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内緒話

それから1週間経った頃、お母様とお父様が迎えにきた。準備が粗方済んだらしい。


お手紙で今日来ると聞いていたのでガーネットとブライアンが昨日の内に荷物を馬車に詰め込んで持っていってくれているので今日は身一つで帰るだけだ。



「長期間スカーレットを預かってくださりありがとうございました」


「いいのよ。私たちのほうが楽しかったの。また来てちょうだいねスカーレット」


「はい」



お父様はおじい様にも挨拶している。なんだかすっかり馴染んでしまった。ここの人たちは皆いい人ばっかりだったし。



「スカーレット」


「おじさま・・・」


「さみしくなりますね」


「はい」



なんだかんだ、本当にたくさんよくしてもらった。これからもたくさんお世話になるだろう。でも、また次がいつになるのかは分からない。



「そんな顔しないでください。またいつでも来てくださいね」


「また、きます。シュプリームけの みなさんのこと だいすきなので」



その言葉にスザンナさんはハンカチを目に当ててすすり泣いている。



「うう、スカーレット様、また私にお世話させてくださいませね・・・」


「はい」



スザンナさんがハンカチで目を押さえている。スザンナさんもあれやこれやと良くしてくれた。おじい様は私たちの近くまで来て苦笑する。



「ほらほら、またすぐ来てもらいましょう。スカーレット、最後は順番にハグをしてくれますか?」


「はい」



スザンナさんはおそれ多いと辞退されてしまった。まあ、そうなるとは思っていたので昨日の内にこっそり手を繋いでお散歩させてもらったので良しとする。



「おじいさまからですね」


「ええ。はあ、寂しくなりますね・・・今度はエレーナにトパーズ、ケビンもつれてみんなでいらっしゃい」


「わたしも さみしいです・・・」


おじい様は途中からお仕事が忙しくなってしまってあんまり会えなかった。宰相だから忙しいんだろう。次はたくさん遊べるといいな。



「次はおばあ様ね。ふふふ、またお馬さんに乗りにいらっしゃい。スカーレットと過ごせて楽しかったわ」


「わたしも たのしかったです」



おばあ様とは毎日会えていたしたくさん遊んでもらった。おばあ様が本をたくさん読んでくれたおかげで 字もかなり覚えられたしとても感謝している。



「最後は私ですね。またすぐ遊びに来るということですから部屋もそのままにしてあります。いつでも来ていいですからね」


「はい」



そう、くまさんも含めていただいた物はシュプリーム家に置いていくことになった。すぐに来ることになるだろうし、持って帰るのも大変だろうからと叔父様が言うからだ。ガーネットとブライアンが肩を撫で下ろしていたのでありがたい申し出だった。



「ふふ、スカーレット待ってますからね」



そう言うと叔父様は私のほっぺにキスをした。叔父様はスキンシップが過多だと思う。顔もとっても綺麗だから不意打ちでこういうことをされると照れるからやめてほしい。赤くなったほっぺをおさえているとお父様が間に入って私を抱っこした。



「はいはーい。そこまでそこまで。スカーレットをドキドキさせるのはお父様だけでいいんですー」


「サナト様、大人気ないですわ。スカーレットだっていつか好きな方が できたらその方にドキドキするようになるんですからね」


「お父様より素敵じゃなきゃダメらしいから多分大丈夫だよ」


「私しかいないんじゃないですか?」


「いやいや、年齢的にも僕しかいないでしょう」


「親族は黙っててもらえますか」


「おじいさまも おじさまも すてきです」


「そういうこと言う子には、お父様本気出しちゃうよ?」


「サナト様の本気は私だけが知っていれば良いんで・・・いや、待って、お父様たち、これは、その・・・!」



自分の発言の威力に気づいたお母様があたふたとしている。それを見てお母様を見つめるシュプリーム家の皆さんの瞳が微笑ましいものを見る顔になっている。叔父様だけは少し面白くなさそうだけど。



「さ、そろそろ玄関ホールにいきましょうか」


「・・・最後にスカーレット、エスコートさせてもらえますか?」


「よろこんで。おとうさま、おろしてください!!」


「・・・仲が悪いよりはいいかな。ちゃんと叔父様の言うことを聞くんだよ」


「もちろんです!」



おじい様とおばあ様を先頭にお父様とお母様、そしてだいぶ離れて私と叔父様が歩いている。おじい様が私たちが仲良くなったから気を使ってくれたんだろうと叔父様は言った。



「ほんとうに、ぜんぶ おいていっちゃって いいんですか? せっかく もらったのに・・・」


「ああ、いいんですよ。どうせすぐ来ることになるんですし。それに・・・」


「それに?」



叔父様は少し考えるそぶりを見せると真面目な顔になって私の手をぎゅっと握った。



「100%の確信がないまま告げるのは信条に反するんですが・・・」


「はい」


「ケビンくんには気をつけなさい」


「おにいさま?」


「ええ、彼の出身家であるステファン家とは少し縁があるんですが、そのステファン侯爵と会ったときに少し」


「??」



なんだろう?こんなに歯切れの悪い叔父様は珍しい。それにケビンお兄様に気を付ける・・・。適当なことを言う人じゃないのは分かる。確かにゲームではヤンデレキャラだったけど、そうなる原因の『家族と仲良くなれなかった』というのはもう潰してあるはずだ。



「・・・会ってもないのに決めつけるのは良くないですね。例え8割の確信を持っていたとしても」


「おじさま?」


「いいですか?何か少しでもおかしいと思ったら手紙に書いてレイチェル様に渡してください。そうすれば私に届くようになっていますから」


「は、はい」


「返事はおじい様の名前で届けますから」


「どうしてですか?」


「念のため、です」



叔父様の真剣な声音に私も神妙に頷く。ケビンお兄様、か。帰ったら何か思い出せないか少し思い返してみよう。



「さ、玄関ホールが見えて来ましたよ。内緒話はここまでですね」



叔父様がシィーっと人差し指を唇に当てるので私も了解したという意味を込めて同じようにすると叔父様は嬉しそうに笑った。




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