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30.青の位階

テツさまが扉を開けてくださる。


ごく自然に、ありがとうございますって素直に外へ向かったけど。

それ、身分的に本来は私がする役割なんじゃ…あ、でもそう、私この方の婚約者だわね。

いえその、まずはお付き合いさせて頂いてる立場で。


雷に打たれた気分で悟る。これが、まさか自然な状態? な…慣れないわぁ…。


なんにしろ、この方のことだから、さっき私が言った申し出については、無かったことにされそうよね。そうはさせないんだから。あとできっちり、取り立ててもらわないと。


些細なことで頭を悩ませながら、私は顔を上げる。なんだか外がやたら眩しかった。

お昼が過ぎて、夕方に差し掛かった頃合いだしね、こんなものかしら。

すぐ、目を伏せる。とたん、明るくなった室内、その足元が目に入った。


やっぱり、散らかってる。

私が散らかしたものもあるだろうけど。その中に、見覚えがある薬草の袋がいくつも散乱してた。あとで片付け、手伝わないと。


なんだかもう、今日の仕事は全部終わった気分。試練を一つ乗り越えた、とも言えそうな疲労感が身体の底に蟠ってる。



でもたぶん、これからが本番、なのよね…。



諦め半分、外へ出るなり。精霊たちが全身に張り付いてきた気がした。

なんか静かだと思ったら、外にいたのね。それにしても、焦ってるみたいな…思いつつ、顔を上げるなり。



「あの」



目に映った光景に、私は仕方なく尋ねた。

「…何があったんですか」


向かいの、大木の根元。そこで、ジスカールさんが尻もちをついてた。

隣で膝をついたシルヴィアさまが彼女を支えるように起き上がらせてる。そんな彼女たちと、私たちの間。


ちょうど中間で、チェンバースさまは背中を踏んづけられて、這い蹲ってた。要するに、抑え込まれてる。


誰にって?

この場で残るはお一人だけよ。アンガス・バルヒェットさま―――――騎士さまね。

彼は、チェンバースさまの首筋に、飄々とした顔で剣先を突き付けてる。物騒な状況のはずなのに、喜劇の一場面に見えるのは、きっと騎士さまの気楽な雰囲気のせいね。


この状況。

私の目には、介抱しようと近づいたジスカールさんを突き飛ばして、ギデオン・チェンバースさまが逃げようとした、そんな絵図が見えるんですが。

騎士さまが、私たちにひらり、手を振ってきた。


「ま、見た通りですね」

筋骨隆々とした騎士さまは、相変わらず軽い。なのに、妙な安心感がある。不思議な方。

彼の向こう側に目を向ければ、尻もちをついたジスカールさんを介抱するシルヴィアさまが、可憐に私に微笑みかけてこられた。


「わたくし、逃げたいのなら逃がせばよろしいわと申しましたのよ?」

うううん、それは見ただけじゃ分からなかったなぁ!


でも騎士さまはシルヴィアさまの意見をとりあえず横において、チェンバースさまを引き留めてくださったと。わあ有能。


観念したみたいに土を掴んでたチェンバースさまのお顔が青い。どんな勢いで引き倒したのか、眼鏡が離れたところまで飛んでた。

「女子に乱暴な行動に出る男性にはあまり近寄りたくありませんし…いっそ一から作法をお教えしたほうがよろしいかしら? 力づくで」

どうしてかしら、シルヴィアさまはとても淑やかなのに、物騒な気配しか感じない。

「そんな、イェッツェルさまっ」

ジスカールさんが縋るようにシルヴィアさまを見上げた。


「ベルシュゼッツ公国の五大公家が、魔導大国グランノーツの青の位階の子息を害しては、深刻な国際問題となります!」


正論。

魔導大国グランノーツにおいて、位階持ちは十三人いる。

位階は、魔術に優れた者に与えられる地位。この国では、同時に支配者って面もあるわね。


真っ先に挙げられるのは、王。太陽の位階。


次に、王妃。月の位階。


ここまでは自動的に決められるけど、青―――――蒼天の例えらしいわね――――の位階は、そうじゃない。

十一人の君主がそれらの位階を受け継ぐ。本来なら、完全に実力制らしいわ。どうも最近は、世襲制になってるみたいだけど。


その、十一人の君主の一人、チェンバース卿の、彼は息子。


「イェッツェル…っ?」

チェンバースさまが驚愕の声を上げた。その目は、ジスカールさんの方を振り向こうとしてできず、見える範囲にいる私たちの方に向く。私を通り過ぎ、テツさまを映したんだろう、一瞬、魂が抜けたみたいな顔をなさって、



