2つの出会い
こんにちは、そしてお久しぶりです。
風祭トキヤです。
今回も続きでなくて、申し訳ございません。
今回の作品は異世界転生でもなく、バトルでもなくごく普通の青春を描いた作品です。
まだ序盤ですが、楽しんでくれたら幸いです。
読み方はざひょうではなく、しるしです。
俺が小説を書き始めたのはいつ頃だろうか。
春の訪れが感じられる桜の木を見ながら、中学の卒業式が行われていた。
笑っている人もいれば、泣いている人もいる。
かといって、俺らは卒業はあと2年後なので今日いなくなるのは一個上の先輩。
同級生達も涙をボロボロと流している人は数人ではなかった。
けど、俺は流さなかった。
最後まで先輩達の巣立ちを黙って、ただ1人で見ていた。
「高瀬、まだ居たのね」
俺の苗字を呼ぶ馴染みある声、俺よりも少し身長が高く、大人びた凛々しい顔つきで俺を呼ぶ。
「伊阪先輩。卒業おめでとうございます」
俺が親しみある唯一の先輩、伊阪先輩は俺を見て、涙は流さず、ニコッと笑ってくれた。
◇◇
俺が高砂中学に入学当初の一学期の間は友達がいなかった。
クラス行事も適当に流していたし、部活にも所属していなく、唯一の趣味である読書に読みふけっているとあっという間に一学期が終わっていることになる。
中学の同級生も何人かいるが、小学生のときもぼっちだったため、そいつらとはあまり仲良くなかった。
放課後は家に帰って、勉強したり寝たり本読んだりいつもダラダラと生活している。
もちろん小学校の6年間ずっとこれでしたね。はい。
親からは友達作らないの?とか言われるけど今更作ったところであんま馴染めそうにないからといつも断っている。
今日は夏休みに入って、約2週間が経った8月9日。
読む本がなくなったため、本屋に来ていた。
店員さんは俺が入ったと同時にいらっしゃいませーー!と大きな声で言ってくる。
やる気がないよりよっぽど気分がいい。
いつもは角川メディアワークス文庫で何か面白いものをあさっているが、ついにラノベに手を出してみようかなと思ったが、やはりハードルが高すぎてやめた。
いつも読んでるのは俺とは縁がなさそうな恋愛小説やミステリーなど。
意外と俺は恋愛小説が好きで、読んでるだけで一徹は余裕で出来る。
すると、店のオススメ!という欄に恋愛小説のイチ押し!を見つけた。
題名は『記憶の君にさよなら』。
作者は今有名の天才中学生作家の小町摩利先生だった。
テレビの特集で何度か名前を見たことがあるが、直接先生の本を取るのは初めてで、この本を買うことに決め、レジによる前に親に頼まれた雑誌を取り、レジへ持っていく。
ありがとうございましたーー!とまた潔く声を張り上げてくれる。
なんだか今日はいい日になりそうだと思った。
買って、帰って、読みふけっていたら一日が終わっていた。
夕飯も親がいないので食ってない。
別に腹も減ってないし、作る気もなかったので、夕飯を、食べなかった。
それにしても今まで小説を読んでる時はスマホを少しいじったり、音楽かけながら読んでいたのだが、今日は違った。
何もせず、何もかけずに読みふけっていて、一日が終わった。
まさに、天才作家の小説だった。
天下一品だった。
今まで読んできた中で一番かもしれない。
俺がいつも恋愛小説を読み終わったあとの感情は恋をしてみるのもいいなとか羨ましいとかそういうもので、でも自分では手の届きそうにないことだったが、この小説は何かが違っていた。
主人公やヒロインの振る舞いはどこか寂しそうで、でも純粋に恋愛して、タイムリープとか挫折とかなく、出会った瞬間から好きとかじゃなくて、出会った時はまだ何も知らない二人だけど、同じ部活や同じ時間を過ごしていく内に恋に落ちる。
今までにない感情をこの本から貰い、改めて、恋愛小説が好きなんだなと思った。
数日後、俺は図書館に来て勉強を始めた。
今日で課題を終わらせるために必死こいて、ワークやプリントにシャーペンを滑らせている。
