こんにちは叔父様
綺麗な男の人をぼーっと見つめていると目があった。困ったように笑う姿もとっても綺麗だ。は!そうだ、始めての場合は家格の高い方から名乗らないといけないってレイチェル様が言っていたけど、でも、同じ公爵家だった場合は年が上の人からだって、でも、わからない場合は仲介してもらうか相手に促してもいいって言ってたし・・・。
「・・・父上」
「・・・おや、まだ会ったことがなかったんですか?」
「そうですね」
「なんだ。ルティシアのことが大好きなあなたですから、もう会ったものとばかり・・・」
「あはは、サナト様がいなければいつでもいきますが」
「おやおや。それでは改めて・・・アルフレッド、こちらはスカーレット・アルディ・フェイバー令嬢。スカーレット、こちらはアルフレッド・シュプリーム侯爵子息。お互いに挨拶を」
「はじめまして、フェイバーこうしゃくれいじょう スカーレット・アルディ・フェイバー ともうします」
「はじめまして、シュプリーム侯爵子息、アルフレッド・シュプリームと申します。君の叔父になります」
「おじさま?」
「そうです」
私の身長に合わせるように膝まずいて挨拶してくれる叔父様はとてもかっこいい。お父様とは違うけど、王子様みたいだ。
「・・・おうじさま みたいに すてきです」
「ありがとう。スカーレットもお姫様みたいに可愛いですよ」
「むー」
「?お姫様は嫌なんですか?」
「ブライトおうじの かおが ちらつくので いやです」
「・・・・・・あははっ!そうですか、そうですか、ふふ、ふふふ・・・!スカーレットは見る目がありそうですね」
叔父様は私の手を取るとソファまでエスコートしてくれる。シュプリーム家は全体的に家具が高めなので叔父様にソファに座らせてもらった。隣に叔父様が座って来たから少し緊張する。
「ブライト王子がフラれたらしいなんて噂を聞いたんですがもしかしてスカーレットですか?」
「・・・」
無言でこくりと頷くと叔父様は喉でクツクツ笑うと紅茶に砂糖を1つ入れて渡してくれた。
「血は争えませんね母上」
「あら、前陛下は素敵な方だったのよ?セアリアスの方が遥かに素敵だったけれど」
「ありがとうございます」
「はいはい」
「おばあさまも おうじさまに けっこんしてほしいって いわれたんですか?」
「そうよ。でもね、おばあ様はおじい様が好きだったから断ったの。無理強いされることはなくて、何とか私に好きになってもらおうと努力されて、権力にものを言わせないところは好感が持てたわ」
「他の男の話はそこまでにしてください」
おじい様は前髪を後ろにかきあげると少し拗ねたようにおばあ様を見る。
「ふふ。ごめんなさい。それで、スカーレット、ブライト王子のことはあまり好きではないの?」
「うーん、まだまだ きらいです」
そもそもお花見のとき以降全く会っていないので印象が好転するはずもない。多少マシになったなんて話は聞くけれどどうなんだろう。
「姉様は王子様に憧れているから勧めてきたりしないですか?」
「はじめは ちょっとありましたけど、いまは ぜんぜんです」
『可愛い服を』なんて言っていたのは初めてのときだけで後は特に何も言ってこない。言われない方が気が楽だからこのままでいて欲しいなと思う。
「姉様まで合わないと思ったってことですか。それならスカーレット、ちゃんと断りきれるように当主でも目指しますか?」
「おお・・・珍しく気が合いましたねアルフレッド。私もスカーレットがフェイバー家を継げば色んな問題がスッキリ解消すると思っているんですよ」
「そうですよね。やっぱりほぼ同時期に1つの家から王家に嫁ぐ人間がふたりも出るのは良くないですし」
おじい様と叔父様はふたりだけでどんどん盛り上がって話を進めている。そんなふたりをおばあ様が止めた。
「もう、ふたりともスカーレットが困ってるわ。それに、その話はスカーレットが当主になりたいかによるでしょう?」
「スカーレットは当主の仕事に興味があるようですし大丈夫ですよ。王家・・・特にブライト王子にバレないように私も画策しますし・・・あ、でもサナト君には分からないようにした方がいいかもしれませんね、彼は立場上、陛下に本気で聞かれたら教えないわけにはいかないかもしれませんし・・・」
もうおじい様の中では様々なプランが練られているようでブツブツと何か呟き続けている。叔父様は私の隣で『あーあ』と呟いた。
「半分は冗談だったんですけどね」
「・・・おじさまと おかあさま あんまり にてないって おもいます」
「ふふふ、姉様は優しいですから。そんな姉様を守るために強くなったのにかっさらわれて・・・ああ、今でも腹が立つな」
「・・・じゃあ、わたしたちも、きら「それとこれとは話が別です。僕はスカーレットが部屋に入ってきた瞬間にこの家に天使が舞い降りたのかと思いました」そ、そうですか・・・?」
「なので、ブライト王子は反対です。スカーレットと彼は相性が悪そうなんですよねえ・・・このまま話が進んだらスカーレットにとって面白くない結果になる気がします」
この家族は先見の明がありすぎるんじゃないだろうか。そうです、このまま行けば心変わりの末に断罪されるという誠に不本意な結末が待ってます。
「なので、僕もスカーレットにその気があるなら当主の道もありだと思いますよ」
そう言ってにこりと笑う叔父様はお父様が陛下に向けるのと同じような含み笑いをしている。
「なんだか、やめるにやめれなくなりそうです」
「ふふふ、シュプリーム家はとことんがモットーですからね」
そう言って叔父様は私の頭を撫でるとベリーのマフィンに手を伸ばした。味の趣味は私と近いのかもしれない。




