閑話6ー4ワースレス家 終
エミリア様がライズ嬢の様子を見てくれるというので任せてリヒターと話をする。
「これでジャックの犯罪が明るみに出るのも時間の問題だろう。その前にライズ嬢の行き先を決めたい」
「そうだね・・・幸いお茶会もしない閉鎖的な家だったからライズ嬢がワースレス伯爵令嬢だと知っているのはあそこにいた僕たちと騎士たちくらいだ。どこかに養子に出してもその家の子で体が弱くて療養していたで済む」
あそこにいるのは何代も王家に忠誠を誓ってきた家出身の騎士ばかりだ。秘密を漏らすような人間はいない。
「そうだな・・・」
「陛下にサナトくん。こちらでしたか」
「宰相か。何かあったのか?」
「ワースレス家の子どもたちを引き取りたいという男爵がいらっしゃいましてお連れしました」
そう言ってお義父様が連れてきた男爵は茶色の髪に緑の瞳、どことなくライズ嬢に似た顔つきをしている。彼はジャックが捨てた子どもで確か今は男爵家当主だったはずだ。
「オブスティ男爵家当主、ロン・オブスティと申します。宰相様からお話は聞きました。ぜひ、私に引き取らせてください。妻も了承しています」
「ふむ・・・サナト、どう思う」
もちろん、ジャックのことを調べたときに彼のことも調べさせてもらった。親子の縁を切られたということも、今どこで何をしているかも。
「3年くらい前に男爵家に婿入りしたんだっけ。領地は大きくは無いけど産業である織物が有名で今年流行の黄色いグラデーションの布地はオブスティ家が発信してる。領民からも慕われてるし問題はない人・家柄ではあるね」
「ふむ、オブスティ男爵」
「はい」
「これ以上の茶番は必要か?」
「陛下が是非と申されるのでしたら」
「いや、よい。私もそこまで無粋ではない。生まれる子も引き取るということだな」
「はい。妻も義父の方も積極的でございます」
「そうか。ライズ嬢に会って聞いてみるといい。案内しよう」
「じゃ、僕が行こうかな」
王であるリヒターと宰相であるお義父様に案内させるわけにはいかないだろう。一歩前に出るとリヒターが手でそれを制した。
「いや、サナトはもう帰っていい。私が案内しよう。残りの雑務は宰相がやる」
「そうですよ。子どもたちが首を長くして待ってます」
さあ、と言ってお義父様は僕の背中を押す。ここで粘るのはそれこそ無粋だろう。向き直って胸に手を当て頭を下げる。
「・・・では、お言葉に甘えて失礼いたします」
「ああ。明日は午後に1度来てくれ。そこで報告をする」
「かしこまりました」
お辞儀をするオブスティ男爵に笑顔を見せる。それにしてもお義父様も一体どこまで分かった上で手を回しているんだか・・・。
「まだまだ敵いそうにないなあ」
そう呟いて馬車に急ぐ。また子どもたちが夜更かしして僕を待っていたらいけないから。
ワースレス家のゴタゴタはこれで終わりです。閑話なのに長くなってしまいました・・・。