「ベルシュゼッツ公国、の?」



喘ぐみたいに、一言。ただ、声を荒げる様子はない。育ちの良さか、生来穏やかなのか。

でも、たちまち声が警戒で鎧われる。

「なぜ、公国の人間が樹海にいるんだい、しかも、…五大公家の方々、が」


「大精霊さまに」

私は口をはさんだ。感情を抜いた声で、魔導大国の人間なら、まず無視できない単語で気を引く。

「呼ばれたのです、チェンバースさま」

チェンバースさまは瞠った目を、私に向けた。私は目を細める。


「要件は」

そのまま、畳みかけた。

「ご存知ですよね」


「…ぼくは、キミこそが、大精霊と思ったんだけどな」

はい? 首を傾げる私に、チェンバースさまは自嘲気味に笑う。

「大精霊は、多くの精霊に慕われ、取り囲まれ、光り輝いているって聞いてたから」

私は周囲の精霊たちの気配を感じた。まあ、囲まれてるわね。でも光り輝いてるってのはどうかしら。


「それから、小さくて可愛い」


小さいは余計よ。


ふぅん、だから、最初、驚いたわけね。

けど大精霊さまって、顔面からして大きかったから、ちいさいってイメージはないわね。

いえちゃんと気づいてたわよ、あれは空へ姿を投影したものなんだって。

ちなみに、今、頭上に広がる空は青いわ。あの黄金の空は、なにがしかの結界だったんでしょうね。


「私は人間です。血が出たの、分かったでしょう?」

私以外の全員が、もの言いたげな目を私に向けた。あらなにかしら。


「…大精霊に、呼ばれたって言ったね」

「はい」

応じつつ、私はおかしなことに気付いた。


ええと、つまり、さっきこの方、私を大精霊さまと勘違いなさったのよね。


それで驚いた。…うーん、でもあの態度、化け物にでも遭遇した驚愕ぶり、だったと思うのだけど。



単に驚いたってだけでは説明しきれてない何かを感じる。第一。

グランノーツの人間なら、大精霊さまに対して、あの態度はおかしくない? まるで、大精霊さまを怖がってるみたい。



やっぱりこの方、何か秘密を抱えてる。


「なら、大精霊に何かを乞われたね。何を? そもそも、キミも五大公家の人間なのかな?」

問いかけは、穏やか。でも目が、何かを探ってる。ううん、どんな細かい異変も見逃すまいと神経質に視線が尖ってた。話を逸らそうとしてる?


だめよ、主導権はこっちが握る。なにより、そこは今、重要な話じゃない。

「五大公家の者でなくとも、グランノーツの異変は明らかです」

腹の探り合いをするには、お互い余裕がなさすぎるわ。私は直球で尋ねた。



「―――――教えてくださいません? いったいなにが起こっているのか」



「他国のものには関係がない話だよ」


返されたのは、穏やかな拒絶。当然ね。

魔導大国の貴族が、国家機密に関わる重要な情報を、公国の人間を前に素直に語るわけがないわ。

私はジスカールさんを一瞥。彼女は不思議そうに私を見返してきた。


あんまり、彼らを驚かせたくはないんだけど、仕方ない。

魔導大国の人間の興味を引くには何が一番か、誰だって知ってる。私は口を開いた。


「では、魔導大国の民にとっては?」

「…どういうこと」

慎重な口調に構わず、私は冷静に続ける。




「グランノーツの人間と精霊が敵対しています」




チェンバースさまの意識が、いっきに、私の言葉に奪われたのが分かった。

目の端で、ジスカールさんが目を瞠る。息も止まったみたいな沈黙が、一瞬、落ちた。


魔導大国で、人間と精霊が敵対なんて、あり得ない話だものね。


特にチェンバースさまにとっては、寝耳に水なんじゃないかしら。

いつからここにいるのか知らないけど樹海にこもってたんじゃあ、世間に疎くなるものね。

世情の、切羽詰まった状況をジスカールさん以上に知らなかったとしても、無理はないわ。



「ばかな」



彼は力なく喘いだ。全身から、力が抜ける。察した騎士さまが背から足を退けた。

「どうして敵対なんて話になるんだ、あり得ない」

私はあえて、冷たく告げる。

「錯乱ならいくらでもなさってくださって結構ですが、あとにしてくださいません?」

悪いけど、貴族の子息なら、早めに気持ちを切り替えてもらわないと。


酷な言い方って分かってるから、ジスカールさん、視線で私に「穏便に」って訴えないで。ハラハラした表情もしないで。ただでさえ罪悪感があるのに。


…緊急事態なのよ。ついさっき目の前で、大精霊さまに人間が喧嘩を売ったってだけじゃない。

この、異種族間で保たれていた友好という名の均衡が崩れた今―――――あの組織が介入してくる可能性がある。





世界の均衡を重んじる組織、<塔>が。





できれば第三の勢力が混じってややこしくなる前に、解決したいところ。


シルヴィアさまは、私たちのやり取りには特に興味がないって態度ね。周囲を物珍し気に眺めてらっしゃる。まるきり他人事って感じ。

それを責めたりはしないけど、こうして学校の外でお姿を拝見してると、浮世離れした方なのだなと思う。

背後に立ってらっしゃるテツさまもきっとそう。



「…だ、大精霊が―――――怒っているのか? それで、誰かが殺された…?」

狼狽えた表情で、チェンバースさま。這い蹲ってた格好から、身を起こす。操り人形みたいな動き。独り言めいた呟き。

実際、今、彼の目に私たちは映ってないわね。


「まさか人間から精霊を攻撃するなんてことはないはずだ」

かと思えば突如、このまま立ち上がれば駆け出すんじゃないかって勢いの早口になる。

私はちいさくため息。彼の鼻先で、手を叩いた。



―――――パンッ!



