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閑話6ー2 ワースレス家2

暴言あります

翌日、有無を言わさず御前に連れてこられた。ブライト王子と話をしたいと言っても聞き入れられない。この前は話をしてもいいと言われたからそのつもりでいたのにこれは誤算だわ。



「陛下っ、妻になんの落ち度があるというのです。ブライト王子にも会わせず突然教師解約の書類にサインをしろだなどと横暴です!」


「そうですわ・・・!私、これでもブライト様のために心を砕いて・・・!」



夫の言葉に目に涙を溜めて可哀想な伯爵夫人を演じるが陛下はため息を吐くと首を横に振った。


「始めに言った通りだ。ブライトの教師はストリクト家に変更し一任する」



王座の横に控えていたストリクト伯爵と伯爵夫人は深く頷く。さらに陛下は続ける。



「ここにいるパトリオットからワースレス伯爵夫人の怠慢は全て聞いた。ブライトにはマナーを教えたようだがストリクト伯爵夫人とエミリア、それに私も確認したがどれも間違ったものばかりだった」


「きっとスカーレット様に婚約を断られて癇癪を起こされたのでしょう。それに、パトリオット様にもマナーを教えました。私を困らせようとしているのでしょう?まだ9歳の子どもの言うことを信じるなんて施政者としてあるまじきことですわ」


「そうです。パトリオット様にはまだ分別がついてないのでは?」



パトリオット王子は嘘をついていない。でも、相手は子どもでこちらは大人。どちらの言うことが信用に足るかなんて考えれば分かることだ。そもそも子どもの言うことを聞く方が間違っている。



「しつれいします、へいか」


「ブライトか。急な用事なのだな?」


「はい」


「ああ、ブライト様、スカーレット様に嫌われてしまったのでしょう?よろしかったら私の娘がお話を聞きますわ」



ノックをしてブライト王子が入ってきた。その顔は神妙そうでこれまでのバカ丸出しといった雰囲気はない。失恋して落ち込んでいるのだろう。ブライト王子に娘の顔を見せるようにして優しげに声をかけるとブライト王子はこちらを見たもののすぐに陛下に向かって右手を上げた。それを見て陛下はブライト王子の名を呼んだ。


「ブライト第ニ王子」


「はい へいか。はつげんの きょかを おねがいします」


「許可しよう」


「ありがとうございます。・・・リリー・・・いえ、ワースレス はくしゃくふじんは なにをいってるの?」


「え?」


「スカーレットはゆるしてくれたんだ。それで、およめさんは だめっていわれたけど、おともだちには なってくれた。リリーがやれっていったとおり、うでをひっぱったのに さいしょ すっごくいやがられた。リリーのせいでスカーレットともうおはなし できなくなるところだったんだ。ひどいよ」


「!!」


「ブライトはそれを伝えに来たのだな?」


「はい」


「そうか。この件についても議事録に記させよう。ブライトわざわざご苦労だったな。もう下がって大丈夫だ」


「はい」



ブライト王子は礼をすると入ってきた扉から退室していった。それを見届けると陛下は私を厳しい顔つきで見つめる。その途端に体から力が抜ける。今まで怖いと思ったことなどなかったこの男にどうしようもない恐怖を感じて、今すぐ許しを乞いたくなる。でも、ダメ・・・!まだ何もバレてない。切り抜けなくては・・・!


「どういうことだワースレス伯爵夫人」


「そんな・・・そんなこと・・・!だって、私は黙ってるようにと・・・」


「黙ってるように?」


「・・・!」


恐怖のあまり迂闊なことを口走ってしまった私を、夫であるジャックが見ているのが分かる。頭のいい彼ならきっと助けてくれるだろうと彼を見るとその目は酷く冷めていて、その口からは思いもよらない言葉が吐き出された。



「・・・お前がこんなに愚かな女だと思わなかった」


「・・・え?」


「ブライト王子を洗脳して何をするつもりだったんだ?」


「あなた・・・?」


「恐ろしい・・・政権に口を出す権利が欲しかったのか?欲深い女め!恥を知れ!」


「な、何を言っているの!あなたがそうしろと言ったんじゃない!」



私はこの人によろこんで欲しかった。この人が伯爵になりたいというから爵位を譲ってこの人がそうしろというから教育係になって娘と王子を結婚させろというからそうしようとしただけなのに。



「嘘を吐くな!娘を使ってまで王子を繋ぎ止めようなどと浅ましい!・・・そのお腹の子どもも私の子か分かったものじゃないな」


「!!」



膝から力が抜けて地面に崩れ落ちる。ジャックはそんな私になど、恐らく目もくれなかったことだろう。そうだ、よく言っていた。自分にとって使えない者はなんであろうといらないと。私は自分は特別だと、この人の特別だと思っていたのに違ったのだ。私も、この人の道具でしかなかった。


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