表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/103

お母様とおそろいのもの

お父様のエスコートで馬車を降りると騎士の人が中まで案内してくれた。お父様が私を抱っこして歩くならともかく全員いると安全面を重視しなくちゃいけないからメイドさんじゃないんだろう。お兄様に手伝ってもらいながら歩いていくけれどなかなか歩くのが大変だ。歩幅が短いからあんまり進まない。屋敷はともかくお城は距離感が分からないからだろう。



「こちらで陛下たちがお待ちです。どうぞ」


「ありがとう。スカーレット、着いてこれてるかな?」


「大丈夫ですよサナト様。ただ少しスカーレットに息をさせてあげてください」



息も絶え絶えな私の代わりにお兄様がお父様に返事をしてくれた。その間になんとか息を整える。



「だ、いじょうぶです」


「よし。それじゃあ開けてもらえるかな」



お父様の言葉を聞いて騎士の人が扉を開けてくれる。中に入ると目の前に咲いてる花に目を奪われるこれって・・・。



「よく来たな」


「お待たせしました陛下。王妃様に殿下たち、お待たせしてしまい申し訳ありません」


「いいんですよ。サナト様、私的な場ですもの楽にしてくださいな。そうでないと私はルティシア様と気兼ねなくお話しできません」


「陛下もよろしいですか?」


「ああ、構わない。皆も楽にしてくれ」



お姉様たちと一緒に陛下に淑女の礼をしてから言われた通り少し態度を軟化させる。緊張してはいないけど、やっぱり王家の方には許可が出るまではきちんとした態度を取るべきだとレイチェル様に叩き込まれたからだ。それにしても・・・。



「・・・綺麗だねスカーレット」


「・・・はい」



お兄様の言葉に頷く。目の前で咲き誇っていたのは桜だった。この世界で見ることはないと思っていた。見られるとも思ってなかった。案内されたソファに座ることもせずに桜を眺める。



「・・・気に入ったかスカーレット」


「・・・はい」



話しかけて来たのは陛下だった。私に合わせてしゃがんでくれている。



「そうか。スカーレットは見る目があるぞ」


「・・・へいか」


「どうした?」



ちらりと周りを見渡す。王子たちはお姉様たちと挨拶していたしお母様はエミリア様と話している。お父様は仕方なさそうな顔をして肘をついて座っていた。



「おしえて ほしいことが、あります」


「・・・ここで大丈夫か?」


「・・・」



首を小さく振ると陛下は少し思案して立ち上がると私の手を握って歩き出す。陛下が歩いても誰も気にした様子がない。いや、案内してくれた騎士の人は付いてきてるけど。



「へいか?」


「こうやってこっそりパーティーを抜け出すのはよくやったんだ。ガゼボに行こう。あそこならそんなすぐには見つからないさ。エリオットもいるしな」


「まったく・・・私はサナト様に怒られる陛下をお助けしませんからね。これは小さなレディのために目をつぶるだけです」



仕方ない人なんですよ陛下ってと言って私に茶目っ気たっぷりに微笑んでくれた騎士の人改めてエリオット様。か、かっこいい・・・。



「こっちだスカーレット」



陛下と歩くと程なくしてガゼボに出る。陛下に座らせてもらいながら思う。こんな簡単に着いて本当に見つからないのかな・・・?