乾いた大きな音に、彼は眼鏡の向こうで目を瞬かせる。私は、にっこり。営業スマイル。

「質問ばかりですね」

荒療治なのは承知よ。でもごめんなさいね、ちょっと冷静になってほしいの。


蹲った姿勢で私を見上げたチェンバースさまのお顔から、いきなり血の気が引いた。

その視線が私から微妙に逸れて、私の背後に向いてるようなのは気づかないふりで、



「大精霊さまは、同胞が眠りにつくと仰いました」



聴いたままの言葉を告げる。

「何が起こっているのですか。知らなければ、対策を考えようもありません」


「対策なら、ずっと考えてるんだっ」

チェンバースさまは、爪を強く立てるように胸元を握りこんだ。

「僕のせいだ、ああ、どうすればいい…っ」


血を吐くに似た声で告げる。




「僕がしようとしていることを知れば、父上はきっとお怒りになるから、樹海に隠れて調合を続けてるんだ。けど、一向に目途が立たない」




私は眉間にしわが寄るのを自覚した。

息子どころじゃない―――――チェンバース卿本人がコトに関わってるの?

厄介だけど、今は。


目の前のひとの落ち込みが気になるわね。かなり、追い詰められてるみたい。


気の毒になって、私はつい、その場に膝をついた。

チェンバースさまの顔を覗き込む。目が合った。



さて、一言一言、真摯に告げよう。



慰めを、じゃないわ。

私はあなたの力になれる、味方になる用意ならしてるって。



「一人でダメなら二人、二人でダメなら三人、です。一緒に考えましょう」



一人で考えるから思いつめた挙句、煮詰まっちゃうのよ。

言うなり。

チェンバースさまの目から涙が滝のように流れ落ちた。だばばばばば、と音が聴こえそうな勢い。



ええぇぇ。…ちょっとこれ、どうしたら。



内心、困って固まった。幸い、チェンバースさまはすぐ、唇を真一文字に引き結び、根性で涙を引っ込めてくださったけど。

ホッとする。無意識に、拳を握りこんでしまう。

掌に、変な汗をかいてた。


「キミの周りの精霊たちが言ってる。…キミの言葉は、嘘じゃない」

目元をごしごし拭って、チェンバースさまは素直に私を見てくれた。

本当、魔導大国の方にとって、精霊の言って言うのは、絶対なのね。この場合は助かるけど。


ところで、この方が、樹海に隠れたって言うのは、いつくらいの話なのかしら。多分、この方が持ってる情報って、少し遅れてる可能性が高いわよね。

悩んだけど、私は正直に名乗った。

「私はミア・ヘルリッヒと言います。見ての通り、ベルシュゼッツ公国ガルド学院の生徒です。何かお手伝いできることはあるならいいんですが…話してくださいますか」

ほら、私の名前は、天魔として世間に通ってるでしょう? でもチェンバースさまはこれと言った反応はしなかった。


「そうだね」

単に、深々と頷く。

「こと、ここに至れば、もう秘密を秘密にし続ける意味はない」

開き直った顔で彼は言った。

そのタイミングで、横からそっと眼鏡を差し出した手があった。ジスカールさんだ。彼女を驚いたように見遣り、チェンバースさまは苦笑。



「ありがとう。それから、…さっきは、突き飛ばしてごめん」

「いいえ」

ジスカールさんはおとなしげに首を横に振った。

「何か、事情があったのでしょうから」


「今になって考えれば、…ばかばかしい事情なのだけどね」

眼鏡をかけなおし、チェンバースさまは思い切るように一度、深く息を吐きだした。





「正直に話すよ。僕の父上は精霊を見ることができない」





特に気負いもなく、さらりと言われたせいもあるけど。

正直に言うわね。私からすれば、「それが?」な言葉だったわ。


テツさまやシルヴィアさま、騎士さまだって、そのはず。だって、私たちはもとから見えないんだもの。見えないから、そもそも周辺国家においては、精霊なんて魔導大国の妄想だ、なんて言い出す輩もいる始末。


ただ、魔導大国の魔導大国たるゆえんは、精霊の存在によるのよね。

なにから言えばいいのかしら。…そうね、大陸の魔素はそれぞれの地域ごとの特性を持ってるって言っても、量としては平等に存在するわ。例外は西方のみね。あの地だけは、やたら少ない。だから、天魔の恩恵から見放された大地なんて言われる。


