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閑話2 協力者ふたりは幼なじみ

レイチェルを門まで案内する途中、彼女は私の横で『見栄をはったわ』と呟いた。首を傾げるとレイチェルは『生徒の数よ』と言って苦笑した。



「少ないなんて、ものじゃないこと、知ってるでしょう」


「・・・ええ、まあ」



苦虫を噛み潰した顔になるのは許してほしい。別にレイチェルが才能がないとか教育者として劣っているというわけではない。ただ、彼女のお父様やお母様が現役で教育家として素晴らしいと優秀だといわれていること、彼女の夫であるジョン様も教育家の中でも著名な家系の出身で優秀、それにレイチェルより年上で経験もあるとなればストリクト家といえどレイチェルが指名される可能性はほとんどない。



「その場しのぎのマナーを教えてくれなんて言われて子爵家や男爵家から呼ばれることはあるけど、専任ってなるとやはり皆私は選ばないわ。専任教師として招き入れるとストリクト家ってだけで費用が高くなるもの。そこまでの価値は私にないと皆思うのね」


「・・・レイチェル」


「専任なのはスカーレット様だけです、なんて、かっこわるくて言えなかったわ」


そう言ってレイチェルはまた泣き出してしまった。そんな幼なじみの肩を抱く。私が3年前、学園を卒業してすぐだから18歳のときに家を飛び出した私のために、ほとんど縁の無かったフェイバー公爵家までわざわざ駆けつけてくれた彼女がしてくれたように。



「私の方が年上なのに情けないわね」


「20歳を過ぎたら1歳差なんてないようなものよ」


「・・・ありがとう」


「それに、意外とお嬢様はそれを知ったらやる気になると思うわ」


「・・・ 不安になるわよ、絶対」


「ううん、そんなことない。お嬢様だもの」


「ミーナは本当にスカーレット様が大好きなのね」


「ええ。私の天使様だわ。昔も今も」


「まだ3年しか一緒にいないのに先が思いやられるわ・・・でも、天使様だと思ってるなら、本当に令嬢に戻るべきよ。いつまでも社会勉強で誤魔化せるとは思えないしメイドのままじゃ守れないわ」


「・・・そうね」



ストリクト家の馬車が見えてきたからお話はここまでだ。そう思ったのにレイチェルは私をぎゅっと抱きしめた。



「れ、レイチェル!」


「大丈夫よ。今日はじいやが送ってくれたの」



白髪を後ろに撫でつけて品よく立っている男性は、確かに私のこともよく知っているじいやだった。



「・・・私はいつまでもミーナの味方よ。だから、彼と結婚するもしないも、ミーナが決めていいと思うわ」


「・・・ありがとうレイチェル」


「・・・それじゃあね。また来るわ」


「ええ」



じいやも私ににっこりと笑って馬車に乗り込むと颯爽と馬車を走らせた。あの人も本当になんでもできる人ね。



「ミーナ嬢、レイチェルは?」


「ジョン様、レイチェルなら今帰りましたわ」



後ろからジョン様がやってきた。馬車が2つあるのには気づいていた。ケンカでもしたんだろうと思って触れないでいたけれどやっぱりそうだったらしい。



「・・・それなら僕も帰らないと。急いで渡したいものがあるから」


「それは・・・?」


「スカーレットとケビンが、仲直りするのにこれを渡すといいってわざわざ用意してくれてね」


「おふたりが?」


「発案はスカーレットなんだけどケビンも協力してくれたよ」


「そうですか。でしたらお早く。謝るのは早いほうがいいですわ。特に彼女の場合」


「・・・僕は彼女に好かれてると思う?」


「好かれてないとお思いですか?」


「半ば無理矢理結婚にこぎ着けたみたいなものだからね」



レイチェルが無理矢理結婚にこじつける男性が嫌いなのを分かっているジョン様は困ったような顔をする。そんな彼に大丈夫ですわとした。実際、大丈夫なんだから。



「彼女は嫌だったら徹底的に回避します。実際何人もお断りされた方がいます」


「つまり?」


「それ以上を私から言うのは無粋でしょう?早くお帰りになってレイチェルからお聞きになるのがいいかと思われます」


「・・・そうするよ。ありがとうミーナ」



そういって馬車に乗り込むとジョン様も帰っていった。道に出た馬車の速度が速かったから急がせたんだろう。まったく



「あれでお互いに仲良くないと思っているんだから不思議だわ」



踵を返して屋敷に向かう。お昼が終わったらお嬢様は今日出された課題をやるに違いない。準備をしておかないと。お嬢様のために何かしてあげることがあるのが楽しくて、嬉しくて仕方ない私はしばらく令嬢には戻れそうにない。











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