閑話1 公爵家一行が帰った後の王城では
王妃様視点です
※王子の年齢が間違っていたので少し直しました。
サナト様たちが帰られた後、陛下はへなへなとソファに身を沈めて顔に手を当ててため息をついた。
「・・・婚約者にしたかった」
「ダメです。家の鼻垂れ小僧たちの誰があんな愛らしい子に釣り合うというんですか」
「実の子供だろう」
「ええ、悲しいことに。私はそれはそれは厳しく王子とはなんたるかを躾ていただこうと陛下の教育係だったストリクト伯爵夫人を先生にと思いましたのに止めた陛下が悪いんですのよ?3人のうち、誰か1人でもしっかりしている子がいれば考えてもよかったのですが・・・」
「・・・いや、伯爵夫人のレッスンを受けるにはまだ早いというかだな・・・」
もごもごと口を動かす陛下にため息をつく。1番上の子はもう9歳だ幼いと言えない。ブライトたちは幼いと言えるけれど、こういうのは早い方がいい。実際、遠縁の親族であるいくつかの公爵家は3歳になるころにはすでにもう英才教育をしているという話なのに甘やかしすぎている。
「3歳のスカーレットはあんなにお行儀よく淑女の礼も完璧でしたが??」
「・・・・・・そういうところが怖いと言われるんだ」
正論を言うなということか。サナト様が『政治と顔以外取り柄がないけど王様としてはそれだけあれば十分』と言われていただけはあります。色々言っていましたが、自分が嫌われるのが嫌なだけでしょう。
「あら、私のことが怖いなんて『おめめがくさってる』そうですけれど?」
「あの親子は私の心を抉るな・・・」
項垂れる陛下にため息がでる。こと子どもが関わるとどうしようもなくヘタレになるのさえ直してくださればいいのにと思わずにいられない。すると奥の方から音がする。振り返れば第二王子のブライトが立っていた。
「父上、母上、さっきの子はだれ?」
近づいてはいけないと言われたのにどうしてここにいるのでしょうね。この子は。彼の後ろにいる女性は優しいことで有名なワースレス伯爵夫人で一応教育係として来ていただいている。陛下の人選だ。優しいといえば聞こえはいいが教育が出来るとは言えない。
「来るなという言いつけを守れない子にはおしえま「スカーレットだ」陛下!!」
「ふぅん、かわいい から およめさんに してくれない?」
「おー、いい「いい加減にしないとお父上に来ていただきますよ。ああ、それともストリクト伯爵夫人がよろしいですか?おしりペンペンしていただきましょうか」・・・やめてくれ・・・」
勝手なことを言う陛下を睨み付ける。本当に、父親としてダメすぎる。本当にストリクト伯爵夫人・・・いえ、いっそのことストリクト伯爵にもお越しいただいた方がいいかもしれない。
「だめ?」
「ダメですね。あなたが釣り合いません」
「でも、あってみたら ぼくのこと すきになるよ」
今まで会ってきた子みんなそうだったと笑う次男に眩暈がするが、会わせないと陛下がいろいろとやらかしそうで怖い。
「・・・じゃあお断りされたらきっぱり諦めますね?」
「うん」
「・・・レーナ、コントラック侯爵に文書を作ってもらって。内容は私から伝えますから今すぐ彼を呼んでください。今日は特別なことはないはずなので執務室にいるでしょう」
「かしこまりました王妃様」
優秀なメイドにそう頼むと彼女は心得たように出ていった。こうなったらすっぱり諦めさせた上に勝手なことはできないように手を打たせてもらう。
「え、エミリア?」
「文書に残して今決めたことの証拠を残しておかないとしつこいですからねあなたたちは!」
「・・・相手は3歳の子どもだぞ・・・?心変わりとかあるだろう・・・?断わった後に好きになるとかだな・・・」
「スカーレットちゃんの好みはサナト様だそうですよ。この子が今の環境のままでとてもサナト様のようになるとは思えませんが??」
「・・・・・・年頃になればだな・・・」
「遠い異国には『三つ子の魂百まで』という言葉があるそうですわよ。小さいときの性質は大人になっても変わらないとかそういう意味だったかと」
「・・・ブライトのポテンシャルにかけよう。相手は3歳だし、ブライトの見た目は悪くない」
言ってろと思う。そんな見た目だけで絆されるような子じゃないのは見れば分かる。これでも王妃で毎日何人もの人間と会ってるのだ見る目はあると自負している。
「決まりですわね。陛下にも確認してサインしていただきますわ。裏で画策されたら私ルティシア様の前で自害しないといけませんもの」
「とりあえず、あえるって ことでいいの?」
「向こうがいいとおっしゃれば会うだけは会えますけど好きになってくれるかは別ですよ」
「ふーん。たのしみだな」
くったくなく笑う次男は自分が思った通りになると思って疑っていない。本当にこのままではよくない、このあと陛下にもしフラれた場合は内面磨きが必要だと説いて教育係を、 わたわたしているだけの ワースレス伯爵夫人からストリクト伯爵夫人に変えるような文書も交わさなければと心に誓うのだった。