対して、魔導大国に漂う魔素は、大陸から生み出される魔素だけじゃないのよ。精霊が放つ魔素があるの。だからこの国の魔素は他より濃密。


精霊は呼吸するみたいに当然、魔素を吸い込みもするけど、それ以上に発散する。従って、精霊が多い場所に魔導大国という魔術に熟練した国が生まれたのは自明の理ね。

ゆえに、魔導大国グランノーツにおいて、精霊の存在が重要なのは、子供だって知ってる。



それでも、『見える・見えない』の重要性は、他国のものには理解しにくかった。だけど。



「…そんな…」

ジスカールさんの顔から血の気が引く。





「青の位階に立つ方が、精霊を見ることができないなんて」


呻きに似た呟きに、その意味に思い至った。つまり、…そういうことだ。





やっぱり、ジスカールさんに来てもらったのは正解ね。チェンバースさまの言葉だけじゃ、理解は難しかったかも。

「そう言えば、聞いたことがありますわね」

シルヴィアさまがのんびり言葉を紡ぐ。


「精霊が見えない者に、位階を継ぐ資格はない、と」


聞いてはいても、身につまされた経験がない以上、その重みは理解できない。咄嗟に現実とつなげることは難しかった。

そうまで深刻な問題なのかと私はつい口をはさんでしまう。


「ですが、魔導大国においても、精霊が見えない方は多いのではないですか?」

魔導大国で、発展したのは、魔術理論。精霊が見えなくても、問題なく使えるわ。



付け加えると、魔法と魔術は、利用する力を引き出す場所が違うから、別物よ。



魔法は、世の根源から力を引き出すの。その根源とつながるとされる己の中、人体の奥を扉として力を引き出し、いくらかの魔素で形を整え、魔法を形にするってわけ。

魔術は、すべてが外側の魔素を通じて行われるものね。


よって、魔法の方が原始的で、手間がかかるともされる。人体の奥を扉として根源の力と接触するって言葉にすれば簡単そうだけど、まずもってコツがつかめないと難しい…というか、そもそもできない。その点、魔術は分かりやすい。魔素を操るコツさえ掴めたらセンス次第でどうにかできる部分がある。もちろん、才能も必要だけどね。