図書館といっても、学校の図書室で一定期間の間は図書室を解放している。
人は全然いないので、ちょっとした穴場だ。
うちの中学の先生は緩く、夏休み期間は私服OK、携帯持ち込みOKだった。
俺は誰からのメールも来ない、携帯をぼーっと見て、集中を切らしている。
しかし、途端に俺の前の席がずらされる音が鳴った。
ちらっと前を見ると、俺より年上で、真夏とは言えない今日の日にちょうど良いカーディガンを羽織り、凛々しい顔つきで俺をちらっと見て、席に座った。
俺はすぐに目をそらし、ペンを持った。
目の前の席の人は問題集とパソコンを取り出し、パソコンで何かを打ち始めた。
そのまま問題集には一ミリも触れないまま、閉館時間となった。
俺も最後まで勉強していたので、ワークやプリントやらをバックの中に放り込み、席を立つ。
どうやら、図書室にはもう俺と目の前の先輩(?)しかおらず、先輩は黙々とキーボードを打つ操作をやめず、沈黙した空間を早く出たかったため、早足で出口へ向かった。
すると、あの本屋のように出口付近に図書委員のオススメ!というコーナーに見つけた。
『記憶の君にさよなら』だ。
今日追加されたらしく、まだ誰にも借りられてなかった。
手に取ると図書室特有のカバーが手に触れる。
まだ、読んで一日も経っていないというのに、また読めそうな勢いだ。
俺は一読んだ本は大体もう読まず、新しい本へ行ってしまう。
同じ本を何回も読むということが好きではないのだと思う。
俺は元あった見出しに本を置き、図書室を出ようとした。
しかし、ある声によって進むのを停止した。
「待って」
その声はまだ大人にしては高い声で、でも大人びた声にしようと必死に出しているみたいな感じだった。
振り返ると何時間か前に見たカーディガンを羽織り、使い慣れてそうな学校指定のバックを肩にかけて俺を見ている。
「なんすか」
「あんた、本好きなの?」
「まあそうっすけど...そんな事聞く前に名前くらい名乗ったらどうすか」
彼女ははぁと溜息をつき、面倒くさそうに自己紹介を始める。
「伊阪棗よ。二年。よろしく」
「よろしくお願いします。俺は...」
「あぁあんたの名前は興味ないから別に言わなくていいよ」
なんだこの人いちいちイライラするな。
伊阪先輩はバックから何かを取り出し、俺の目の前に出した。
「これさ、知ってる?」
「『記憶の君にさよなら』...っすよね?先輩も読んでたんすか?」
「まぁね。私も昨日読みふけってたとこ」
「なんで俺が昨日読んだってこと知ってんすか」
「えー、なんかそんな顔してたからかな?」
「よくわかんねっす」
「まあまあ、それで面白かった?」
「なんで先輩が俺にそんなことを聞くのかよくわかんねっすけど、面白かったすよ」
「私もそんな感じかな〜」
伊阪先輩との話は意外と続き、下駄箱まで本の話で少し盛り上がってしまった。
なぜ、いきなり話しかけてきたのかは多分あれを見ていたからだろう。
年上の人と話したことあるのは家族とかしかなく、最初は緊張していたが、伊阪先輩は意外と優しく、先輩ながら馴染むことができた。
女子のコミュ力すげぇ。
「じゃあ、私こっちだから」
「分かりました。今日はありがとうございます」
「こちらこそ。楽しかったわよ」
彼女は長い髪をさらと振り、俺と反対方向の道を一人歩く。
記憶の君にさよならという言葉は歌詞の一フレーズだと先輩に教えてもらった。
この本を読んでいるとたくさんの何かが起きそうな感じがした。
後、何か起こるか知らないが、初めてのことが起こるというのは確信していた。
そして、この本と先輩との出会いは偶然ではないような気がした。
3月1日に受験が終わります。
それまでは投稿ができません。
活動報告にも書いてありますが、受験終わったら報告します。
ちなみに私立は受かりました。
都立にむけて頑張ろうと思います。






