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必要なものがあるようです

「お嬢様、この不肖ミーナ、微力ながらお手伝いします!」


「いいの?」


「はい!」


「ミーナが てつだってくれるなら こころづよいです!」


「はいっ!お任せくださいスカーレット様っ!」



ミーナは私の手をぎゅっと握って目を潤ませている。ミーナは他の人にはあんまり感情を見せない。でも、私にだけはコロコロと表情を変えてくれる。私が子どもだから感情をさらけ出しやすいのかな。私が大人になったらミーナは素っ気なくなってしまうのだろうか。そうなったら、かなり寂しい。



「ミーナ、ずっと なかよくしてくださいね」


「ええ、私のお嬢様、お許しいただけるのならいくらでも」



ミーナはとうとう膝を床につくと自分の手を胸の前で握りしめて私を上げている。始めは驚いたけど定期的な発作のようなものだと思って今はこうなったミーナを見ても特に驚かなくなった。人間の適応力ってすばらしい。ありがとうという意味で彼女の頭を撫でるとミーナはニコニコと笑ってくれた。



「・・・そのためにはミーナも令嬢に戻らないといけないのではないかしら?スカーレット様がお茶会デビューした時にメイドのままだったら、あなた参加できないわよ?」


「・・・10歳までにはまだ7年ありますもの」


「7年間も令嬢として過ごさないでいたら勘が鈍るわよ。ああ、それは置いておきましょう。スカーレット様当主を目指すにはいろいろと必要になってくるものがございます」


「ひつようなもの ですか」


「ええ。女性は女主人としての勉強と当主としての勉強を平行して行う方が多いですしスカーレット様にもそうしていただきます。女主人のお勉強はフェイバー公爵家から費用・・・お金ですね。そちらをいただいてますので大丈夫ですが当主としてのお勉強の分はもちろんいただいてませんので新たに教材・・・お勉強の道具などを用意するお金が必要になります」


「そうですね。おとうさまにおねがいしてみます」


慈善事業ではないのだ。当然の言葉だろう。お父様にお願いしてみよう。興味があるといえば何とかしてくれないだろうか。ダメならお婆様に出世払いで貸していただけるようにお手紙を書こうか。とりあえず善は急げとお父様にお願いしに行こうとした私をレイチェル様が止めた。



「と、なるのが普通ですが、私、スカーレット様には大分期待しておりまして」


「どうしてですか?」


「ブライト王子はお顔だけはきれいでしょう?私の少ない教え子の中にはあの顔を見て結婚して欲しいと言った子が何人もいました。それなのに、スカーレット様は本質を見抜きキチンとお断りまでしました。3歳なのになかなか出来ることではありません」


「言ってることが分からなくても大丈夫ですよお嬢様、これは悪い病気です」



将来有望な方を見るといつもこうなのでと笑うミーナ。大丈夫だよ意味は全部分かる。私の中身は大人だから。レイチェル様は立ち上がると控えめな胸をどんっと叩いて、比喩ではなく、本当にどんっと叩いて腰に手を当てて背中を少し反らせる。任せなさいとでも言いたげな姿勢で口を開いた。



「未来への投資だと思ってかかる費用は私が全て負担いたしましょう!こう見えてもブライト様が真面目になるきっかけを作ってくださったこと、感謝しているんですよ?母はそれこそ心労で倒れかねませんでした。これくらいのお礼はさせてください。それに無駄な賭けはしない主義です。スカーレット様は必ず素晴らしい当主になると確信しているからこそこのようなことを申し上げているのですよ」


「お嬢様は何も聞いていないのに浮かんできそうな疑問に全て答えていただきありがとうございますレイチェル様。さ、お座りになってください。お嬢様、レイチェル様がなんとかしてくださいますから当主としてのお勉強を始められますよ」


「・・・でも、おとうさまにおねがいしたほうが いいのでは ないですか?」


「いえ、そうなると王家側に気付かれる危険もあります。邪魔は入らないようにこの話は外には極力もらさないようにと言われて・・・・・・言われて・・・」


「いわれて?レイチェルさま、だれかにたのまれたのですか?」


「私がお願いしたのよスカーレット」


「大奥様!?」



大奥様ということは、扉を開けて入ってきたこの可愛らしいマダムは私のおばあ様なんだろう。おばあ様は今、フェイバー家がいくつか持っている領地の中でも気候がいいところでおじい様と悠々自適な隠居生活をしていると聞いていた。そんなおばあ様がどうして屋敷にいるんだろう。



「あのクソガ・・・こほん。スカーレットの前で汚い言葉はいけないわね。ろくでな・・・これもいけないわ」


「正式名称でよろしいかと思われます」


「ああ、そうねレイチェル。ブライト王子にお嫁さんになってだなんてバカげ・・・こほん。ふざけ・・・こほんこほん」


「思いもしなかったこと、でいかがでしょうか?」


「それいいわねミーナ!そう、思いもしなかったことをスカーレットが言われたなんてエリックのお父様から早馬で手紙が届いて急いでこちらに来たの。噂のケビンにも会いたかったしね」



そう言って優雅に微笑むお父様の生みの親は、お父様と同じように少し口が悪くて同じように金髪と青い瞳が綺麗な女性だった。








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