ただし、魔法の場合、使用するのに力や魔素の枯渇は起きないのだけど、魔術の場合、乱発しすぎると魔素の枯渇を招くって危険があるわね。


「他国の方に理解は難しいかもしれないけど」

チェンバースさまは力なく首を横に振る。

「見えない人間が、位階に就いた前例はないんだ」


「ならばなぜ、見えなくとも現在のチェンバース卿は」

シルヴィアさまの秀麗なお顔に、一瞬、不快が走った。ある程度、理由を察しながら、尋ねる。

「青の位階に就かれてますの?」


「かの方に、精霊が見えないなんて話は、聞いたことがありません」

ジスカールさんが信じられないと言いたげに、首を横に振った。


それでも、チェンバースさまが言ったことが事実なら、―――――チェンバース卿は、隠してるんだわ。精霊を見る力が彼にないことを。




…ああ、ここが根だ。




「聞いても、いいでしょうか」


居住まいを正し、私は彼を真正面から見つめた。チェンバースさまは諦めた顔で見返してくる。どうぞ、と目が力なく笑った。

「チェンバース卿は、どうやって、精霊が見えないことを周りの目から誤魔化すことができたのですか」


「―――――眠らせたんだ」

穏やかな声。でも、顔が、泣き笑い。




「精霊を眠らせる香りって言うのがあってね。しかも、人間には影響しない」




彼の言葉に、私は思い出した。小屋の中の、数多の香炉を。


「父上は大きな儀式には参加しなかったし、うまく欺けていたみたいだよ。…まあ、勘のいい方はいただろうけど…誰も、何の声もあげなくて」

「眠らせる、香り」

大精霊さまの言葉を思い出した私の声が、自然と厳しくなる。チェンバースさまは肩を落とし、俯いた。

「そうだよ」


「だが」

背後で、テツさまが不思議そうに呟く。

「チェンバース卿と言えば、精霊医だろう」


「その仕事は」

チェンバースさまは自嘲気味に笑った。

「物心ついた時から、僕の役目です。他の兄弟も、精霊が見えないので」


「それで、手柄は父親が?」

騎士さまが、淡々と尋ねる。




「そうすれば母上にいい生活をさせてあげられるし、僕自身、…父上に認めてほしいって気持ちが、あって」




チェンバースさまは深く息を吐きだした。

「…本当に、愚かだ」


「で、ですが」

ジスカールさんが身を乗り出す。

「精霊をずっと眠らせる、なんて。そんな効果のある香なんて、実在するんですか?」

刹那。




何もかもを諦めたみたいだったチェンバースさまが、打たれたように反応した。


「違う…っ」



顔を上げ、激しく首を横に振る。





「そんなものはないし、そんなつもりもなかったんだ。でも現実は」





語尾を呑み、彼は両手で顔を覆ってしまった。


「僕は、ただの眠り薬の調合しかしてない。なのにおかしいんだ、配合通りに作ったはずなのに、効きすぎてる」




―――――なんですって。



聴いてる最中、私の脳裏に過った光景があった。さっき、小屋の中で見た、薬草の袋。

表にいくつか手書きで記載のあった説明書きに、見覚えのある地名が書かれてたけど…まさか。


顔を隠したまま、チェンバースさまは続ける。




「眠り込んで目覚めない精霊が現れて、僕は驚いた。でも父上は」


―――――狂喜した、とやりきれなさそうな息と共に、言葉を吐いた。




「あの方は香の使用をやめなかった。どうしても見えない精霊を、…逆に、憎んでいらっしゃる、から」

ジスカールさんが強く目を閉じて俯く。私の背後で、テツさまは静かに口を開いた。





「…精霊は、微細ながら、魔素を生むだろう」


「同時に、呼吸と同じように吸い込むはずですわね」





シルヴィアさまが考え深げに呟く。


お二人が、何を言いたいかは分かるわ。

あまり口にしたくはなかったけど、尋ねなければならないことがあった。


皆が黙り込んだから、私が仕方なく口を開く。






「眠り込んだ精霊が放出した魔素を…他の、香とは無縁の場所にいた精霊が吸い込むことで、伝染病みたいなものが発生している、なんて―――――あります?」


「キミは名医になれるね」

すっかり憔悴した顔を上げ、チェンバースさまは仰った。

「その見立て通りだよ」


―――――事態は深刻だ。とは言え。






解決策とは言えないけど、私には疑問があった。ふたつ、確認しておきたいことがある。

まず、一つ目。






「…チェンバースさま、先ほど小屋で拝見したのですが、買った薬草の生産地というのは、―――――ランカンロズ、では?」






「…え?」

彼は目を瞬かせる。予想しない質問だったみたい。

対して、ジスカールさんは、驚いたように口元をおさえた。


「いや、どうだったかな」

考え込むみたいに、小屋を見遣る。

「産地を気にしたことはなかった」


「では、いつも、薬草はどのように購入されていますか?」

小屋の周辺で、畑を作っている気配はないから、どこかの店から仕入れてるはず。

となれば、仕入れ先は限られてくるわよね。


「使用人が、仕入れてきてくれているよ。もちろん樹海の中までは連れて来られないし、だから小屋のものは、屋敷から持ち出したものだ。僕が自由にできる金銭は少なくてね、幸い安価で手に入る製造元があるらしくって」

安価。決まりだ。どう告げようか。私が言葉を探しあぐねてる目の前で、




「いけません、ランカンロズだけは!」




悲鳴みたいな声を上げたのは、ジスカールさんだ。私は全身を絞るみたいにして嘆息。

その通り。薬学、植物学に関わる人間なら、誰もが忌避する産地だわ。特に商売に関わる場合、ランカンロズが関わる商品に関する扱いは難しい。


チェンバースさまは、ジスカールさんの剣幕に、きょとん。ピンとこないって風。それも仕方ないわよね。

むしろ、ジスカールさんが知ってたってほうが私には意外だわ。単なる貴族のお嬢さまかと思ってたけど、意外と苦労なさってるのかも。


「あー、すみませんがね、お嬢さん方」

騎士さまが分厚い掌を上げて、のんびり言った。




「ランカンロズ? とやらがいけない理由ってのを教えてくれないですかね」




それが地名って言うのも、今知ったって口調ね。


責めてはいないわ。東方の果てにあるあの国は、一般的には知名度が低いもの。数年前までは、牧歌的な農業国だったんだけど。

なんとなく、私はジスカールさんと顔を見合わせた。首を横に振った彼女の代わりに、私は口を開く。



「薬効が一人前になるのに、十年育たなきゃならない薬草があるのはご存知ですか?」



モノによっては、もっとかかるものもあるわね。騎士さまは、私の言葉に、「うへえ」と渋い顔になった。

強面なのに、表情豊かで不思議と愛嬌のある方よね。


どう続けるべきか、言葉に悩んだけど、私はまず結論から先に言った。




「あの国では…全部とは言いませんけど、それを一年で育て上げて出荷するんです」




肥料や水、環境の管理だけで、それはかなうものじゃないわ。

かと言って、魔法や魔術を農業に使おうって人物はかつて存在しなかった。これからも現れるかどうか。いえ、神話の時代、魔素が枯渇する前、魔素に溢れ、恵まれてた神人の時代にはもしかすると存在したかもしれないけど、今となっては確かめるすべもないわね。

