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改めて仲良くしてください

急いで噴水のところまで戻るとお兄様はすでにレターセットとペンを持ってきてくれていた。



「おかえりスカーレット。はいこれ」


「ありがとうございますおにいさま。はい、ジョン さま これ」


「これは・・・?」


「あって、ごめんなさいをいうのが むずかしいなら おてがみで いうんですよ!おかあさまが よくしてます!」


「ああ・・・ルティシア様らしい。それでこの花は?」


「カンパニュラです!」


「カンパニュラには『ごめんなさい』という花言葉があるのでスカーレットはこの花と手紙をレイチェル様に渡してみてはと言いたいんです」



そうだよね?と聞くお兄様にこくこくと頷く。ジョン様は笑うと受け取ってくれた。



「ありがとう。ここで書いていこうかな」



ジョン様が隣に居てと言うのでお兄様と一緒に噴水に座る。今度はハンカチではなくお兄様の膝の上だ。しばらくしてジョン様は筆を止めて何度も手紙を読み直してから頷いた。



「・・・よし」


「かけましたか?」


「うん。ペンとレターセットの残りは返すよ。ありがとうスカーレット。早速帰ったら渡そうと思う」


「はい!」


「ケビンもありがとう。また明後日来るからね」


「お待ちしてます」


「エリック を よびますか?」


「大丈夫だよ。サナトによろしくと伝えておいて」



ジョン様は手を降るとお手紙とお花をしっかり持って帰っていった。これで仲直りできるといいけど。



「スカーレット」


「なんですか?」


「ううん、最初にあった日は隣に来てくれたのに、そのあとは近寄ってきてくれなかったから嫌われたかなと思ってたんだけど、膝に乗ってくれたってことは違うってことでいいの?」


「!」



振り返ると悲しそうな顔をするケビンが見えて申し訳ない気持ちになる。確かに攻略キャラクターだからって避けてきた。それ以外にどこかで『あんまり 話しかけたら嫌われるんじゃないか』とも思っていた。でも、攻略キャラクターだとあんまり関わってない内から嫌われるかもなんて考えて、家族なのに避けるのは良くなかった。ごめんなさいと謝ると同時に頭痛がする。そして思い出したのがケビンルートの詳細だった。そうだ、ケビンルートのバッドエンド、どうして忘れてたんだろう。ケビンのバッドエンドだけはスカーレットが悲惨な目に遭うというのに。



「スカーレット?」


「きらわれちゃったら いやだから」



そう言って俯く。ゲームでは子どもの頃、ケビンは自分が家に馴染めない理由を家族の中心にいるスカーレットのせいだと決めつけていた。スカーレットは確かにケビンを避けていたがそれはどう接していいか分からなかったから。でもその態度が余計にケビンを追い詰める。なぜなら大人になるにつれケビンはスカーレットを女性として愛してしまった。


ケビンは相手にしてくれないスカーレットを部屋に呼び出すと既成事実を作る。それを従者に扮してブライト王子に耳打ちした。愛情がヒロインにある王子はそれを利用してパーティーの場でスカーレットとの婚約を破棄しようとする。それを逆手に取りケビンはブライト王子の不誠実を暴露。公爵家を軽んじたとしてヒロインを家ごと潰す。その後ブライト王子とスカーレットの婚約を解消させた上に賠償金を奪い素知らぬ顔でスカーレットを妻にした。その過程を全て隣で見せられたスカーレットは心を病んでしまう。そんなスカーレットをケビンは生涯屋敷に閉じ込めて歪んだ愛を貫き通すのだ。ヒロインが攻略キャラクターに潰されるという衝撃のバッドエンド。これはこのルート全ての人間にとってもバッドエンドだっただろう。



「おにいさまに、きらわれたく、なかったから」



この気持ちに嘘はない。だから家族仲を取り持った。私が近くにいればお母様もお姉様たちも私に話しかけるから近づかないでいたのだ。そうすれば皆仲良くなれると思って。そこに自分が含まれていないことに気づいてはいなかったのだけど。そんなことを言うとお兄様は首を傾げる。



「嫌われるくらい、スカーレットは嫌な子なの?」


「・・・」



嫌な子というより、ズルいんだと思う。どうなるか知ってる上でそれを避けるように動く私は。そのズルさも呑み込んで断罪を阻止する決意はしたけれど人生をカンニングするような行為だ褒められたものではない。黙ってしまった私の頭をお兄様は撫でる。



「ごめんね。意地悪を言っちゃった。スカーレットは僕のこと、嫌いじゃないってことでいいんだよね?」


「はい・・・」


「よかった」



そう言って後ろからギューッと抱きしめられて固まる。すると急に浮遊感がした。顔をあげるとお父様がにっこりと微笑んで私を抱き上げている。



「ごはんの時間だよ」


「え、あっ!ごめんなさい、おまたせ しましたか?」


「ううん。大丈夫だよ。行こうか。ケビン早くおいで」



呆けているケビンお兄様に声をかけるとお父様はダイニングへと歩いていく。後ろから小さく舌打ちが聞こえた気もするけどきっと気のせいだよね・・・?



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