別々の馬車
あのお母様とのことがあってから、私はすっかり落ち込んでいた。それは今日のお城でのお花見の日でも同じだ。エミリア様に会えるというのに気持ちは全然浮上しない。今日は人数が多いからって馬車を2つに分けたけど大きな馬車もあるのにこうしたってことは私とお母様を離したかったんだろう。私はお父様、エレーナお姉様と一緒の馬車に乗っていた。1ヶ月も塞ぎ込んでいる私を気づかってお姉様は頭を撫でてから話しかけてくれた。
「・・・スカーレット、お揃いのドレスにしてもらえてよかったわね」
「・・・・・・はい」
それでも私はあんまり長く話はできないでいた。お姉様たちとお揃いのドレスは嬉しいけれどお母様とギクシャクしてしまった上にエミリア様に会えること以外は何にも楽しくないお城に行くということで私の機嫌は良くならなかった。
「おいでスカーレット」
お父様は馬車が少し止まったタイミングを見計らって私を膝にのせた。
「お母様がスカーレットのことを大好きなのは間違いないよ。今はそれじゃだめ?」
「・・・だめっていったら おとうさまは こまりますか?」
「スカーレット、そんなこと気にしないで。お父様はスカーレットに困らせられるのは迷惑でもなんでもないんだから。もちろん家族みんなに困らせられたってそう思うよ。むしろもっと困らせるくらいワガママ言ってもいいのに皆いい子だから父親の威厳を保つのも大変なんだよ?」
エレーナもおいでとお父様が私を左足、お姉様を右足に乗せた。
「みんな、僕とルティシアの宝物。それは間違いない。でもね、言えないこともやっぱりあるんだ。大切だから話せない。スカーレットがもう少し大人になったら話すから」
「・・・はい」
返事はしても、やっぱりお母様には笑っていて欲しいから、理由を知りたい。そんなことを考えながらお父様にくっついてうじうじしていると馬車に着いてるカーテンの隙間からお城の先が見えた。