ただ、生育に直接干渉することはしなくとも、土地を養分たっぷりに肥えさせるっていう術は考案され、使用されてる。そんなに魔力を消費しないって言う理由からね。ただし、濫用はないわ。


理由は、それらを使った土地で次に作物を作ろうとした場合、作物は成長こそするものの、栄養価はガタ落ちになるから。土地の力が弱くなるのね。


知っていて、ランカンロズではそれが頻繁に使用されてた。



「それのどこが悪いんです?」



騎士さまは不思議そう。まあ、そうよね。一見、いい話にも思える。だけど。






「十年間、太陽にあたって、風雨にさらされ、土から養分を吸い上げて―――――ようやく生まれる薬効があります」


待っていれば、気が遠くなる歳月だ。ゆえに高価であり、稀少。モノによっては、手に入らない時期もある。






騎士さまは、自分のゴツい顎を撫でた。

「…あーぁ、なるほど。つまり、まっとうに十年育った薬草と、ズルして一年で一人前にされた薬草じゃ、成分から何から違ってくるってことか」

その通り。悪いことに、見た目はまったく同じなのよね。


薬草に、罪はないわ。要は、扱う側で、消費者自身も、気を付けておく必要があるってこと。ただし難しいところで、知っててもほしいって相手もいるから、簡単に禁止にもできないわけで。とはいえ、




