おじい様はフィクサーらしい
しばらくするとお姉様とパトリオット王子がガゼボに入ってきた。パトリオット王子は私を見るとクスクスと笑う。
「スカーレット嬢は聞いていたより甘えん坊なんだ?」
「ええ!それにトパーズはしっかり者なんですよ!でも、こっそり私に甘えてくれることもあってですね・・・私の可愛い自慢の妹たちですわ!」
エレーナお姉様の言葉にトパーズお姉様が恥ずかしそうにもじもじしている。そんなお姉様が可愛らしかったのでぎゅうぎゅう抱きついておいた。私がお姉様とイチャイチャしているとお兄様が『あれ?』と声をあげた。
「僕は自慢してくれないの?」
「ケビンの自慢はスカーレットがしますもの。この1ヶ月、私がスカーレットと交流してない日ですらケビンはスカーレットと仲良くして本当にうらやまし・・・こほんっ」
「分かります!お兄様とスカーレットがふたりでこっそり仲良くしてるのを見るのは目の保養ですけど、私だってスカーレットを構いたくて構いたくてしかたな・・・こほんっ」
確かにこの1ヶ月お姉様たちもお城に行く準備で忙しかったし私も落ち込んでいたから歩き回ることもなく、レイチェル様から出された課題をやったり図書室の隅で少し読めるようになった絵本を読んだりして分かりやすくいじけていた。そのとき、毎日私のところへやってきては何を言うでもなく、絵本を読んだりこっそりおやつを持ってきてくれたりお昼寝したりしてくれていたのがお兄様だった。それでかなり仲良くなって私は見事にファザコン・マザコン・シスコン・ブラコンの称号を欲しいままにした。ふふん。
帰ったらお姉様たちとイチャイチャしよう。早く帰りたくなってきた。
「スカーレット嬢、ケビンはどうなの?」
パトリオット様に聞かれたのでトパーズお姉様から離れて胸を張る。よくぞ聞いてくれました!
「やさしくて、かっこよくて、あたまがよくって、とってもだいすきです」
「・・・ありがとうございますパトリオット王子」
「いいよ」
「??」
「・・・いやぁ、いい具合に拗れてて見てる分には楽しいですねえ」
おじい様がなんだか意味深なことを言っている。ブライト王子が私に結婚しろーって騒いでるのにパトリオット王子はエレーナお姉様を好きっぽいからだろうか。きょとんとしているとおじい様は私の頭を撫でた。
「スカーレットは自分が好きになった人を選べばいいんですよ。大丈夫、ブライト王子が何か言ってきてもこう言えばいいという、魔法の呪文を教えてあげましょう」
「じゅもんですか!」
「ええ。『シュプリーム侯爵を通してください』ですよ」
「??」
「わー・・・ブライトどんどん首を絞めてってるなあ」
「どういうことなんですの?」
エレーナお姉様が私の代わりにおじい様に聞いてくれた。私も知りたいのでうんうんと頷くとそうですねえと言ってお茶を一口飲むとおじい様はにっこり笑ってこう言った。
「おじい様はフィクサーなんですよ」
黒幕かあ。宰相だもんね。陛下も政には積極的に参加してるらしいけど、大きいことを決めたり小さいところに気を配ったりして国を回しているのは宰相であるおじい様なんだろう。王家にだけ権力が集中しすぎるのは危険だけど力が無さすぎるのも国内外への示しが悪いからその辺りの匙加減も陛下とおじい様がやっているんじゃないだろうか。
「ある意味最強の祖父だよね」
「いえいえ、私などまだまだ」
『それでまだまだなんだ?』と言ってパトリオット王子は苦笑してた。




