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お隣に座りたいだけ

おやつを食べるためにティールームへ向かう。3時にみんなでティールームに揃っておやつを食べるのが我が家の決まりだ。お父様は来られないこともあるけど他のみんなは集まってることが多いので待たせてしまっているかもしれない。



「みんな待ってるかな?」


「そしたら わたしが ねてたからって あやまれば いいです」


「うーん」


「お兄様?」



図書室での甘々な姿はどこへやら。私の手を引く姿は優しくてしっかりもののお兄様そのもの。だったのに、立ち止まって私を見つめるお兄様の瞳は優しさだけじゃない気がして固まる。



「図書室でのことは内緒にしよう?」


「な、なんでですか?」


「秘密があると仲良しっぽいから」


「そうなんですか?」


「そうだよ。内緒にしてくれる?」



もう一度お兄様を見るとやっぱり優しい顔をしていた。疑心暗鬼になっているから変に勘繰ってしまって不穏に見えただけかもしれない。



「わかりました ないしょにします」


「よし、それじゃあ行こうか」


「はい」



二人で仲良く歩いてティールームまで着いた。入口に立っているメイドさんが微笑ましいものを見る顔をしてから扉を開けてくれたので中に入るとお母様だけが座っていた。



「まあ、まあまあまあ。いつの間に仲良くなったの?スカーレットは最初だけ勇気を出したのにあとは人見知りに戻ってしまったでしょう?心配してたの」



そう言いながらお母様は私をお父様の席に座らせた。ケビンお兄様が私の向かいの席に座るのを確認してお母様が座るとお茶とケーキが出てきた。



「おかあさま、おとうさまと おねえさま たちは こないんですか?」


「ふたりでお父様を独占するんですって」


「・・・よいしょ」



それを聞いた私はソファを降りるとお母様の膝に手を置く。



「それなら、わたし、おかあさまの よこにすわりたいです」


「!!」


「いつもは おねえさまたち ばっかり です。ずるいと おもいます」



お母様はあんまり私を近くに座らせない。お姉様たちが何故かお父様を私に譲るからだ。でも、私だってお母様の横に座ってお茶したい。



「そう、そうよね。そうよね、スカーレット・・・ううっ」


「?なんで おかあさま ないてるんですか?」


「ふふ、なんでかしらねえ」


「おかあさま、ないちゃ いやです」



お母様の膝にぎゅっと抱きつくとお兄様が私をソファに乗せてくれたので行儀も気にせずお母様の膝に乗るとぎゅっと抱きついた。



「おかあさま が かなしいと いやです」


「悲しいんじゃないのよ・・・そうよね、スカーレット、ごめんなさい」


「ううー、おかあさま なかないで・・・」



ぎゅうっと抱きつく私の髪を撫でるお母様の手にすり寄る。どうして、私が隣に座りたいって言っただけでお母様は泣いてしまったんだろう。私もつられて泣いてしまう。



「うー・・・」


「ああ、ダメよ目を擦っちゃ。赤くなっちゃうわ」


「・・・となりに すわっちゃ だめなんですか?」


「そんなこと!」


「お母様、スカーレット、落ち着いてください。お茶でも飲みましょう。ほら、スカーレットは真ん中だよ」


「・・・う、ううっ」


「大丈夫大丈夫。よしよし、スカーレット、お母様もスカーレットも何にも悪くないからね」


「ひくっ、ほんとうですか?」


「うん。だから、おやつにしようねスカーレット」


「・・・はい」



お母様の隣で食べるおやつは何だかちょっぴりしょっぱかった。

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