「成分が―――――…違う?」




今回の件に関しては、致命的だわ。チェンバースさまが蒼白になった。唇が震える。


「だ、だったら、根本から違ってくる。僕はいったい、何を作ったんだ…?」

でもきっと、すべての素材がランカンロズ産地のものとは限られないわよね。色々まぜこぜになってるはず。


何がどう組み合わさったのかは知らないけど、…すべてが悪い方向に作用した。


「あの」

ジスカールさんが、横からそっと声をかける。

「植物学なら、わたしとヘルリッヒさんが学んでいます。何をどれだけ組み合わせたか教えて頂けたら、知恵を出せるかも」






「よせ」


テツさまが厳しい声を挟んだ。びくっとジスカールさんが震える。けど、テツさまは彼女を見てなかった。

黄金の目は、ただ真っ直ぐチェンバースさまを見てる。


「分かっているな、ギデオン・チェンバース」

圧のある呼びかけに、チェンバースさまの身が震えた。

「どんな組み合わせで配合したか、その知識は絶対に他者へ伝えてはいけない」


俯いたチェンバースさまの隣で、ジスカールさんが首を横に振りながら訴える。






「そんな…っ、知らなければ、対策の取りようはありません、アイゼンシュタット様、なぜそのような」

「いいえ、シャーリーさま。テツさまが正しくてよ」

諭すように、シルヴィアさまはジスカールさんの言葉を遮った。


「教えられては、逆に迷惑ですわね」

シルヴィアさまが、ジスカールさんを宥めるように優し気に続ける。

「お話から察するに、ギデオンさまが調合なさったのは、強制的に精霊を眠らせる作用を持つお香なのでしょう? ―――――禁忌に抵触しますわ」


「…まあ、危険ですな」

騎士さまは深刻さのかけらもない、軽い態度で頷く。

ジスカールさんは、言われて初めてその危険に気付いたみたい。言葉を失った。





禁忌。即ち、知っている、それだけで処罰の対象になるもの。





でも私は、もっと別のものが怖かった。






だって、事態がこれほど追いつめられるまでに関わった誰にも悪意がないもの。ひたすら利己的だった。それだけ。


青の位階に執着したチェンバース卿も。


利益を優先し、ランカンロズ産地で働く者も。


それを売った者も、買った者も。


果ては、精霊を眠らせる香を調合してしまったチェンバースさまに至るまで。






ただ、利己的だった。


それらが花開かせた、現在という結果の毒花に、ひとつの利己的な行為がどれだけの災厄の種をまくのかを考えて―――――…ぞっとした。


気は重いけど、もうひとつ、聞かなきゃいけないことがあるわ。私が口を開きかけた、刹那。



チェンバースさまが顔を跳ね上げた。振り向く。その動きに、騎士さまをはじめ、テツさまとシルヴィアさまが続いた。直後。






「対象を発見しました」






視線が集中した先で、落ち着き払った女性の声が響く。同時に、

「そんなの見りゃわかるよ。それよかさ」


小生意気に跳ねる少年の声が走り、悪戯でも仕掛けるように、魔力が練られた。刹那、



「発火」


―――――ヂリッ



不穏な音がするなり、熱風が背後から吹き付ける。

声がしたのとは逆方向。小屋があった場所。


「な、なにが」

愕然と声を上げ、チェンバースさまが弾かれたように立ち上がった。でも、驚愕の出鼻を挫くように、




「あ、あああああぁあぁぁっ!!」




先ほど聴こえた、女性の声が、絶叫となって樹海の空気を引き裂く。

「な、いきなり何しやがるんですか、この、怖いもの知らずの暴走小僧がぁ!」

顔を戻せば、黒髪を一つにひっつめた二十代半ばの女性が、十代半ばの少年の胸倉を両手で引っ掴み、がっくんがっくん全力で揺さぶってた。

「先手必勝でしょ、おばさん! オレは指導員から、そう学んだんだけどっ」


女性は、全体的に飾り気がないいで立ち。だけど、両手首に華奢なブレスレットが垣間見える。

それが、腕を動かすたび、しゃらしゃら涼しげな音を立てた。


「時と場合による! ここにはっ!」

揃いの黒い制服を着た少年に上から噛み付く勢いで、女性。



「チェンバース家に味方する精霊が山盛りいる上に、ベルシュゼッツ公国の五大公家の方が揃ってるの! 繊細な交渉が必要なの! これだから脳筋はぁっ!!」



怒声に、途中から涙声が混じった。苦労してそうなひとね…。

いきなり小屋が燃え上がった状況より、闖入者二人の珍妙なやり取りに呆気にとられる。


だからって許される暴挙じゃないけど。

それにしても、あの制服。



「<塔>の職員か」



テツさまの呟きに、チェンバースさまが目を瞠った。騎士さまが苦笑。

「やーっぱり、出てきましたか」

他の方々の様子からして、皆、大方は予測がついてたみたいね。


確かにこんな事件じゃ、<塔>の介入は確実。だって、<塔>は世界の均衡を守る組織だもの。一説じゃ、太古は天法の管理組織だったって話もあるし。



精霊と人間の共存が破られようとしてる今、介入しなくていつするのかしら。



できれば、彼らが来る前に解決したい問題ではあったけど。さすがに私みたいな子供じゃ完璧にやってのけるなんてできない。

「だからこそ先手必勝なんだって! こんなことしてる間にも、とっとと攻撃…っだ!」


女性は膝をついた自分の横に、容赦なく少年を引き据え、顔を地面に叩きつけた。力技で土下座させてる…。


あまりの無体に、チェンバースさまとジスカールさんは引いてる。

このお二人は育ちがよさそうだしね、当然の反応かしら。とはいえ、あえてそれを狙っての行動っぽいけど…。



「はじめまして、わたしは<塔>の職員、レティシア・ミュレーズと申します。こちらは部下のエクトル・ギルメット。できればすぐ、お忘れください」



勢いで押し切るような名乗り上げ。

「ああいえ、いきなりの放火については申し開きしようもございませんが」

謝罪、というよりもこれは、…時間稼ぎ?

でもなんのために。思う端から、シルヴィアさまが声を上げた。


「あら」

影になった岩下、轟轟と燃え上がる小屋の上、空を見上げ、彼女はわくわくと指摘。

「結界に穴が開きましたけれど、あれが狙いですの?」

結界が張られてるなんて初耳…ああ、あれかしら。私が樹海に下りるときに感じた、軽い空気抵抗みたいな、アレ。


「…ほら見なさい! 速攻でバレてるしっ」

エクトル少年の頭を押さえつけたレティシア女史の手の甲に血管の筋が浮かんだ。

「穴って…精霊の結界にっ?」

小屋の上を見上げたチェンバースさまが蒼白になる。隣にいたジスカールさんが口元をおさえ、目を瞠った。


「内側の、強烈な魔術が歪みを生んだの…? だとしても精霊の結界が、こんなに簡単に綻びるわけ」

チェンバースさまが悔し気に呟く。



「それだけ―――――弱っているんだ」



隠れてるようだった樹海の精霊たちが、よろよろ集まろうとしてるのが分かった。

見えないけど、気配でなんとなく。また閉じようとしてるんだわ。

…この結界が、樹海の惑わしの力かもしれないけど、今はチェンバースさまを守ろうとするものになってる気がするのよね。


だったら。



「手伝ってあげて」


小声で、私は私の精霊たちにお願いしてみた。



―――――お任せー。

能天気な意思を残して、皆がそっちへ向かう。え、とチェンバースさまが私を見た。

飛んでった精霊たちが何をしてるのか私には見えないけど、彼はそちらと私を交互に何度も見遣り、今度は明後日の方を向くと苦しそうに呻く。


「あれ、気のせいかな…なんだかあの精霊たち、改めて見るとセルラオ領の精霊たちに似てる気がするんだけど…」


それは初耳。私はジスカールさんを一瞥。彼女、高速で頭を上下。

あ、つまり、私の目を見ただけでジスカールさんは私をセルラオ卿につなげたわけじゃないのね。領地ごとに精霊の特色があって、私の精霊はセルラオ領の精霊たちに似ている、と。そういうこと?