「簡単に着いたように見えても意外と入り組んでるから心配ない。エリオット、誰か来たら知らせてくれ」


「かしこまりました」


ガゼボのすぐ近くで周りを気にするエリオット様。本当にすぐにでも知らせてくれそうなので私は思いきって陛下を見上げた。



「・・・おかあさまが わたしが となりにすわりたいって いったら ないてしまいました」


「・・・ふむ」


「りゆうを きいても だれも こたえて くれないんです。わかったような かおは するのに」


「そうか」


「へいか の めのいろと おとうさまとわたしの めのいろが おんなじ なのが りゆう ですか」



そう聞くと陛下は私の頭をぽんぽんと撫でるとなんと説明したものかと首を傾げた。



「ごまかさないで ぜんぶ おしえてください」


「スカーレット」


「むずかしくてもいいです。おかあさまが わたしのせいで かなしいのは いやだから おしえてください」


「・・・スカーレットのせいで、ルティシア嬢が傷ついたことはない。それだけは本当だ」


「じゃあ、どうして おかあさまは ないたんですか?」


「・・・青い目の色は王家の色だ。でも、王家ほど血の濃くない公爵家は必ずしも出るわけじゃない。が、フェイバー公爵家だけは別だ。王家の次に血が濃いからな。兄弟の中で誰かしら青い目の子どもが生まれる。だが、エレーナもトパーズも青い目じゃないだろう?そのことでルティシア嬢に色々とひどいことを言う人間がいたんだ。スカーレットが生まれたときに私もルティシア嬢に会いに行ったが心底安心した顔をしていた。エミリアにはスカーレットに申し訳ないと呟いていたらしい」


「どうして、あやまるんですか?」


「スカーレットが生まれて周りの人間は手の平を返した。ルティシアを誉めちぎるだけでは飽きたらずあんなに色々と言っていたエレーナやトパーズまでよく見ればサナトに似ているなどとのたまっていたな。よく見なくともふたりにそっくりだったのに目が腐り落ちてるんじゃないかと思った。まあ、私の感想は置いておくとして、ルティシア嬢は事態を好転させるためにスカーレットを使ってしまったような気がしているんだろう。そんなの周りのくだらない雑音だ。ルティシア嬢が気にやむこともスカーレットが気にすることもない」


「・・・よかった」


「スカーレット?」


「わたしの みためが こうだから おかあさまが ひどいことを いわれなくて すんだんなら わたしは おかあさま と おねえさまたちを まもれたって ことですよね?だから、よかったなって おもいます」


「・・・いい子だなスカーレット。スカーレットはお母様やお姉様を守りたいのか?」


「はい!おかあさま たちには ニコニコしててほしいです!」


「・・・嫁に来させるのはもったいないかもしれないな・・・」


「なにか言いましたか?」



陛下が何か言った気がするけれどちょうど強く風が吹いて何も聞こえなかった。陛下に尋ねても大したことじゃないと首を振られてしまう。



「・・・陛下」


「サナトでも来たか?」


「いえ・・・それが」


「お話しは終わりましたか陛下」


「ケビンか。よくここまでたどり着けたな」


「大変でした。人が通ったような跡を追ってやっと見つけられたくらいです」


「足跡なんてたくさんあっただろう」


「スカーレットは大人よりずっと足が小さいですから」


「・・・なるほど、サナトが変わった子が来たと言っていたが納得した。スカーレットを独占して悪かったな。さあ戻ろう。紅茶が冷める」



エリオット様の先導で元のところに戻ると話しかけようとしてくるブライト王子は無視してお母様の膝に抱きついた。お母様はびっくりしている。



「スカーレット、どうしたの?」


「・・・わたし この めのいろで おかあさまが いやなこと いわれなく なったなら うれしいですよ?」



お母様がキッと陛下を見つめる。そんなお母様にもっと抱きついた。



「へいかに おしえてください へいきですって いったのは わたしです。 へいかを おこらないで ください」


「・・・スカーレット」



お母様は私をソファに乗せる。エミリア様とお母様の間だ。



「私はあなたのことを心から愛してるのに、どこかで青い目だからじゃないかと思っていたわ。ひどいわよね」


「・・・じゃあ、どうして わたしの なまえは スカーレット なんですか?」


「え・・・」


「スカーレットは あかの なかまだって ミーナがおしえて くれました。おかあさまは わたしにも あかを くれました! おそろいに してくれたのに あおいめだから なんてこと ないと おもいます」



「・・・!!スカーレット、スカーレット、私っ、愛してるわエレーナもトパーズもスカーレットも、ケビンも。可愛い私の子だもの・・・どうして、周りの言うことを気にして自分の心を信じられなかったのかしらね・・・。許して、許してねスカーレット。私、大好きよみんな、大好き」



エレーナお姉様とトパーズお姉様、ケビンお兄様もお母様の周りに集まって順番に抱きついた。ケビンお兄様は手を握るだけだったけど嬉しそうにしている。



「・・・ルティシア、良かったね」


「はいっ、はい、サナト様・・・。これも、陛下がスカーレットを子どもだからとあしらうのではなく、真摯にお答えくださったおかげです。ありがとうございます」



そう言って笑うお母様は周りに咲いているどんな花より綺麗だった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