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くまのぬいぐるみたち

私は今、おばあ様と手を繋いで廊下を歩いている。私のために用意してくれたお部屋に向かっているのだ。道すがらおばあ様はずっとルンルンと跳び跳ね気味に歩いてはおじい様に止められてを繰り返している。



「アリス、スカーレットはまだ小さいんですからあんまり跳び跳ねてはいけませんよ?」


「だって嬉しいんだもの!さ、着いたわここよ」



おばあ様がドアを開けるとそこにはたくさんのくまのぬいぐるみが置いてあった。思わず礼儀も忘れて中に入ると色んな毛色、色んな目の色のくまがいてひとつとして同じものはない。


私は生まれ変わる前からくまのぬいぐるみが好きだったものの、『年齢的にだめなのでは? 』と尻込みしてしまい買うのを我慢していた。生まれ変わってからは少しだけ買ってもらったけれどやっぱり少し気恥ずかしくて遠慮していた。だからこれだけのくまのぬいぐるみに囲まれるとテンションがあがる。



「あ!きんのけにあおいめ!おとうさまとわたしといっしょ!」


「こっちにはくろいけ に あかいめ! おかあさまとおねえさまたちとおじいさまと おんなじ!あとはケビンおにいさまと・・・」



すぐに見つかった2匹のくまをベッドに乗せてケビンお兄様とおんなじ色合いの子を探していると後ろからクスクスと声がした。



「いやー・・・可愛いですねスカーレットは」


「本当に。天使が家に舞い降りたみたい」



ほのぼのと私を見つめる二人にサッと顔が青くなる。入っていいかも聞かずに思わず飛び込んでしまった。慌てているとおばあ様が私をぎゅうっと抱き締めた。



「入っていいか聞かなかったことを気にしてるの?スカーレットはおりこうさんなのね。いいのよ気にしないで。ここはスカーレットのためのお部屋なんだから。さ、ケビンくんに似てるくまさんを探しましょう?どこにいるかしら」


「あ、あうう・・・。で、でも・・・」


「子どもが遠慮しないの。私なんてもう半分社交界から身を引いてるし私的な場ではマナーに関してうるさく言わないわ。それに笑っていてくれる方が嬉しいの。ね?」


「わ、わかりました・・・」


「いい子ね」



おばあ様からお許しも出たのでケビンお兄様と似たような子を探す。奥の方に隠れていたので引っ張り出してベッドに乗せた。



「それと、おばあさまに にてるこもさがします」


「!」


「えっと ミルクティーみたいないろでアンバーいろのめのこ・・・」



ケビンお兄様に似た子がいたのとは反対側にやっぱり埋もれていたのでひっぱり出してベッドに置く。とりあえずこれでよし!ミーナとレイチェル様、それにエミリア様とサファイアに似てる子はまた後で探そう。とりあえず荷物を持ってきてもらわないと。



「おじいさま、おばあさま、にもつをブライアンとガーネットにもってきてもらってもい・・・おばあさま?」


「私に似た子まで探してくれるなんて・・・!」


「あー・・・いいんですよスカーレット。おばあ様は可愛いものを大量に摂取すると少しおかしくなってしまうんです。荷物ですね。ブライアンとガーネットに持ってきてもらいましょう」



おじい様はおばあ様を近くのソファに座らせるとメイドさんに指示を出す。おばあ様はソファに座ると手を組んで何かに祈っているようだ。たぶんあのポーズは『尊い・・・』って思ってるだけだろうからそっとしておこう。生まれ変わる前よく見たしよくしてた。


しばらくするとブライアンとガーネットが私の荷物を持って部屋の前に現れた。二人は重そうなそぶりもなく軽快におじい様とおばあ様に礼をする。



「シュプリーム侯爵、失礼してよろしいですか?」


「ここはスカーレットの部屋ですからね。スカーレットがよければどうぞ」


「お嬢様」


「いいですよ!ブライアン、ガーネット、ありがとうございます」


「お疲れではありませんか?」


「体調が優れないときはすぐに言ってくださいね」



二人とも荷物を置くと膝をついて私にそういってくれる。『分かりました』と言ってふたりにぎゅっと抱きつきておいた。なんだかんだ慣れている人が一緒なのは嬉しいし心強い。



「お嬢様、たいへん嬉しいのですがおじい様たちもおられますので・・・」


「あ、そうですね。ごめんなさい・・・」



そうだった。ついつい気が緩んでしまった。ふたりに運んでもらった荷物をガーネットがクローゼットや机にちゃんと入れてくれて、くまさんたちも邪魔にならないように、それでいて皆が可愛らしく見えるように並べ直してくれた。その過程で4人に似たくまさんを見つけるたびに私が取りに行くので邪魔だっただろう。でも山を崩すよりはマシだと思う。



「えっと、くまさんたちにリボンをつけてあげないといけませんね!」



メイドさんがお部屋を掃除してくれたときに戻されたら見つけるのに苦労するかもしれない。髪を結ぶリボンはたくさん持ってきたので首や耳、腕に目印として着けておこう。そうすれば見つけやすいし。



「えっと・・・おとうさまとわたしといっしょのこは あかで・・・」



リボンを結び終わって振り替えるとおじい様しかいない。あれ?



「・・・わたし、そんなにながいじかんむちゅうに・・・」


「ああ、おばあ様は少し外の空気を吸いに行ってもらっただけだから大丈夫ですよ。さ、ティールームにお茶を用意させましたから行きましょうか」



おじい様と手を繋いで部屋を出る。おじい様のお家のティールームにお茶・・・とても楽しみだ。

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