お誘い
とにかく、情報が無さすぎる。この場は一旦解散した方がいい。
「えっと・・・ゆうがたに また あつまりましょう。わたし、いますぐには、なんにも おもいつきません」
「そうね、そうしましょう。私ももう少し考えてみるわ」
そのままお茶を飲んでお菓子を少し食べてからトパーズお姉様の部屋を後にする。うーん・・・そもそもお姉様のファーストタイムティーに関する情報が無さすぎる。
「・・・うーん」
「スカーレット」
「うひゃあっ!?」
「どうかしたの?可愛い叫び声あげちゃって」
クスクスと笑うケビンお兄様。驚かされたけどちょうどよかった。ケビンお兄様にファーストタイムティーについて聞いてみよう。
「おにいさまは ファーストタイムティーによぶ ひとって もう きめてますか?」
「まあ、少しはね。僕はエレーナと時期をずらすために3か月後にやるからしっかりとは決めてないよ?招待状出すのは3週間前だしね。でも、どうして?」
本来、ファーストタイムティーは誕生日近辺でやることが多いけど、同じ家で日時が被りすぎるのもよくないしお兄様は家に来たばかりだからファーストタイムティーの時期を少しずらしたらしいことは聞いていた。うーん・・・理由か。まさかエレーナお姉様のことを話すわけにはいかない。
「えっと、その・・・」
「うん」
「・・・わ、わたしは まだ そのとき4さいだから よんでもらえなかったら、いやだなと おもって・・・」
適当に言ったごまかしの言葉だけどよく考えたらないわけじゃない。呼ばれなかったらちょっと、いや、かなり寂しい。寂しくて泣く自信がある。涙腺がゆるゆるなので想像だけで泣きそうになるとケビンお兄様がぎゅっと私を抱きしめた。
「大丈夫だよ。スカーレットは1番最初に招待状を渡してあげるね」
「ほんとうですか?」
「うん、だから泣かないで?」
そう言って私の涙を拭いてくれるお兄様は優しい。もう少し話を聞いてみようかな。
「パトリオットおうじは よびますか?」
「うん。数少ない友達のひとりだからね。パトリオット王子も呼んでくれるらしいよ?王子のファーストタイムティーはちょうど3週間後だしそろそろ招待状が届くと思うけど・・・」
お兄様がそう言うとお父様がケビンお兄様の名前を呼んでいる。お兄様は私を離すと返事をした。
「はい」
「あ、いたいた。・・・スカーレットと二人きり?」
「ちょうど今会ったんです。エレーナのファーストタイムティーが近いでしょう?それで僕のファーストタイムティーに呼んでくれるのかって聞かれたんです」
ね?と尋ねてくるケビンお兄様に頷く。お父様はため息を吐いた後私とお兄様に王家の紋章が入った封筒を渡してきた。
「ふたりにパトリオット王子からファーストタイムティーの招待状が来てるよ」
「はい。ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「うん。もうエレーナとトパーズには渡してきたんだ。行くって返事を書くけど大丈夫?」
「は「スカーレット!」」
「トパーズ、廊下は走らないよ」
「あ、ごめんなさい」
「気をつけてね。トパーズが転んで怪我をしたら皆心配するから」
「はい」
「それで、スカーレットに用事?」
「そうでした!スカーレットを借りますわお兄様」
「うん貸してあげるよ」
「ありがとうございます。それではお父様、お兄様、失礼します」
お姉様に手を引かれてやって来たのはエレーナお姉様の部屋。 中に入るとお姉様は招待状を掲げ持って固まっていた。
「・・・私が来たときからこの状態なのよ」
「えっと・・・おねえさま?」
「・・・・・・」
「返事もしないの」
「・・・パトリオットおうじ」
原因の名前を呟けばお姉様はものすごい勢いで振り返った。
「パトリオットおうじの ファーストタイムティー おねえさまも いきますよね!」
「へっ!?」
「・・・いやなんですか?」
「いえ、その、そういうわけではないけれど・・・」
「・・・そうですわ!折角お誘いいただいたのですからお姉様もパトリオット王子をお誘いするべきでは?」
「え!?」
「ケビンおにいさまも パトリオットおうじを さそうっていってましたし、おねえさまも さそっていいと おもいます!」
「そ、そうかしら」
トパーズお姉様とこくこくと頷くとエレーナお姉様は嬉しそうに笑う。
「そう、そうよね!お誘いしていただいた上にケビンもお誘いするのに私はしないなんて失礼だものね!」
そうよ、そうよね!と言って頷いたお姉様はお父様のところに行くというので3人で部屋を出る。いそいそと怒られないギリギリの早さで歩くエレーナお姉様を見送ってふたりで顔を見合せた。
「心配なかったみたいね」
「はい」
後ろから見えた耳が真っ赤だったから顔も赤いだろう。それを見たお父様が荒れるかもしれないなあと思うけどお姉様がとっても嬉しそうにしていたから気がつかなかったことにした。




