騎士ふたりとサファイアの来訪
エレーナお姉様とケビンお兄様の誕生日パーティーはパトリオット王子のお茶会から1週間後に行われた。私は最初に挨拶するとすぐに部屋に戻され部屋でごちそうを食べる。年齢が低い内はあまり社交の場には出ないのが通例なので仕方がない。パーティーが始まる前にエレーナお姉様のドレス姿、ケビンお兄様のタキシード姿も見れたし堅苦しい会話をしなくて済むならありがたい。無駄に26歳が発揮されても困るしね。トパーズお姉様は2年後にはやらないといけないからと私よりは長く会場にいるらしい。
「ごちそうさまでした!」
「はい。ではお下げしますね」
そう言ったのはミーナではなく普段、門番をして私たちを守ってくれているブライアンだ。人の出入りが多い日に私とミーナだけで部屋に居るのは危ないからとずっと付いてくれている。
「あ、ブライアン様、私がやりますから」
「大丈夫ですよ」
何でも1度執事の仕事をしてみたかったらしい。ミーナもブライアンの手によってなし崩しに座らされた。そのおかげでミーナとごちそうを食べたからうれしい。ブライアンはお皿をワゴンに置いて端に寄せるとティーワゴンから紅茶とデザートを置いてくれた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
「ブライアン」
「なんですかガーネット」
「紅茶は私がやる約束だったわ」
普段は私の部屋の周辺をメイドに扮して警護してくれている女性騎士のガーネットも部屋の中で待機してくれている。ガーネットもこういうことをしてみたかったらしくブライアン相手に頬を膨らませた。ガーネットは柔らかい栗毛にヘーゼル色のキリッとした瞳が印象的なスレンダー美女だけど話してみると気さくでとっても可愛らしい。戦うととっても強くて頼りになるらしいけどありがたいことにその姿を見たことはまだない。
「あなたはまだまだチャンスがありますが私は普段は外なんですよ?同じスカーレットお嬢様付きなのに差がありすぎます」
「いいえ!こんなときでもなければ私だってできないわ!」
金のくせ毛を上品にまとめているブライアンはその髪を少しくしゃっとすると柔らかい目元が印象的なヘーゼル色の瞳を私に向ける。流し目気味なのは無意識なんだろう。相変わらずセクシーですねブライアン。
「お嬢様、ガーネットより私の方がいいでしょう?ちゃんと出来てましたよ」
「な!わ、私だってちゃんとできます!お嬢様に喜んでいただけますわ!」
「うーん、ふたりとも どうして わたしに いろいろ してくれようと するんですか?」
そう、そもそもそこが分からない。首を傾げると二人はばっと赤面した。大の大人に抱く感想では無いかもしれないけど可愛い。
「普段は、お嬢様とこうしてお話することなどできませんし・・・」
「少しでも喜んでいただきたかったのです・・・」
「ふたりが まもってくれてて あんしんなんです。いつもありがとうございます。おはなしは・・・うーん、おやすみのひにこっそりできますよ!」
二人だって休みがないわけじゃない。ブライアンはお父様がいないとこっそりはダメかもしれないけどガーネットはお話しできるだろう。そう言って二人の頭をよしよしと撫でると二人は『はわわわ』と言って顔を押さえる。兄妹同士気が合うらしい。
「うっうっ、お嬢様は本当に天使です・・・」
「必ず私どもがお守りします・・・」
「はい!あ、でも、ケガはあんまりしないでくださいね」
明日からトレーニングを増やそう。皆にやらせようとふたりが相談を始めるとドアがノックされ一気に部屋に緊張感が走った。ミーナと私を後ろに隠すようにガーネットが立つのを確認したブライアンが手前のドアから出ていった。ドアは二段階あって手前のドアには鍵がかけられた。間もなくして扉が開くとエリックが入ってきた。
「エリック!!」
「驚かせてしまい申し訳ありません。実はブレイブ公爵家のサファイア様がお嬢様とお話ししたいとおっしゃっているのですがお連れしてもよろしいですか?」
「サファイアさまが?」
嫌われているとばかり思っていたけどワザワザ話したいだなんてなんだろう? まあ、断る理由はないので頷く。
「紅茶も新しいものをお持ちしますのでしばらくお待ちください」
そう言ってエリックが出ていくと3人は凄まじい早さで準備をした。友人がいない(言ってて悲しいけど)私を訪ねて誰かが来るとは思っていなかった。唯一可能性のある王子たちだった場合は周囲からの勘繰りを避けるために帰ってもらう予定だったので本当になんの用意もしていないのだ。
「夜分ですし少し落ち着いた色のワンピースでよろしいでしょう」
「そうですね」
ブライアンもいるのでウォークインクローゼットの中でミーナとガーネットに手伝ってもらって着替えると食事済みの食器は片され、お茶の仕度が整えられていた。私がソファに座って3人が位置につくとドアがノックされる。ブライアンは誰なのか確認して戻ってくると私に『ブレイブ公爵夫人とサファイア様です』と告げた。
「おとおしして ください」
「かしこまりました」
しばらくしてブレイブ公爵夫人と一緒にスカートをぎゅっと握りしめたサファイアが目に涙をいっぱい溜めて中に入ってきた。さて、私、何をしてしまったんだろう?




