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もう1人の悪役令嬢

奥に進むと確かに同じ年くらいの女の子がいた。髪は白くてふわふわしていて目は紫色・・・あれ?もしかしてあの子・・・。



「サファイア、同じくらいの子がいるぞ。挨拶してきたらどうだ?」


「・・・」



隣に立っているエレーナお姉様と同じくらいの年の男の子にそう言われてもスカートをぎゅっと握ったまま俯いているのは私と同じ『のばキス』の悪役令嬢であるサファイア・センテッド・ブレイブだった。思い出すと同時に頭痛に襲われる。毎回思い出すたびにコレは勘弁してほしい。こんなに頭が痛くなるのに彼女の相手が誰だったか思い出せないなんて損じゃないだろうか・・・。



「スカーレット、大丈夫?」


「は、はい・・・。ちょっとぼーっとしちゃいました」


「疲れちゃったのかしら?座って何か飲みましょう?私も緊張して喉が乾いてたの」



トパーズお姉様は無理にサファイアと話させるつもりはないらしい。トパーズお姉様が飲み物を取ろうとするとサファイアに声をかけていた男の子が飲み物を2つ差し出してきた。彼の後ろにはサファイアも相変わらずスカートをぎゅっと握ったまま着いてきている。



「よかったらコレを」


「あ、ありがとうございます」


「申し遅れました。私、ブレイブ公爵家の息子スタン・センテッド・ブレイブと申します。こちらは妹のサファイアです。サファイア挨拶を」


「ブレイブこうしゃくけ のむすめサファイア・センテッド・ブレイブです。よろしくおねがい いたします」



そういうとまたスカートを握って俯いてしまったサファイア。ゲーム内での彼女も引っ込み思案だったはずだ。それがヒロインが攻略キャラと仲良くなったのをきっかけに苛烈になりヒロインイジメに走るのだ。涙目で攻略キャラから手を引くように迫ってくるスチルは見てて可哀想だったなあ。私が悪役の女の子ばかり好きになってたからそう見えただけかもしれない。思案しているとトパーズお姉様が挨拶をしているのが聞こえてきたので私もしっかりと挨拶を返す。



「よかったら少し4人で話しませんか?サファイアと同い年の子はあの双子の王子以外いなくて話が合いそうにないんです」


「そうですか・・・スカーレット、どうする?」


「私はいいですよ!」


「じゃあこちらへ」



この年の1歳差は大きい。それに男の子と女の子では話の内容も合わないだろう。そう思って歩いているとスタン様は同い年であろう男の子に両手に花だと冷やかされていた。スタン様は手でしっしと追いやるとソファを勧めてくれたのでお姉様と隣同士で座る。



「飲み物を運んでいただいてごめんなさい」


「ありがとうございます」


「いいんですよ」


「・・・おにいさま かっこつけてる」


「こら」


「いつもはもっと こわいかんじのくせに」


「こら、サファイア」


「そうなんですか?」


「・・・バラされてしまったから話すが、僕はあまりニコニコするタイプではないんだ。不快にさせてはいけないと気を付けていたのに・・・」



少しサファイアを怒ったように見るスタンの視線を横を向くことでサファイアはかわしていた。よく喧嘩する兄妹なんだろう。親しげな雰囲気で見ていて微笑ましい。



「いつも通りにしてください。私もスカーレットも気にしません。ね」


「はい!」


「・・・ありがとう」



そのあとトパーズお姉様とスタン様は楽しそうにお話をしていたのだが私とサファイアはまったくと言っていいほど話ができなかった。何を聞いても頷くか首を振るか黙ってしまうか。最初はスタン様も間を取り持とうとしてくれたのだがどうしても話さないサファイアにスタン様とトパーズお姉様が慌てはじめてしまったので眠くなってしまったと嘘を吐いてトパーズお姉様にぴったりくっついてウトウトすることにした。ここは周りにエリオット様しかいないし大丈夫だろう。私が小さく手を振るとエリオット様はウインクを返してくれた。やっぱりカッコいい騎士様だ。


エリオット様に手を振ってから少しウトウトとしているとエレーナお姉様が私たちのところへ歩いてきた。パトリオット王子とは直前まで一緒にいたのか少し首を後ろに向けるとパトリオット王子の背中が見えた。



「ここにいたのね」


「お姉様。もういいの?」


「・・・ええ。こんにちはスタン様。私も失礼してよろしいかしら」


「ああ」


「トパーズ寄ってちょうだい。私が真ん中に座るんだから」


「スカーレットの横が空いていますわ」


「妹に挟まれたいじゃない」


「普段はスカーレットが私にくっついてウトウトすることなんて珍しいから嫌です」



確かに私はエレーナお姉様にこっそり膝枕してもらったり、図書室でケビンお兄様を布団にしてお昼寝したりウトウトすることは多いが、トパーズお姉様とお昼寝することはあんまりない。そうか、それでどことなく嬉しそうだったのかトパーズお姉様。私は今ウトウトしているだけなので意識はある。このままだと長くなるから止めた方がいいかもしれない。



「おねえさまたち・・・ けんか だめですよ」


「けんかじゃないのよ」


「そうよスカーレット」


「・・・スタンさま たちも いらっしゃいますし・・・」



ウトウトしていたお前が言うなと思われるかもしれないけど、まあいいや。私がそういうとふたりとも大人しくなった。



「仲がいいんだな」


「ええ。自慢の妹たちなんですの」


「お姉様はスタン様とお知り合いなんですか?」


「ええ。同い年なので少しは」


「そうですか・・・」


「エレーナは妹の話を外ではあまりしないから気になっていたんだが、ずいぶん可愛らしい妹さんたちだな」


「かっ!?」


「そうでしょうそうでしょう。トパーズは照れ屋で恥ずかしがり屋なんです。スカーレットは素直で甘えん坊でふたりとも可愛らしいでしょう?だから!変な男の子が寄り付かないように私我慢して我慢して話さないのですわ!」



私はすぐにお姉様たちのことを自慢してしまいそうだなあ。だってこんなに美人なのに二人とも可愛らしくて優しくて素敵だから。そんなことを思っていると視線を感じる。見てみればサファイアが私をじっと見つめていた。目があったからにこりと笑うとすぐに反らされてしまう。どうも仲良くなるのは難しいらしい。




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