閑話9 協力者1
今日、僕は協力者と一緒に出かけている。彼は終始不機嫌そうで何度もため息をついている。
「あのさケビン、僕一応王子なんだけど」
「知ってますけど」
「せめて取り繕うとかないの?」
「取り繕ったらスカーレットが家に帰ってくるようにシュプリーム侯爵に何か働きかけてくださるんですか?」
「・・・あはは、ごめんそれは無理」
「・・・ちっ」
「あ、その『使えねえ』みたいな顔はやめて」
ケビンはため息を着くとまた無表情で外を見る。スカーレットちゃんが宰相の家に行っていると手紙をもらったとき、気落ちしているだろうと遊びに誘うと行きたいところがあるというので一緒に出てきたけど乗り気では無さそうだし何の目的があって出かけたかったんだろう。
「なんでブライトがスカーレットのプレゼントを用意したお店に行きたいの?」
「あれって特別に作らせたわけじゃないんですよね?」
「ん?うん、そうだよ」
「それなら行く意味はあります」
「理由を話してくれてもいいじゃない」
「可愛い置物だから見てみたくて」
「はあ」
絶対にそんな理由じゃないだろうなあ。僕が苦笑するとケビンはにっこりと笑う。
「そういう点では連れていってくれるなんて感謝してますよパトリオット王子」
「あはは、僕は君を協力者に選んだことちょっと後悔してるかも」
「ふーん・・・。まあエレーナと結婚したくないならご自由にといったところですね」
「そういうところが怖いんだってば。本当に同い年?」
「確かそうだったと思いますが」
「僕もまあまあだけど、君はホントにどうかと思う」
僕は目的のためにはあんまり手段は選ばない方だなって思ってるけど、ケビンは『目的』だけが大切でそれを遂行するためなら『手段』が壊れてしまっても何の感情も抱かない気がする。あくまで気がするだけだけど。
「あはは、あ、ここですか?」
馬車が止まったから覗いてみると目当ての店で間違いない。まず護衛が周りと店の安全を確認してから僕たちが中に入る。ケビンはまずくまの形の置物をいくつか見繕ってそこからさらにひとつを選ぶと何か注文をしている。そのあとカエルの置物を選ぶとそれは簡単に包んでもらっていた。
「用事は済みました。ありがとうございます」
「くまの置物はいいの?」
「ああ、あれはスカーレットにあげようと思ったので基本の形はあれにして少し特別に注文させてもらって後日届けて貰うことにしました」
「カエルは?」
「まあ、ちょっと」
少しひっかかるけどこれ以上は尋ねても答えないだろう。ケビンが用が済んだと言えばもう用はないので馬車に戻る。そこから王城で少しお茶をしてケビンは帰っていった。
「はあ、スカーレットちゃんは苦労しそうだねえ」
でもブライトとスカーレットちゃんがくっついてしまうと僕とエレーナが結婚できる可能性はほとんどなくなる。そうならないためにもケビンが頑張ってくれるのは僕にとってもありがたい。結局似た者同士かと苦笑して部屋に戻る。その途中で母上がソワソワした様子で近寄ってきた。この人は本当に分かりやすいのに父上は全然分からないらしい。
「パトリオット、ケビンくんと仲良くなったのね」
「ええ」
「よかったわ。ほら、あなたから、あまりお友達の話を聞かないから・・・その」
「喜んでくれたんですよね」
「そ、そうよ・・・。ケビンくんはいい子だしパトリオットも楽しそうでよかったわ。また遊びに来てもらってね」
「そうします」
母上はホッとしたように微笑む。そんな母上には申し訳ないけど純粋な友人というわけじゃない。またお互いに厄介なことを頼み合うんだろうなと思ってつい苦笑が漏れた。




