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お姉様の悩み

お父様が『いつも通り』になってから1週間。新聞を読んでいるお父様の膝の上で私もそれをなんとなく眺めているとお父様がクスクスと笑った。



「どうしたんですか?」


「ううん。なんでもないよ。それよりスカーレット、明日のお誕生日会は楽しみかな?」


「はい!このまえ の トパーズ おねえさま の おたんじょうかいも すてき だったので わくわくしてます」


「そっか。スカーレットの好きなものを用意したからね。あ、そうだブライト王子とセージ王子が来たいって言って「ダメです!」そういうと思ってリヒター・・・陛下がなだめてくれたみたいだよ。プレゼントだけ受け取らされたからお礼の手紙だけ書いておいてね。一言『ありがとう』でいいから」


「はい!」



プレゼントを開けるのは明日なので明日お礼の手紙を書けばいいか。お父様にもたれ掛かりながらそんなことを思っているとトパーズお姉様が入ってきた。



「お父様、スカーレットを貸してください」


「ん?いいけど、どうしたの?」


「作戦会議なんですわ!スカーレットならきっといい案を出してくれます!」


「僕の誕生日プレゼント?」


「それはもう決まっ「おねえさま、しー!」あっ・・・」



お父様がクスクスと笑う。私の頭を撫でると床に下ろして自分は立ち上がりトパーズお姉様の頭を撫でる。



「お父様、今ふたりが可愛らしくてぼーっとしちゃった。作戦会議だね。いいよ、お昼の時間にはダイニングに集まってね」


「はい!」


「うう・・・はい」



新聞は読み終わったんだろう。テーブルに置くと今度は書類に目を通すことにしたらしい。お父様のお仕事が溜まっているのは珍しいなと思いつつ新聞を回収しようとしたエリックに手を伸ばす。



「エリック」


「抱っこですか?」


「え?許さないよ?お父様が抱っこして連れてってあげようね」


「ちがいます!しんぶんください!」


「お嬢様が読まれるんですか?」


「おとうさまが よんでわらっていたので おもしろいことが かいてあるんだと おもうんです!」


「あはは、スカーレットは可愛いねえ。いいよエリックあげて」


「読めないと思いますよ?」


「おねえさまたち か ミーナによんでもらいます」



お父様はエリックから新聞をひょいっと奪い取ると私の手に乗せてくれた。



「はい、どうぞ」


「ありがとう ございます」



お父様にお辞儀をしてトパーズお姉様と部屋を出る。作戦会議ってなんだろう?



「さくせんかいぎって なんですか?」


「スカーレットに聞いてほしいことがあって・・・とりあえず私の部屋に行きましょう」



そう言って連れてこられたトパーズお姉様の部屋は白とピンクが上品に使われたかわいらしいお部屋だ。早速中に入ると入り口辺りでトパーズお姉様は口を押さえて涙を浮かべている。感極まった様子と言えばいいだろうか。



「おねえさま?」


「可愛い空間だわ・・・!可愛いの暴力だわ!スカーレット、そこの白いうさぎさんのぬいぐるみを抱っこして私を見てくれる?」


「こうですか?」


「はあっ!可愛い・・・可愛いわスカーレット・・・!」


「トパーズ様、スカーレット様が困っておいでですよ」



紅茶とお菓子を持ってきてくれたトパーズお姉様付きのメイドであるリージアは困ったように眉を下げた。リージアは21歳で裕福な商人のお家のお嬢さんなのだがメイドさんに憧れて家に働きに来てくれているらしい。



「ここには、今私の思う可愛いものが詰め込まれてるの!」


「分かりました、分かりましたからキラキラした瞳で見つめないでくださいませ」



それと、お嬢様も可愛らしいですよ?というリージアの言葉にトパーズお姉様はアワアワと慌て始めた。リージアはニコニコとその様子を眺めると私をソファに座らせてくれた。それにも気づかないでお姉様はモジモジしている。



「あの、その、リージア、う、れしいけれど・・・私はかわいいとか、じゃないわ・・・」


「では、お嬢様の可愛らしいところを今から順にお話ししてさしあげま「と!ところでスカーレット!お父様が読んでいた新聞で気になっているところがあるのではなかったかしら!?」



リージアの言葉に被せるようにトパーズお姉様は叫んだ。そうだった。近づいてきてくれたリージアに隣に座ってという意味で横を叩くとすんなりと座ってくれた。トパーズお姉様もリージアの横に座る。この中なら大人のリージアに読んでもらうのが1番だ。



「ここです」


「えーっと・・・元・ワースレス伯爵、人身売買の罪で逮捕とありますね」


「ここを読んでお父様は笑っていたの?」


「はい」


「リージア、そもそも人身売買ってなにかしら?」



「簡単に言うと人を物として人に売ることです」



リージアはこういうとき子どもだからと伏せることはなく私たちに分かる範囲でキチンと説明してくれるのでいいなと思っている。お姉様はそれを聞いて頬を少し膨らませた。



「・・・そんなひどいことをするなんて、捕まって当然だわ!お父様はきっとこんな人が捕まってよかったと思って笑ったのね」


「そうかもしれませんね」



そうかなあ?そういう笑いじゃなかったと思う。でもトパーズお姉様が理由が分かってよかったわねと笑っているのでいいことにしよう。リージアは新聞を畳んでテーブルの端に置くとお茶の準備を始める。リージアが座っていたところにお姉様は座り直した。



「実はお姉様がファーストタイムティーにパトリオット王子を呼びたいらしいの」


「えっ!?」



この国では10歳になると初めて自分の名前でお茶会を開けるようになる。15歳になるまでのお茶会には『招待できるのは家族および自分と同い年かそれより下の年齢の子ども』という制限はあるもののホストとしての振る舞いを学ぶ場として重要視されている。初めて自分で開催するお茶のことを『ファーストタイムティー』と呼んで家族や親しい友人を呼んで盛大にお祝いするのだ。お姉様のファーストタイムティーは確か1ヶ月後だ。



「どうにかしてあげられないかしら?スカーレット何かいい案はない?」


「・・・えっと」



『流石に荷が重いです!』―とは口がさけてもいえそうにない。








トパーズお姉様がスカーレットと作戦会議しようと思ったのは「お母様に相談したらお父様に話に行ってしまうんじゃ?」→「お姉様は秘密にしてるみたいだし・・・」→「姉妹で解決しないと!」→「スカーレットも呼ばなきゃ!」と考えたからです。

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