雨の舞踏会 解決編3
部屋に入ってきたケビンは私の様子を確認すると安心したのか息を吐いて微笑むと流れるように私の隣に座る。本来親族でも女子寮には入れないけれど今日は昨日の件もあってどの家の令嬢も男性騎士をそばに置いても構わないことになっているしケビンも許可を取ってきたのだろう。
「おはようスカーレット。起きていて大丈夫?」
「はい。お兄様はどうしてこちらへ?」
「今から正式な通達になるんだけど、今回の件を受けて学園側は警備体制を大きく見直すことになってね?」
ケビン言うには今回、相手が侯爵家ということもあって学園が雇っている騎士が全く反応できなかったということがかなり問題になっているらしい。私が公爵家だったからブライアンも咄嗟に動けたが(私は彼は爵位関係なく動くと思いますが黙っておきました)今後爵位が低い家の子息子女が爵位が高い家の子息子女によって危害や不利益を被るようなことがあった場合、学園で雇っている騎士がなんの対応もできないというのは子どもを預かる場として無責任ではないかという声が学園の教師や貴族の中から上がってきたらしい。
そこで夏休みまでもうすぐということもあり一旦生徒を全て帰宅させ体制を整えることになったらしい。
「というわけだから早めに荷物をまとめて一緒に帰ろうね」
「お兄様も一緒に帰るんですか?」
「学園長から直接お願いされてね。親族だし今日は一旦帰って明日から会議に参加してくれって」
実際、生徒を帰宅させたりするのに時間がかかることが予想されるから会議自体が明日からな上に一応教師とはいえ被害者の家族だから事後処理に参加してもらうのはしのびないという話になったそう。
「スカーレットだけじゃなくて侯爵家以上の人間は早めに帰ってもらうことになってるんだよね」
混乱を避けるためにある程度分散させて帰宅するということらしい。その話を聞いた瞬間ナターシャが奥に行ったので早々に支度にとりかかってくれたのでしょう。
「というわけで支度が出来次第帰ることになるから体調が悪いようだったら少しの時間だけど休んでいてもらった方が良いと思ったんだけど思ったより元気そうでよかった」
そう言ってケビンは私の喉に少し触れると困ったように笑う。てっきり怒るものと思っていただけに驚きが隠せない。
「そんなに驚かなくてもいいじゃない。怒ると思ったの?」
「・・・はい」
「これはスカーレットに怒っても仕方ないでしょ。・・・まあ、ブライト王子から花をもらった件については少し聞きたいこともあるけど―・・・それはスカーレットがちゃんと元気になってからにするね。ああ、時間があるからって色々考えて嘘ついてもバレるから素直に話すことをオススメするけど」
この騒ぎがあっても忘れませんかー忘れませんよね知ってる。まあ、この花について特にやましいことなんて・・・いえ、私とケビンは別に恋人というわけではないのだし言い訳をする必要がないというだけであってやましいとかやましくないとかそんなことは全然まったくこれっぽっちも気にすることはないんですけれど!
「・・・オススメされなくてもお兄様に嘘はつけませんから安心してください」
「ふふふ、ま!それよりも今はしなくちゃいけないことがあるし、この話はここまでにしておくね」
「はい・・・」
「さて、それじゃあ支度もあるだろうし僕は一旦出て行くね。1時間くらいあれば大丈夫かな?」
首を傾げてブライアンに尋ねるケビンにブライアンは少し思案してから頷く。
「問題はないと思います」
「そう。じゃあスカーレットのことよろしくね。スカーレットはおとなしくしておくんだよ」
「わかりました」
ケビンはブライアンに迎えの馬車がつく場所などを伝えて部屋を出ていった。てっきりもっといるものだと思っていたので拍子抜けしている。
「拍子抜けしたって顔ですねえお嬢様」
「な、別に残念ってわけじゃありませんよ」
「別に残念そうとは言っていませんが」
「あらあら、お嬢様は残念に思っているということですね?」
「からかわないでください!もう・・・それより、この1時間でパヴェートが置いていった資料を読まないといけませんね」
資料をブライアンから渡してもらい目を通す。そこに信じられない名前を見つけて思わず資料を床に撒き散らした私にブライアンとガーネットが慌てて駆け寄ってきた。
「大丈夫ですかお嬢様!?」
「気分でも悪くなってしまわれましたか?」
「・・・ええ、最悪です。どうして今さら・・・」
「お嬢様?」
私が指を指した資料を眺めて2人も目を見開く。そこにはケビンの元家族で2番目の兄、チャーリー・ステファンの名前が書かれていた。




