パトリオット王子のお茶会
招待状が来てから3週間後、私たちはパトリオット王子のファーストタイムティーに参加していた。
パトリオット王子の意向で自由度が高い立食式のガーデンティーパーティーな上に子どもたちしかいないので少し気が楽ではある。お姉様たちといっしょにいるとパトリオット王子が笑顔でこちらへ向かってきた。ファーストタイムティーはホストが招待した人間全員に挨拶をして回るからだ。
「こんにちは。本日はお越しいただきありがとうございます」
「こんにちは。こちらこそお招きいただきありがとうございます。皆楽しみにしていましたわ」
代表してお姉様が答えるとパトリオット王子はにっこりと笑う。
「そう言っていただけて嬉しいです。・・・さ、堅苦しいのはここまで。あとは自由に楽しんでね。あ、そうだスカーレットちゃん」
「はい?」
突然のスカーレットちゃん呼びにびっくりしているとパトリオット王子は私の目線までしゃがむと奥のテーブルを指した。
「あそこに同い年の子がいるから行ってごらん?お友達になれるかもよ?」
「おともだち・・・?」
「スカーレットは人見知りなんです」
突然なんだろうと思って首を傾げた私を恥ずかしがっていると思ったトパーズお姉様がフォローしてくれた。それを見てパトリオット王子はさらに笑みを深くする。
「そうなんだ?じゃあトパーズちゃんが着いて行ってあげて?ね?」
「スカーレット、行ってきてみたら?」
ケビンお兄様も勧めてくる。なんなんだもう。エレーナお姉様は困ってるしどうしたものだろう。
「うー・・・」
「・・・スカーレットちゃん、ね?」
口パクで『お姉ちゃんと二人っきりにさせて?』と伝えてくる。でも、普通の4歳にそんなこと分かるわけがないので首を傾げておいた。それに、エレーナお姉様がパトリオット王子のことを気にしてるとはいえ突然二人っきりになるなんてダメ!お姉様が緊張して可愛いことをしたら皆にひっきりなしに話しかけらてしまうに決まってる。エレーナお姉様だって少し人見知りだからそれは可哀想だと思うのだ。だから私はあまり離れたくはない。
「・・・エレーナおねえさまも、いっしょじゃなきゃ、いけないです」
「まあ」
「だって、さみしいです・・・」
「じゃあお兄様も一緒に行くよ。それなら心強いでしょ?」
ケビンお兄様も私の前にしゃがむ。愚図る私の頭を撫でながらお兄様は笑顔で私にだけ聞こえるように囁いた。
「エレーナもパトリオット王子のこと気になってるから少しだけふたりっきりにさせてあげよう?ね?」
「・・・」
エレーナお姉様をチラッと見上げるとエレーナお姉様は私を気にしつつも恥ずかしそうにもじもじしていた。たぶんパトリオット王子とお話したいんだろう。私はトパーズお姉様の手を握ると頷いた。・・・エレーナお姉様のためだここは折れてあげよう。
「トパーズおねえさまと いっしょにいきます」
「ケビンはいいの?」
「だいじょうぶです。パトリオットおうじ」
「なあに?」
「おみみかしてください」
「いいよ」
パトリオット王子が耳を寄せてくれたのでこそこそと話す。主にお姉様のことについて。
「おねえさま びじんなので ぜっっっったいに!ひとりぼっちにしないでくださいね!」
「破ったらどうする?」
「にどとちかづけないように、おとうさまとおじいさまにいいつけます」
「分かった。分かったから真顔はやめようね。怖いから」
「やくそくですよ」
「うん。わかった。お姉様のことは任せて」
「スカーレット?」
「おねえさまのエスコートをとくべつにパトリオットおうじにゆずってあげるっておはなししてたんです」
「な」
「トパーズおねえさま、いきましょう」
「ふふ、そうね。あちらだったかしら」
トパーズお姉様も心得たとばかりに私と一緒にパトリオット王子が指差した方へと歩いていく。後ろでエレーナお姉様の動揺する声が聞こえてきたので振り返って頑張ってくださいと拳を握って下に下ろす『がんばれポーズ』をすると顔を真っ赤にした後小さくこくこくと頷いた。やっぱりお姉様はすごく可愛い。パトリオット王子にはきちんと騎士役を務めてもらわないとダメだなと思いながら奥の方へと向かった。




