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お誘い

念のためにと2日間くらいお休みしてもうすっかり元気になった。あの日からなんだかケビンお兄様が前よりも側にいることが増えた気がするけどよっぽど心配させてしまったらしい。今もティールームで休憩していた私のおでこを触って熱がないか確かめてから定位置に座った。



「ケビンは優しいわね。スカーレットは急に熱が出てしまうことがあるから、また気づいたら助けてあげてちょうだいな」


「はい。そのつもりです」


「頼もしいわねスカーレット」


「はい!でも、もうげんきなのでしんぱいしないでください」


「・・・うーん。あのときも急に具合が悪くなったみたいだし心配だなあ」



ただの知恵熱なので申し訳ない・・・。心配のしすぎでケビンお兄様が倒れそうだなと思っていると扉が開いておじい様がやってきた。普段ならお父様がまず出迎えるけれどお父様は今、お仕事で外に出ているから驚きつつもお母様が出迎える。



「お父様!エリックに知らさせてくだされば下まで行きましたのに・・・」


「可愛い娘と可愛い孫にゆっくりしていて欲しくて無理を言ってここまで案内してもらったんですよ。スカーレットが熱を出したと聞いてお見舞いに来たんですが元気そうでよかったです」


「おじいさま、ありがとうございます」


「ふふ、でも無理はダメですよ?などと言いつつひとつ提案なのですが」


「はい」


「おじい様のお家に遊びに来ませんか?」



そうおじい様が言った瞬間にお姉様ふたりがお母様にひしっと抱きついた。え、なに、何があるの?



「だ、ダメよスカーレット!」


「そうよ・・・!ダメ人間にされるわ・・・!」


「え?」


「おやおや、人聞きの悪い。おじい様もおばあ様もそんなつもりはないんですよ?」


「あれは砂糖をハチミツで煮込んだ上にチョコレートを加えてドロドロになるまで煮詰めたくらいのダメ人間プロジェクトよ!」


「ええ、危険よ!危うく『おじい様の家の子になる』と言わされる寸前になるわ!」


「へえ?」



声がして扉の方を見ると丁度お父様が帰って来たらしく長い足で私に近づいて私を抱っこする。



「スカーレット、すっかり元気だね。よかったよかった。それで、お義父様、先ほどのトパーズの発言に関していくつかお聞きしたいことがあるのですが」


「そんなそんな、居心地がいいということを言いたかったんでしょう。それに娘から子どもを奪うような無粋な真似はしませんよ」



お父様もおじい様も笑顔のまま何も言わない。私がお父様にぎゅっと抱きつくとお父様が私の頭を撫でたので無言の攻防は終わりを告げた。よかったこのまま笑顔で沈黙という名の殴り合いが続いたらどうしようかと思った。



「怖かった?ごめんねスカーレット」


「私としたことが・・・少々反省しましょう。まあ、その辺りは置いておくとして、これからケビンのファーストタイムティーの準備もありますしよかったら家で少し預かろうかと。みんなとってもいい子ですから手が掛からないとはいえ、誰か具合が悪くなったときに寂しい思いをさせるかもしれないでしょう?」



確かにこのところお父様やお母様と過ごす時間はあんまりない。普通の4歳児なら駄々をこねて泣いているかもしれないくらいには。それでもなんとか時間を捻出して私たちとご飯を食べたりお話ししてくれているので文句はない。でも、お父様たちも心配しているのかおじい様の提案に思案顔だ。ここは行っておいた方がお父様とお母様も安心するんじゃないだろうか。実際、知恵熱とはいえ倒れたばかりだし心配だろう。



「わたし、おばあさまに あってみたいです!」


「ああ、そうですね。たんじょうびプレゼントもまだ渡せてないって彼女も駄々をこねてました」



おばあ様駄々をこねるの?え、会ってみたい。絶対可愛いぞおばあ様。



「エレーナはもうファーストタイムティーも済んで社交の場もあるでしょうし、ケビンは主役ですから、こちらにいた方がいいと思いますが、トパーズはどうしますか?」


「こ、ここにいます・・・!」


「お誕生日プレゼントまだおばあ様から受け取ってないでしょう?」


「ま、また今度!また今度にしますわ!」


「そうですか・・・。じゃあサナトくんスカーレットだけでも家で預かりますけどどうしますか?」


「そうですね・・・スカーレット、おじい様のお家に行ってみたい?」


「はい!」


「ここに帰りたいときはちゃんと我慢しないで帰りたいって言える?」


「言えます!」


「最後、いい子でおじい様とおばあ様の言うことちゃんと聞けるかな?」


「聞けます!」



お父様の質問に元気よく答えるとお父様は私の頭にほっぺたをくっつけて『だよね』と呟いた。


「・・・そうだよねえ。なんの心配も無いのが寂しいなあ。もう、スカーレットは誰に似てこんなにしっかりしちゃってるのやら・・・。スカーレットもこう言ってますしよろしくお願いします」


「はい。また落ち着いたら連絡をくださいね。ちゃんと送り届けますから。こちらからメイドや騎士を何人か連れていきますか?」


「そうですね・・・メイドはミーナが専属ですが、さすがに・・・」


「そうですねえ。来てもらえたらスカーレットも安心でしょうけど他所のお嬢様をここから離すわけにはいきませんね。騎士はどうします?」


「ガーネットとブライアンに着いていってもらいましょう。ガーネットならスカーレットの身の周りの世話も少しは出来ますし」


「決まりですね。それじゃあまた明後日迎えにきますね。ああ、3人も遊びに来れそうなら来てくださいね。1泊くらいなら全然大丈夫でしょう?」


「その1泊が1ヶ月になったこと、忘れてませんから」



お姉様たちという前例があるのだろう。おじい様とおばあ様の家は居心地が良すぎるらしい。



「ふふ、それじゃあまた。トパーズ、気が変わったら明後日一緒に行きましょう」



そう言っておじい様は嵐のように去っていった。地面に下ろしてもらった私をぎゅーっと抱きしめるケビンお兄様の過保護が強くなった気がするから倒れられないためにも距離を取るのはいい方法だと思う。



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