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雨の舞踏会 解決編2

いきなり現れた美青年ことパヴェートは私が10歳のときにフェイバー家元公爵であるおじい様が我が家で面倒を見てほしいと半ば押し付ける形でお父様に預けていった。彼は当時17歳でなんでもおばあ様が知り合いとのお茶会から帰る道すがら雨の中行き倒れているのを見つけて保護したらしい。明らかに訳ありな様子だったもののおじい様が調べさせた結果特になんの足取りもつかめなかったらしい。フェイバー公爵家の力があって過去の足取りが何もつかめないという時点で怪しさしかないが何もわからないからこそ一度拾った人間を外に放り出す訳にもいかない。思案した結果現在の当主であるお父様におしつ・・・任せることにした・・・。と私は聞いている。まあ実際フェイバー家が調べて分からないなんてことはそうないので私に伏せられただけかもしれないが。

そんな彼が我が家に来た当日にまあ色々とあったわけだけれど今は割愛する。スチルの端に写っていることもなかった人物なのでゲーム本編が始まる時間軸の前にその時あった出来事のせいでスカーレットのそばにいなかったのだろう。あまり大筋から離れていくと立ち回り方がわからなくなってしまうがもう今更かもしれない。



「暗い表情をされていかがされました私のお嬢様。ご気分でも悪いのですか?」


「いえ、大丈夫ですよ」



今後のことを考えると気が重いだけなので今は特に問題ない。まだヒロインも現れていないことだし考えても仕方ないことでもある。ただ、パヴェートは納得がいかないのか悲しそうな顔をして首を傾げた。


「ですが私のお嬢様がそのような顔をされると気になってしまいます。あなたは尊いお方なのですから万事あなたの思う通りに行って当然なのですよ?」


「大方あなたのその様子に参っているだけだと思いますが」


「うるさい。お嬢様に傷をつけさせておいて偉そうに」


ブライアンとパヴェートはすこぶる仲が悪い。同じ空間にいて軽い言い合いにならないことがないのだ。まあ、私が今のところ怒るつもりがないのをふたりとも分かった上でやっているのだろうし、公的な場面でやらかすことはないので好きにさせている。ただ、今回のパヴェートの言い分は訂正しておくべきだろう。



「パヴェート、やめてください。ブライアンたちのおかげでこの程度で済んだんですから」


「・・・私がいれば相手のことを亡き者にしましたのに」


「そういうことはしないのが我が家なんですよ」



少なくとも直接手を加えることはしない。パヴェートが来てから何度も説明していて彼も今のところそういったことをしたことはないけれど事あるごとにそう言ってくるので困っている。今回の件が落ち着いたらさらに細かく彼に教えた方がいいかもしれない。



「そ、それよりお嬢様に報告はしなくてよろしいんでしょうか・・・?」


「ああ!そうでした。ありがとうございますナターシャさん」


「い、いえ・・・」



話を戻してくれたナターシャは返事をすると私の後ろに回ってしまった。彼女は美形が苦手なのでしかたない。ブライアンはなぜか平気らしいけどたぶん美形で少し浮ついた雰囲気のするタイプが苦手なのだろうなと私は思っている。そんなナターシャの様子をあまり気にすることなく姿勢を正すとパヴェートは口を開いた。



「それでは改めまして報告させていただきますね私のお嬢様。今回の件なのですが裏で糸を引いている人間がいるようです」


「・・・誰なのかと目的は分かっていますか?」


「おや、怒ったりしないのですか?私のお嬢様はこういった誰かが一方的に利用されるような手段はお嫌いでしょう?」


「今ここで怒ったところでなんの意味もありませんから」



ここで私が怒って事態が好転するならいくらでも怒るけれど今の私に必要なのは起きていることと私がどんな風に動いたらいいのか把握することだ。お父様やおじい様、叔父様もいるしあまり大きく動く必要はないけれど私が弱点になってしまうのは困る。私の言い分にそれもそうだとパヴェートは頷くと1枚の紙を差し出した。



「これは?」


「今回調べたものの詳細です。私はそろそろ失礼させていただいた方がよさそうですので詳しくはこちらをご覧ください」


そう答えるが早いかパヴェートは窓から音も無く飛び降りて行った。


「・・・ほとんど音も無く降りていかれました・・・」


「まあ、いつものことですよ」


そう、パヴェートに関してはいつものことなのだ。深く考えても分かることではないし、前に一度聞いたらものすごい美形が甘い笑顔で唇に人差し指を添えるという攻撃を食らって再起不能になっただけだった。あの時期まだお兄様が家にいなかったので私が美形に悶えていたのを知っているのはガーネットだけなのは幸いだった。



「それよりもパヴェートが挨拶もそこそこに出て行くなんて珍しいですね」


「まあ、仕方ないと思いますよ」


「どうしてよ兄さん」


答えようとしたブライアンに被るようにドアがノックされる。ガーネットが確認しに行くと慌てて戻ってきた。



「お嬢様、そちらの紙は一旦兄さんに預けてください!」


「?」


「ケビン様がいらっしゃいました!」


「えっ?」



だからパヴェートは急いで部屋を後にしたのか。彼は頑なにケビンと会おうとはしない。確かにケビンは私が男性と会うのをあまり快く思わないけれどブライアンも会っているし大丈夫じゃないかと言っても首を横に振られるだけだった。そんなことを考えて動きの止まった私の前にブライアンが手を差し出す。



「お嬢様、とりあえずそちらは私に」



目を通す訳にもいかず一先ずブライアンに書類を渡しながら思う。ケビンが来ているのが分かって出て行ったパヴェートもそれらをすべて把握している様子のブライアン・・・人間離れしすぎではないですか・・・?







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