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知恵熱

お兄様にもたれたまま少しぼーっとする。まだ幼少期だし彼女が出てきたとしてもブライト王子ルートの悪役令嬢じゃなくなったとは言い切れない。あくまでもメインの悪役令嬢はスカーレットだから。それに、もし万が一そうなのだとしたらケビンお兄様が私を将来的にどうにかしようとしていることになる。家族にも馴染んでいるお兄様がそんなことするとは思えない。これはどういうことなんだろう?



「スカーレット、大丈夫?」


「ちょっとだけフラフラします・・・」



今回は同じ『ブライト王子』ルートの人間だからか一気に思い出してしまって少しフラフラする。お兄様は私の顔を覗きこむと護衛として控えていたガーネットを呼ぶ。



「スカーレットが気分が悪くなってしまったみたいだから部屋に連れていってあげて。サファイア様も一緒に」


「え・・・わたしも・・・ですか?」


「僕たちまで抜け出したら騒ぎになっちゃうけど同い年の女の子同士なら仲良しだなで終わるはず。僕たちの代わりにスカーレットの側にいてあげてくれるかな?」


「は、はい!わたし、ちゃんとおせわします・・・っ」


「おにいさま、わたし、だいじょうぶです・・・」


「いいから。ガーネットよろしくね」


「はい。さ、参りましょうスカーレット様。申し訳ありませんがお庭を出るまでは頑張って歩いてください」



担ぎ上げて出ていけばそれこそ大騒ぎだろう。ブライアンは先に部屋に向かったのか姿が見えない。サファイアと手を繋いで屋敷の中に入るとお父様が待っていて私を抱っこすると自分の頬を私のおでこにくっつけた。



「うん、少し熱いね。熱が出ちゃったかな。このところ元気そうだから油断してた。サファイアちゃんは別のお部屋で待ってる?」


「・・・スカーレットといっしょにいちゃ、ダメですか?」


「・・・風邪だとうつっちゃうかもしれないから少しだけだよ?」


「はい・・・!」



サファイアにはガーネットとゆっくり来てもらうことにして私はお父様にお部屋に連れていってもらう。中ではミーナが待っていて私をお父様から受けとるとさっと楽な服装に着替えさせてくれた。たぶん知恵熱だろう。



「旦那様、終わりました」


「分かった入るよ。・・・無理をしちゃったのかな?サファイアちゃんと少しお話ししたらもうお休みなさいしようね」


「・・・はい」


「よしよし・・・サファイアちゃんを呼んで来てくれる?」


「かしこまりました」



しばらくするとサファイアが部屋に入ってきた。心配そうに眉を下げて私の側に寄るとぎゅっと手を握ってくれた。



「スカーレット、だいじょうぶ?」


「はい・・・ごめんなさい、なかなかおはなし、できなくて」


「ううん、いいの。また、あそびにきてもいいって、さっき、スカーレットの、おかあさまが、いってくれたから、そのとき おはなし しよ?」


「・・・はい」


「・・・そうだ、あのね、おかあさまが わたしが びょうきのときに してくれることがあるの。スカーレット、いちばんいたいところおしえて」


「あたま・・・」


「あたま・・・えっと、スカーレットのあたまから びょうき でてっちゃえー!」


「・・・」


「いちばん いたいところが いちばん わるいとこなんだって。おまじないなの」



心配そうにしながらそう言って私の頭を小さな手で撫でてくれるサファイアはとっても優しい。



「・・・ありがとう、サファイア」


「うん・・・!」


「ありがとうサファイアちゃん」


「い、いいえ!」



それから少しだけお話ししてサファイアは部屋を出ていった。何度も振り返って出ていくサファイアに申し訳ない気持ち

でいっぱいになる。



「サファイアちゃんとはお母様がお話ししてくれるから心配しないでスカーレットはゆっくり休んで」



そう言って私のおでこにキスをして頭を撫でるとあやすようにポンポンと私のお腹辺りを撫でるお父様。うとうととしているうちに私は眠ってしまったらしい。




しばらくして目覚めると部屋が暗い。もう夜になってしまったみたいだ。ふと横を見るとお兄様と目が合った。お兄様は腕を枕にしてうつぶせの状態から顔をあげた体制でこちらを見ていた。



「・・・ふふ、具合はどう?」


「・・・あたまのいたいのはなおりました・・・」


「そっか。でもまだ熱かったから寝てた方がいいよ」



お兄様がいるから起きようとした私にお兄様はそう言った。身体も怠いしお言葉に甘えてお兄様の方を向いて寝転ぶ。お兄様は笑うとその体制のまま私に腕を伸ばして頭をよしよしと撫でてくれた。




「おにいさま いつからここに?」


「皆が寝てからこっそりね。そうじゃなきゃこんなにゆっくり出来ないよ」


「・・・おにいさま、みつかったらおこられちゃいます」


「そうだね。でもいいんだ。部屋で不安でいるよりここにいたい」


「ふあん??」


「怖いっていえばいいのかな・・・ありえないって分かってても『スカーレットがこのまま起きなかったらどうしよう』って思っちゃうんだよ」


「・・・そしたら、おにいさまを なおしてあげられなくなっちゃいますね」


「そうだよ。僕の呪いを解いてくれるのは、スカーレットだけなんだからね?」


「・・・じゃあ、はやくげんきになります」


「うん、そうだよ。スカーレットが寝たら、僕も部屋に帰るからそれまで側に居させて」



「・・・はい」



そのあと、お兄様に手を握ってもらいながら少しだけお兄様とお話ししたような気がする。でも私はすぐに意識を手放した。寝る前にうっすら見えたお兄様の顔が寂しそうで思わず手をもっと強く握った。





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