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叔父様のお茶会

お昼寝のあと、身支度を整えてもらって叔父様と一緒に、サファイアが来るのを待っている。



「予定だとそろそろですね」



懐中時計を確認しながら叔父様はそわそわしていて曲がってしまった私の髪を結んでいたリボンをそっと直してくれた。さりげないところもモテそうですね叔父様。



「アルフレッド様、あと5分ほどで到着されるそうです」


「そうですか」



叔父様が執事にそう言われてからしばらくして、サファイアとサファイアのお父様がやってきた。お互いに挨拶をするとサファイアは私の手をぎゅっと握った。



「だいじょうぶ?」


「はい。しんぱいかけてごめんなさいサファイア」


「ううん、いいの」



そう言って微笑むサファイアは相変わらず控えめで抱きしめたいほど可愛らしい。でも、まだぎゅっと抱きしめるほどの仲には達していないと思うから抱きしめるのは我慢した。



「さ、挨拶も済んだことですし会場にご案内します。こちらへどうぞ」


「サファイア、スカーレットちゃんに手を繋いでもらったらどうだ?」


「え・・・!?」


「エスコートはまかせてください!」


「あはは、頼もしいね」



叔父様とサファイアのお父様の中では、もう私がサファイアを連れていくことが決定しているようで私たちが着いていけるくらいの速度で歩き始めた。サファイアはさっき手をぎゅっと握ってきたのに手を繋ぐのは恥ずかしいのかもじもじしている。



「いきましょう?」


「う、うん」



そっと手を繋ぐとサファイアは恥ずかしそうにしている。サファイアの恥ずかしいと思うラインが分からないなあ。向かっている途中もとっても照れていた。



「さ、着きましたよ」


「わ、あ!」


「家の薔薇は咲くのが少し遅くて今が見頃なんですよ」


「すごい、きれいです・・・!」



ここは少し高いところにある。眼下には様々な色の薔薇がグラデーションになるように植えられていて薔薇の海が広がっているのだ。



「ここは薔薇ばかりなので薔薇のシーズンが終わると使えないのが難点ですね」


「いまだけの とくべつって ことですか?」


「そうですねスカーレット。さ、お嬢様たちお座りください。お茶もお菓子も今日は特別に好きなだけ食べていいとお許しをもらってますよ」


「わあ!よかったですねサファイア」


「う、うん!」



サファイアの手を引いて用意してもらった低めのソファに座ってもらう。そのときサファイアは置かれたくまさんを見て首を傾げた。



「くまさん・・・?」


「はい!わたしたちと おんなじいろの くまさんを おへやから もってきました!」


「ほんとう・・・わ、わたし、スカーレットに にてるこを だっこしてても いい?」


「いいですよ!」



叔父様が事前に『僕たちのことは気にしないで』と言っていたので本当に気にせずにサファイアとお話をする。サファイアもお父様から言われたと話していたのでふたりで決めてくれたんだろう。



「サファイアのおまじないのおかげで、すぐになおっちゃいました!ありがとうございます」


「ううん・・・わたし、あれくらいしかできなくて・・・」


「わたしは うれしかったですよ」


「う・・・スカーレットは やさしいから」


「サファイアのほうが やさしいですよ」


「ううう・・・」



褒めれば褒めるほど赤くなっていくサファイアは可愛らしいけれど、どうしたものだろう。



「・・・スカーレット」


「なんですか?」


「スカーレットは、その、おんなのこが あつまったら する はなしが きまってるって、おかあさまがいってたの」


「はい」


「こいばな? っていってたわ」


「・・・」



オリヴィア様は何をまだ3歳のサファイアに教えてるんだろうか。いや、今年4歳だから・・・いや早いな。恋愛に関してはスピードが早めなのが貴族とはいえ、さすがに早い。でもサファイアはイマイチなんのことか分かっていない様子だ。



「こいばな?っていうのは すきなひとの おはなしをするんだっていっててね」


「まあ」


「それでね、かぞくいがいの すきなひと いないの?っきかれたの」


「・・・なんてこたえたんですか?」


「・・・えっと、スカーレットってこたえたわ。えっと、もしかして、まちがってる・・・?」


「・・・」



もう、たまらなくなってサファイアをぎゅっと抱きしめた。サファイアは私によく似たくまさんを抱きしめておろおろしている。



「あー・・・」


「スカーレット越えは厳しそうですねえ」



サファイアのお父様と叔父様が好き勝手言っているけれどそれは今無視させていただく。よしよしとサファイアの頭を撫でるとサファイアはもっと照れてしまった。



「サファイアはかわいいですね」


「そ、そんな・・・!かわいいのは スカーレットで・・・」


「ありがとうございます。でも、サファイアはかわいいです」


「あ、あううう・・・」


「ふふふ、さ、おやつ たべましょう?なにがいいですか?とってあげますね」


「・・・チョコのマドレーヌ」



照れてるサファイアを一旦離してチョコのマドレーヌを手渡す。サファイアは口を着けると顔を輝かせた。



「おいしいです!」


「ふふふ、おじいさまの おうちのおかしは とってもおいしいんです」



それからサファイアと初めてたくさんお話しした。サファイアはお姫さまのおはなしが 好きなことや チョコレートが好きなこと バナナとピーマンが嫌いなこと、花占いもした。まあ、私たちは恋を占うわけではないので明日のお昼に好きなものが出るのか占った。そのあとふたりで絵本を読んでいたらもう帰る時間になってしまったらしい。4人で玄関ホールに戻る。



「またねスカーレット」


「はい・・・ほんとうに、くまさんいいんですか?」



私に似たくまさんを抱いたまま離さなかったサファイアにくまさんを持っていってもらおうと思ったけれどサファイアはそれを断った。今も私が抱っこしているくまさんたちを撫でている。



「うん。くまさん、もらったら スカーレットにあわないで まんぞくしちゃうからって おとうさまにいわれたの・・・」


「?」


「サファイアは恥ずかしがり屋だからね。スカーレットちゃんからもらったくまさんを眺めてるだけでスカーレットちゃんに会わなくてもいいとか言うかもしれないし・・・」



せっかく出来たお友だちだからちゃんと会ってほしいからとオリヴァー様が笑うとサファイアは頬を膨らませて彼の太ももをぽこぽこと叩いた。



「そんなことないもん!・・・たぶん」


「そう?」


「ううー!」


「・・・じゃあ、おたんじょうびのプレゼントにわたしがちゃんとえらんだ、くまちゃんをプレゼントしますね!」


「!!い、いいの??」


「はい」



サファイアは嬉しそうに笑うと私にぎゅっと抱きついた。私も抱きしめ返してふたりでたっぷりハグをしてから手を振ってお別れをする。こっちの世界で初めてのお友だちだ。もっと仲良くなれたみたいでとってもうれしい。



「仲良くなれてよかったですね」


「はい。おじさま、ありがとうございました」


「どういたしまして」



叔父様と手を繋いで部屋に戻る。今日はおやつをたくさん食べたから夕飯は軽く済ませることになっている。本来ならダイニングで食べるけれど疲れただろうからと部屋に下がっていいと言われていた。



「休んでていいとは言っても少し早いですね」


「はい・・・でも、すこし ねむたいです・・・」



お昼寝も早かったし無意識の内に興奮していたのか少し疲れた。そういう私を叔父様はそっと抱っこする。



「はしゃいでましたもんね。それじゃあこのまま寝てしまいましょう。起きたときお腹が空いていたら何か食べましょうね」



そのまま叔父様にくっついているとどんどん瞼が落ちてくる。叔父様は私を寝かしつける才能があるらしい。

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