叔父様は共犯者?
レイチェル様とレッスン後のお茶を飲みながら一昨日の話すると非常に微妙な顔をされた。
「はあ・・・正直あまりの超展開についていけませんわ・・・とりあえず、帰ってからジョンに相談してみましょう」
「お願いします」
「ああ、それとケビン様からお手紙を預かってきました」
「おにいさまから?」
手紙を受け取ると丁寧な字で私の名前とお兄様の名前が書かれている。後で読もうと脇に置こうとするとレイチェル様に止められた。
「できたら今すぐに読んでお返事を書いてください」
「・・・え?」
「実は、ジョンがケビン様の様子がおかしいと話していて・・・」
レイチェル様が言うには勉強中はちゃんとしているものの隙があるとぼんやりしていて、見送りに出てきても私のお庭の辺りでまたぼんやりしているのだとか。お父様に話を聞いてみたら、それはもう、日々の潤いが無くなったと言わんばかりに気落ちしているという。
「そしたら前回、ジョンが手紙を預かったそうなんです。私からスカーレット様に渡してくれと言って。きっと初めてできた下の子がいなくなって寂しいんでしょうね」
「おにいさま、すえっこだったんですか?」
「ええ。スカーレット様はご存知ないんですか?」
「あの、まえの おうちのことを きくと かなしそうな かおをするんです・・・」
「それは聞きにくいですね。きっといつか話してくださいますよ」
「・・・そうですね。とりあえず、おてがみ よみます!」
手紙は、私の体調を気遣う言葉から始まり、私がいなくなって家がなんだか静かなことや、早く会いたいといった内容が書かれていた。
「・・・おにいさま、さみしいんですね・・・」
「そうですね。でも、ファーストタイムティーの少し前までは忙しいのも事実です。実際エレーナ様のときにスカーレット様は体調を崩されていますしこちらにいる方がいいと思いますよ」
私もそう思う。いくら私がいい子とはいえ、大人たちはやっぱりまだ4歳の私を気にしてしまうだろう。それならここでおじい様たちといる方が心配もなくていいはずだ。
「・・・おへんじかきますから、まっててください」
「もちろんです」
体調は大丈夫なこと、皆とお話しできなくて寂しいこと、私も会いたいけど帰れないこと、1泊でもいいからお姉様たちも一緒に会いに来てほしいことを書いて封筒にしまう。
「・・・はい、おねがいします」
「お預かりします。それでは、今日はここまでといたしましょう」
この前と同じように玄関ホールまで見送りに出ると今日はおじい様ではなく叔父様がすでに待っていた。
「こんにちはレイチェル様」
「え、あ、こんにちは・・・アルフレッド様っ」
「今日は父が城に行っているので私でご容赦ください」
「そんな、わざわざありがとうございます」
叔父様と一緒にレイチェル様を見送る。レイチェル様、なんだかドギマギしてたなあ。好きとかではない感じだけど、なんというかアイドルに会ってしまったような反応だ。
「・・・さて、スカーレットお土産があるんです」
「おみやげですか?」
「ええ。急いで作らせたんですよ?こちらへどうぞ」
叔父様に連れられて私の部屋に戻る。叔父様がドアをあけて私を中に促すと大きなくまのぬいぐるみが置かれていた。
「わー!」
「喜んでもらえたみたいですね。どうです?叔父様と同じくらいあるでしょう?」
叔父様はお父様より少し背が高そうだから183㎝くらいだろうか。薄い金色に青い目の特大くまさんに興奮していると叔父様から抱きついてもいいと許可をいただいたので思いっきり抱きつく。
「ふ、ふわふわです・・・」
「よかった。来るって聞いたときから作らせてたんです。スカーレットとおんなじ色でしょう?」
「はい!ありがとうございます おじさま!」
「どういたしまして」
しばらくくまさんの感触を楽しんでいると叔父様に名前を呼ばれる。振り返ればベッドの上に何枚もドレスが広げられていた。
「お家から持ってきたドレスがあるのは分かっているけれどどれも似合いそうだから買ってきてしまいました。よかったら着てやってください」
「え、でも、くまさんにドレスまで・・・」
「僕が好きで用意したものですからスカーレットは気にしないで。これはクローゼットにしまっておきましょう。ああ、あとスカーレットはベリーが使われたお菓子が好物だと聞いたのでいくつか用意しました」
お姉様たちが言っていたドロドロに甘いのっておじい様とおばあ様だと思っていたけど、もしかして・・・。
「さ、おじい様が帰ってくる前にティールームに行きましょうか。あの人、間食には意外とうるさいですからね」
「えっと・・・おじさま、こんなによくして もらったら なんだか わるいことを しているような」
「ふふふ、それじゃあ叔父様とスカーレットは共犯ってことになりますね。行きましょう」
オロオロする私を抱っこして叔父様はティールームへと歩いていく。ああ、そうだ、きっと叔父様のことを言っていたに違いない。




