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そろそろ・・・

目が覚めるともう朝だった。すっかり眠ってしまったらしい。スザンナさんに着替えさせてもらっているとスザンナさんは少し寂しそうな顔をしている。



「スザンナさん、なにかあったんですか?」


「・・・・・・ええ。実は・・・」



スザンナさんによるとお父様が遊びに来てるとのことだった。仕度を整えてもらってティールームへ行くとお父様が長い足を組んで優雅に座っていた。



「おとうさま!」


「スカーレット!久しぶりだね」



私に気がついたのかお父様は私を高い高いする。しばらくするとお父様は私を抱っこしたまま叔父様を見つめた。



「スカーレットがとってもお世話になってるようで」


「いえいえ、好きでやってることですから。それよりまだ準備も終わってないはずですが、どうされたんですか?」


「スカーレットの様子を見に来たんですよ。スカーレット、寂しくはない?」


「はい」



お父様がぴしりと固まった。寂しくないのは本当だ。そりゃ、全然平気というわけではないけどここで少しでも寂しいなんて言って困らせるのは嫌だった。でも、どうやら私は返事を間違えたらしい。



「スカーレットのことは私たちにお任せくださいお義兄様」


「このまま連れて帰ろうかな・・・」


「あらあら、でもまだ準備は終わってないのでしょう?それにスカーレットはサナト様を心配させないように言っただけですよ」


おばあ様を見るとおばあ様がパチッと私にウインクをした。おばあ様にはお見通しだったらしい。



「・・・いい子なのは嬉しいけどね・・・」


「おとうさま、みんな、げんきですか?」


「・・・うん。しばらくしたら忙しいのも落ち着くから待っててね」


「はい」



そのままお父様も朝ごはんを一緒に食べて少しだけふたりっきりでお話しした後帰っていった。様子を見にこられるようになったってことは準備もそろそろ一段落着くということだろうか。朝ごはんの後にティールームでお話をしようという叔父様の提案でティールームへ移動すると叔父様は深いため息をついた。



「はあ・・・スカーレットと一緒に遊べるのもあと少しで終わりですね」


「そうねえ・・・私たちが公爵家に行ったらルティシアは気を使うでしょうし・・・」



おばあ様が具合が悪い・・・いや、悪かったというのは風邪をこじらせてしまったからなんだとか。もうすっかり元気になったけれど確かにお母様は心配性だから気を使うだろう。



「馬に乗って庭を駆け回ってるなんて知ったら鬼の形相で帰ってきそうね」


「ははは、本当に。秘密にしておかないとダメですね」


「え?」


「「え??」」


「わ、わたし、おてがみに かいて おととい レイチェルさまに おわたししてしまいました・・・」



おばあ様に馬に乗せてもらっているといった内容の手紙をしたためてしまっています。レイチェル様から手紙をジョン様に預けてもらってお母様たちに届けてもらうことになっている。公爵家にジョン様が行くのは確か今日だ。手紙は確実にお母様の手に渡るだろう。



「・・・・・・まあ」


「姉様帰ってきますね」


「ご、ごめんなさい・・・」


「スカーレットは気にしなくていいのよ。お手紙に書いてくれるくらい楽しかったってことなんでしょう?」


「でも・・・」


「姉様が来ても家は困ることはないからいいんですよ」


「うう・・・」


「それにさっきサナト様が来て私の様子も見たのだし大丈夫よ」


「・・・そうですね・・・」



申し訳ない・・・。ま、まあ、でも、そんな突然来られるはずもないし、確かにお父様がおばあ様の様子を話してくれれば元気になったことは分かるはずだ。お母様が落ち着いてくれることを願おう・・・。落ち込んでいると息を弾ませておじい様が入ってきた。昨日はお城に泊まらないといけなかったらしく、ようやく帰ってこられたみたいだ。



「はあ、サナトくんから、そろそろ準備も終わるからスカーレットを迎えに行けそうですなんて聞いて慌てて帰ってきましたよ」


「お仕事はもういいの?」


「粗方終わらせてきたので大丈夫でしょう。さて、スカーレット」


「はい」


「当主になる決心はつきましたか?」


「父上、スカーレットはまだ4歳ですよ」


「ですが・・・」


「なので、サナト様には内緒でこっそり当主の勉強をする、というくらいにしておくのはどうでしょう?とりあえず基礎が出来ていればどうするか決めるのは後でも大丈夫でしょう。幸いサナト様も陛下もスカーレットをブライト王子に、とは考えてないようですし」


「・・・そうですね。確かに勇み足だったのは否めません」


「レイチェル様は両方教えられる方ですからスカーレットにやる気があるなら、本人からお願いさせてみてはどうでしょうか?大人があれこれ騒ぐのもスカーレットを混乱させるだけですし」


「そうね。私もこのまま流れで頷かせるのは良くないと思うの。そうしましょうか」


「そうですね・・・スカーレットにどうするか決めてもらいましょう。スカーレット、お願いするとなったら自分で言えますか?」


「はい!」



私の返事を聞いておじい様は満足そうに笑うと少し休みますと言って部屋に戻っていった。おばあ様もおじい様に着いていくといって席を離れる。



「さて、レイチェル様が来るまで少しお散歩でもしましょうか」


「はい」



叔父様と手を繋いで庭を散歩するのもあと何回かしかないと思うと少し寂しい。なんだかんだと一番良くしてくれたのは叔父様だった。叔父様の腕にしがみつくと彼はクスクスと笑う。



「また遊びに来たらいいですよ」


「・・・はい」


「ふふふ、それと僕もふたり、いや、3人かな?の仲間に入れてもらえないですか?」


「?」


「こっそり当主になるお勉強を始めてるんでしょう?」



驚きのあまり言葉を失って立ちすくむと叔父様はクツクツと笑って私の頭を撫でた。



「と、いうようなカマをかけてくる人もいるので常にポーカーフェイスが当主の基本ですよスカーレット」



そう言って次期シュプリーム侯爵の叔父様はとても綺麗に笑った。



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