「かの地の精霊は基本が厳格だから、まさかあんな能天気なわけが」

現実逃避するチェンバースさまを尻目に、私はジスカールさんに尋ねた。


「どうかしら、精霊たちは喧嘩していない?」

私だと、なんとなく、しか分からないから、しっかり見える人に聞いてみたのよ。最初の反応が反応だったから、少し心配だったのよね。

「は、はい」

ジスカールさんは緊張気味にだけど、肯定をくれた。よかった。


「それに…あ、早い、です」

ついで、びっくりしたみたいに目を瞠る。早い? 何がかしら。

小屋を燃やした炎が、もう燃やすものがなくなり、消えていく中で、<塔>の職員レティシア女史が遠慮がちに声を上げた。


「…すみません、もう少し手加減して頂けると…」

その言葉に、おやと思う。彼女、精霊が見えるのかしら。

レティシア女史の傍らで、エクトル少年がもがく。

「はーなーせよ、おばさん!」


たちまち、鼻づらを再び土に埋められた。それ、窒息するんじゃあ…。

彼らのやり取りは見えていないようで、ジスカールさんが言葉を続ける。

「ヘルリッヒさんの精霊が参加して協力体制を取ったら、だんだん樹海の精霊たちが元気に」


「…本当だ、いったいどうなって」

状況をよく見ようとチェンバースさまが目を凝らすなり。

わあっと精霊たちがびっくりしたのだか楽しいのだか分からない声を上げて、結界修復の作業を放棄し、四方に散った。


叫ぶ声が聴こえる。




―――――来るよ、来ちゃうよ!




何が、と思う間もなかった。

結界に、まだ小さな穴が残ってたんだろう。

どふっと布を突き破るみたいな音がして、黄金の鱗粉が侵入―――――湧き出た水の上で、ぐるんと一巡りし、球状になった。直後、



―――――ああ、ああ!



咆哮とも末期の喘鳴とも取れない声を放ち、黄金の鱗粉があの顔を象った。

あの顔―――――大精霊さまの。

その目が真っ直ぐチェンバースさまをひたと見据え、


―――――そこに、おったか。

冷え冷えとした声が放たれると共に、樹海の精霊たちが懇願の声を上げる。




―――――殺さないで!!




彼らの声に、得心がいった。同時に、驚く。だって。

この状況、チェンバース領の精霊たちは、つまりギデオン・チェンバースさまを大精霊さまの目から隠してたってことよね。

つまり、精霊たちは大精霊さまに盲従してるわけじゃないってことで。それに、どんな失敗を犯しても、同族からチェンバースさまを守ろうとするってことは、精霊が持つ個々の情ってものは強いんだろう。


でもさすがに、怒れる大精霊さまを目の当たりにすれば、震えあがるしかできないみたい。


私も皮膚がびりびり震えて、骨の芯まで痺れる心地に、情けないけど足が動かなかった。

大精霊さまが身を撓めた。…ような、気がした。直感が叫ぶ。このまま大精霊さまがチェンバースさまにとびかかれば、彼の命は終わる。


びりっと空気が緊張に帯電―――――その、ほんの、刹那。




「お招きに応じて頂き、恐縮です!」




やけっぱちの声を上げたのは、―――――レティシア女史。<塔>の職員。彼女はいつの間にか立ち上がり、チェンバースさまの隣に進み出てた。

エクトル少年は、背後で尻もちをついてへたり込んでる。大精霊さまの迫力に、腰が抜けてるみたい。

彼女の言葉に、騎士さまが大きな声を上げた。

「お招きって…あんたらが大精霊を案内してきたのかよ!」

次いで、呵々大笑。

「さすがだなぁ」


つまりは、大精霊さまを結界に招き入れることが、彼女たちの本当の狙いってことね。

さすがって言うか…これ、自分自身もかなりの危険にさらしてない?


一瞬、レティシア女史の眦が、情けなく下がった。

「上司の強制で、釣り餌代わりにされたんです」


「それで、樹海の中に転移させられたんですの? なかなか、思い切ったマネをされますこと」

なぜか感心半分、シルヴィアさまがのんびり仰る。

けど、それ、この樹海に惑わしの効果があるって承知の上でされたの? 大胆な酷さね。


表向きこんな会話を交わしてるけど、意識は大精霊さまから逸らせない。

でも、会話が許される程度には、大精霊さまから切羽詰まった衝動が抜けてるってことで。




「どうかお怒りをお鎮め下さい。我らが<塔>の権威を持って、お約束いたします。今後二度と、このような事態を起こしはしないと!」




女史が言うなり。

「…お許しを…!」

鋭く小声で囁くなり、レティシア女史はチェンバースさまの頭を両脇からわし掴んだ。

誰も予測しない暴挙。


「今回の事件を起こした貴方の知識は、<塔>の上層部において、禁忌指定の秘匿事項と認定されました。よって」

言葉の途中、彼女が両手にはめたブレスレットに、奇妙な魔力がまとわりついたのが、感じ取れた。






「その知識、天法の石板へ転写致します」







次くらいで魔導大国の話がひと段落するといいなぁと…。

誤字報告助かります。

読んでくださった方ありがとうございました~。

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