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仲良くなれたら

「こんばんは。突然ごめんなさい。私、ブレイブ公爵夫人 オリヴィア・センテッド・ブレイブと申します」


「フェイバーこうしゃくけのむすめ、スカーレット・アルディ・フェイバーともうします。ほんじつは エレーナおねえさまと、ケビンおにいさまの たんじょうび パーティーへ おこしいただき ありがとうございます」



万が一誰か訪ねてきたらこう答えるようにとお母様やレイチェル様に言い聞かされていたのできちんとそう告げるとオリヴィア様はにっこりと笑って頷いた。



「こちらこそお招きいただきありがとうございます。実は私の娘がスカーレット様にお話があるそうなんです」


「サファイアさまが?」



名前を呼んだだけなのにサファイアは俯いたままだった顔を私に向けて顔を赤くしている。とりあえず座ってもらった方がいいかな?



「・・・そうですか。とりあえずおすわりください。ミーナ ガーネット」


「かしこまりました」


「オリヴィア様とサファイア様はこちらへ」



ガーネットがふたりをソファに座らせ、ミーナが紅茶を入れる。名前を呼ぶだけでこの連携が出来るんだからすごいなあ。



「突然お邪魔したのにありがとうございます」


「とんでもないです。それで、サファイアさま わたしにおはなしって?」



サファイアはまたスカートをぎゅっと握ったまま何も言わない。



「えっと・・・サファイアさま?」


「・・・っ」



サファイアは顔を上げるとバッグの中から手紙を出して私に差し出した。封筒にはお花が描かれていて可愛らしい。受け取ってからガーネットに手渡して中身を確かめてもらう。信用してないとかではなく決まりなのだ。分かっているのかオリヴィア様もサファイアも何も言わない。



「どうぞスカーレット様」


「ありがとうございます。・・・よんでもいいですか?」



サファイアに聞けば、彼女は顔を真っ赤にしたまま首が取れてしまいそうなほどこくこくと頷いている。開いて手紙を読む。一生懸命書いてくれたんだろう、丁寧な字で私と仲良くなりたいと書かれていた。



「・・・だめ、でしょうか」



とっても小さな声だったけれどすごく可愛い声で首を傾げながら目をうるうるさせながら聞かれて断れるだろうか。私は断れない。それに悪い子ではなさそうだ。そうじゃなきゃ手紙を書いてまで渡してくれたりしないだろう。



「それじゃあ、まずはおはなししてください!わたし、サファイアさまのことおなまえしか しりません」


「!!いいの?」


「もちろんです!」


「・・・よかったあ・・・」



涙を拭いて笑うサファイアは可愛い。すごく仲良くなれたら思いっきり抱き締めよう。可愛いは正義だ。



「あの、スカーレットってよんでも、いい?」


「いいですよ。ふつうのときはすきによんでください」


「!あの、あの、わたしのことも サファイアってよんでくれる?」


「はい」


「!!ほ、ほんとうにいいの?」


「わたし、いやならいやっていいますよ」


「そうだねえ」


「あ!お父様!」



突然聞き慣れた声がして振り返るとお父様が立っていた。はしたないから降りて抱きつくのは我慢した。お父様はオリヴィア様とサファイアに断って私の隣に座った。



「パーティーが終わってほとんど皆帰ったからね。スカーレットが寂しがってたらどうしようと思って様子を見に来たんだけど、オリヴィア様とサファイアちゃんに相手をしてもらってたの?」


「はい!」


「・・・おうじさまみたいです」



私が頷くと同時にサファイアがお父様を見てそう呟いた。お父様はきょとんとした顔の後に首を傾げてサファイアを見る。



「僕?」


「は、はい・・・ごめんなさい」


「あはは、なんで謝るの?ありがとう。嬉しいよ」


「むー」


「あ、ヤキモチ妬いてる」


お父様は隣で膨れた私のほっぺたをぷにぷにする。お父様は女の子を簡単にメロメロにするんだから自重してほしい。カッコいいのを分かってるくせに!



「むー!」


「ふふふ、可愛い可愛い。ああ、そうだ。オリヴァーがそろそろ迎えに来てもいいかって」


「まあ、もうそんな時間でしたか・・・でも・・・」


「ルティシアかな?」


「はい・・・いえ、でもいいんです。私またお話できませんから・・・」


「まだ、スカーレットとおはなしできてないのに・・・」



理由は分からないけどションボリしてしまったオリヴィア様とまだあんまり話せてないのに帰らなくちゃいけないことを察したサファイアがションボリして、親子で落ち込んでいる。私はふたりに向かって声をかけた。



「・・・また、あそびにきてください!まってます!」


「ほんとう?」


「おとうさま、だめですか?」


「今月はダメだけどまた近々来たらいいよ。ね?」


「・・・たのしみ」


「ふふ、わたしもです。そのときは たくさんおはなししましょうね!」


「オリヴィア様も次はルティシアと話ができるように楽しみにしてて。ルティシアには話しておくよ」


「はい・・・がんばりますっ」



私とお父様の言葉に笑顔で頷くとオリヴィア様サファイアは私たちにお礼を告げ、手を繋いで部屋を出ていった。小さく手を振る姿がとっても可愛らしい子だった。できたら断罪されずに幸せになってほしいなと思う。


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