当主ってなにするの?
おじい様に抱っこされておばあ様のところに向かう。さっき、おじい様にお仕事について聞いてみたときの反応は悪くなかった。明後日レイチェル様に言ってみよう。
「アリス」
「ううっ・・・うう・・・」
「いつまで拗ねてるんですか。スカーレットを連れてきましたよ」
「え!?あ、す、スカーレットち・・・!その・・・」
「おばあさま、マフィンとってもおいしかったです。ありがとうございました!」
「レイチェル様も褒めてましたよ。2つも食べてしまったとか。よかったですね」
「あ、うう、そうなの?それならいいのだけど・・・」
おばあ様はもじもじしている。お母様が照れているときとそっくり。それにしても、おじい様はかなり可愛い人をお嫁さんにしたみたいだ。おじい様は少し首を傾けて何かを考えるそぶりをすると私ににっこりと笑いかけた。
「スカーレット、おばあ様のかっこいいところ見たくはないですか?」
「かっこいいところですか?」
「ええ」
「みてみたいです!」
おっとりのほほんとした雰囲気のおばあ様のかっこいいところ、とっても興味がある。おばあ様はおじい様の言葉に少しきょとんとした後、ぱあっと笑うとベッドから飛び降りた。
「そう、そうね!まだスカーレットには見せていなかったしちょうどいいわ!ガーデンに席を用意させてスカーレットとセアリアスには座って見ててもらいましょう!30分経ったら来てちょうだいな!スザンナ!スザンナ!お仕事よ!!」
メイドさんの名前を叫びながら出ていってしまったおばあ様に目をぱちぱちさせているとおじい様は私を抱っこしたまま机の椅子に腰かけた。
「さて、それでは少しスカーレットにおじい様のお仕事のお話をしましょうね」
「!!はいっ」
「良いお返事です」
そう言うとおじい様は机の上に真っ白な紙を広げるとペンで簡単な言葉を書いていく。私に分かるようにということだろう。
「まず、シーズンは分かりますか?」
「えっと、しゃこうかいのじき ですか?」
「そうです。冬から初夏にかけてがこの国のシーズンとされています。この間はほとんどの貴族が王都へ集まります。この間も領地で起きたことは当主にすぐ伝わり対処の方法を伝えたり場合によっては領地に戻ることもあります」
「おとうさまと りょうちにかえったこと ないです」
「ああ、公爵家は皆、王都から滅多に離れないんですよ。王族に近い血筋というのは色々と気を付けないといけないことがあって・・・これはまだスカーレットには早いですね」
公爵家は色々と縛りが厳しいらしい。おじい様はシーズンと書いた横に冬~初夏と書き出すとさらに横に基本と書いていく。
「王城に勤務している私のような貴族は戻れませんし、基本は王都にいて必要があれば領地に戻る貴族もいます。シーズンオフでもお茶会が開かれていたりするのはこのせいですね」
「どうして りょうちに かえらないんですか?」
「王都にいる方が商売をしている貴族は都合がいい場合もありますからね。領地のことは親族に任せている場合もあったり、その辺りは各自の采配に任されてます」
おじい様はその辺りのことも交えながら紙に分かりやすく書き出してくれた。それによると基本的に当主はシーズン中は社交に忙しくしつつも領地内で問題があれば解決するために動き、商売をしている場合はその管理もする。他にも雑多にしなければいけないことがあって年中多忙ということらしい。
「おじいさまは、なにか つくってうったりしてるんですか?」
「おお!よく聞いてくれました。昨日来たときにスカーレットのお部屋にくまさんが沢山あったでしょう?」
「はい」
「あれはおじい様の会社が作って売っているんですよ。趣味を全面に押し出してみたのですがこれが意外に好評でして、おかげさまで売れ行き好調なんです」
「えっと・・・」
あの可愛いくまさんたちはおじい様の趣味らしい。お母様の乙女趣味はおばあ様からではなく、おじい様から受け継いでいるものなのか・・・。
「おじいさまは かわいいものが すきなんですね」
「はい。好きこそ物の上手なれですね。他にもうさぎさんにネコさんもいますし、最近はツートンの珍しいくまのぬいぐるみも売り出そうかと思っていまして・・・東の方の動物で確かパンダといいましたか・・・まだ知名度は低いですが可愛らしいですからすぐに人気になるでしょう。出来たらスカーレットにもあげましょうね」
パンダに目をつけるとはさすがおじい様先見の明がある。さらにまだあるらしく、最近では置物も作り始めたらしい。
「ブライト王子がスカーレットにあげたカエルさんの置物もおじい様の会社のブランドなんですよ」
あのブライト王子からの可愛らしいカエルさんか。おじい様可愛いものにどんどん手を出しているらしい。いっそ某竹っぽい名前の商店街みたいに可愛いものを集めた流行の発信地みたいなものを作ればいいのに。
「スカーレットは好きなもの、ありますか?」
「おとうさまと おかあさまと ケビンおにいさまと エレーナおねえさまと トパーズおねえさまと おじいさま と おばあさまと・・・」
「ははは、スカーレットはあんまり物欲がないんですね」
いや、結構あると思う。食べ物とか言った方がいいかと思っているとドアがノックされた。
「旦那様、スカーレット様、奥方様がお呼びですのでこちらへお願いします」
「分かりました。とりあえずお話しは一旦おしまいにしてかっこいいおばあ様を見に行きましょうか」
「はい!」
おばあ様のかっこいい姿、とっても楽しみだ。




