみた方がいいかもしれない。







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