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鬼の居ぬ間に

お兄様と手を繋いで庭をお散歩する。誕生日プレゼントなのにこんなことでいいんだろうか?



「おたんじょうびの、プレゼントなのに これでいいんですか?」


「うん。スカーレットと2人きりで庭を散歩したことって無かったからずっと一緒に歩いてみたかったんだ」


「いつでも おさんぽくらい しますよ?」


「ふたりで?」


「はい」


「そっか」



ケビンお兄様がぎゅっと私の手を握ったので握り返しておく。侯爵家が楽しくなかったような口振りだった。ゲームでもその辺りは詳しく書かれて無かった。あちらで何かあったなら悲しい。ここに来て楽しいと思って欲しい。



「スカーレットこっち」


「はい」



日当たりが良くてたくさんの花が咲いている花畑まで出てきた。すると真ん中にテーブルとお昼ごはんが用意されている。



「おにいさま、これは?」


「お母様にお願いして用意してもらったんだ。僕が来たばかりの頃お母様がピクニックをしてくれたんだけど知ってる?」


「わたしも さそわれた ときのですか?」


「たぶんそう。そのとき、スカーレットはサナト様と出かけてて一緒に食べられなかったでしょ?だから今日一緒に食べたいなと思って。嫌だった?」


「いいえ!おはなに かこまれて ごはんが たべられるなんて すてきです!」



何気にピクニックも羨ましかったりはしていたので嬉しい。丸いテーブルにギンガムチェックのテーブルクロスが引かれている。遠くからでは料理は見えないけどお弁当とかではなさそうだから厳密にはピクニックじゃないけど、これも素敵だ。



「よかった。それじゃあどうぞお姫様」


「むう・・・」


「クスクス・・・ごめんごめん。すねないでスカーレット」


「・・・もう おひめさまって よばないでください」


「どうして?」



ブライト王子との未来を示唆されてるみたいで気が重いからだ。例えケビンお兄様にその気はない発言だもしても拒否しておきたい。



「だって おひめさまじゃないですもん」


「ふふふ、そうだった。魔法使いなんだもんね」


「おにいさまは かいじゅう?」



そんなような話をした気がする。お兄様は私をテーブルまでエスコートしながら笑う。



「そうだね」


「わたしは まだ まほうは つかえそうにないです」


「じゃあしばらく怪獣のまんまだね?」


「むー・・・こまりました」


「あはは、まあまあ、今日は怪獣とごはんにしよう?僕とスカーレットの好きなものを用意してもらったんだ」


「すきなもの・・・キッシュですか?」


「そうだよ。僕はムニエルをお願いしたんだ。デザートはベリーのマフィンと生クリームの乗ったプリン」


「ふたつもいいんですか?」


「特別だって」


「うれしいです!」



普段はデザートはひとつまでしか食べちゃダメと言われてるのでふたつも食べられるのは純粋に嬉しい。でも、なんで今日突然こんなことになったんだろう?



「うれしいですけど、どうして今日なんですか?あした にしてくれれば わたしだって もっと かわいいかっこうにしました」


「デートは可愛くするものって知ってるんだ?」


「おねえさまたちが はなしてたんです」



これは嘘じゃない。3人でお話してるときに『デートはおしゃれをして出かけるものらしいわ』なんて話をしていた。ふたりが想像する『デート』は非常に可愛いものだったのでこっそりキュンキュンしていた。可愛いのだお姉様たちは。



「そっか。でもね、明日だとちょっとマズイんだよねえ」


「どうしてですか?」


「サナト様の仕事が終わりそうなんだってお母様から聞いてね?」



ああ、そういえば昨日の夜、寝る前にお父様はそんなようなことを言ってたっけ。たぶんワースレス伯爵家の問題に決着がつくんだろう。でも、それとこれになんの関係が?不思議そうな顔をしていたのかお兄様は説明してくれた。



「サナト様が居たらスカーレットとふたりきりでごはんなんて許してくれないからね。だから急だけど今日にしてもらったんだ。さ、着いたよスカーレット。いただこう?そのあと図書室で絵本を読んでまったりお昼寝するのもいいと思うんだけどどうかな?」


「さんせいです!」



私が元気良く答えるとお兄様は嬉しそうに笑った。その顔を見て思わず聞いてしまった。『うちにきて たのしいですか?』と。



「気にさせちゃったかな。楽しいよ。とってもね」


「・・・へんなこと きいちゃって ごめんなさい」


「ううん。僕のことを思って聞いてくれたんでしょう?スカーレット、優しいね。ありがとう」



そう言って私に微笑みかけるお兄様はとってもきれいなのに、なんだか怖い気がしてジッと見つめるけどいつものお兄様となんの代わりもない。気のせいだと首を振るとお兄様とのランチに舌鼓をうつことにした。



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