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79話 桜子ですけど、私の目の前に……


 1940年6月20日 フランス パリ



【連合国とドイツが休戦条約交渉締結までの間、暫定的な停戦で合意! このまま戦争終結の流れか?】



 イギリスも体勢を立て直す時間が欲しかったのか、史実ではなかったはずの停戦が発生してしまいました。

 史実では停戦なんかなかったよね?


 まあこれも、おそらくは私とドゥーチェがええかっこしいで暗躍したせいなんでしょうね。

 どうせ戦争は継続するだろうと私は睨んでいたのですけど、言うだけならタダなんだからと気軽に和平を提案してみたら、まんまとイギリスとドイツに乗っかられてしまったみたいでした。


 でも、イギリスの首相がチャーチルじゃなくて、ハリファックス卿という時点で、和平の可能性があったのでしたね……

 そうだよね。誰も好き好んで戦争を継続したいだなんて、普通の人は思わないものなんだよね。


 そう考えると、チャーチルってあまり後先考えずに戦争を継続したような気がしないでもない。

 さすがは、戦争屋と揶揄されるだけの御仁でしたか。


 オマケに、ナチス憎しでソ連とも手を組んだけど、結果的にソ連を強大化させてしまったのだから、一体全体チャーチルは何がやりたかったのでしょうかね?

 少し疑問に思います。


 黒い悪魔を倒したと思ったら、手を組んでいた赤い悪魔が大悪魔に成長していただなんて笑えない冗談だよ。






 1940年6月22日 フランス パリ



【ドイツは休戦条約交渉の開催場所にコンピエーニュを指定!】



 コンピエーニュの森での休戦条約の調印を指定したのは、先の大戦で屈辱を味わったドイツの意趣返しなんでしょうね。

 でもまあ、そのドイツの気持ちも分からなくはありません。


 第一次世界大戦の敗北から、二十年もの長きにわたって鬱憤を溜め込んで拗らせ、ルサンチマンを爆発させてしまったのが、ドイツという国なのですから。

 ベルサイユ条約の結果を、二十年の休戦期間にすぎないと看破したフランスの元帥は、まさに慧眼でしたね。


 フォッシュ元帥が長生きをしていたならば、また歴史は変わっていたのかも知れませんね。

 でもまあ、もう既に詮無きことでしたか。



「藤宮様、そろそろ出発のお時間ですよ」


「はーい」



 さて、気は重いですけど、もう一度、道化を演じましょうかね?






 1940年6月22日 フランス コンピエーニュ



「ヒトラー総統、お久しぶりです」



 私の目の前に、アドルフ・ヒトラーがいます。

 どうしてこうなった? 解せん……


 まあ、言い出しっぺの法則で、休戦条約交渉の立会人みたいなことをやらされる破目になったからなのですがね。



『プリンセス藤宮、ニュルンベルクでお会いした以来でしたか?』


「はい! ヒトラー総統はお元気でしたか?」



 ヒトラーって小男のイメージがあったのですけど、実際に見るとそうでもなかったのでした。

 ムッソリーニのほうが小さいですしね! まあ、横幅はムッソリーニの勝ちだけどさ。


 実際のヒトラーの身長は、175cmぐらいはありそうな感じがします。

 小男のイメージは、ヒトラーの周囲に居た人たちが大きすぎたのでしょうね。


 ……ゲッベルスを除いてだけど。



『フランスに勝てたから気苦労の一つは減ったよ。プリンセス藤宮は大きくなりましたな』


「成長期ですから!」


『それはなによりです。それはそうと、風の噂によりますとなにやらブリテン島には、日本の義勇兵がいるとか小耳にはさみましたが?』



 うげっ! やっぱ義勇兵の問題は突っ込んできますよねー。

 でも、大丈夫。こんなこともあろうかと、ちゃんと模範解答は用意しておいたのですよ。



「民主主義を守るフリーダムファイターとか言って、自発的にブリテン島に渡ったみたいですよ?」


『フリーダムファイター?』


「フランスは自分からドイツに対して宣戦布告したから別ですけど、オランダの場合は二度も中立を宣言していましたよね?」


『ああ、オランダか…… 言い訳に聞こえるかも知れないけど、オランダのことは私も本意ではなかったのだよ』



 おろ? その言い方ですと、オランダに攻め込むのは、最後まで迷ったということなのでしょうか?

 まあ、善人ぶったポーズのような気もしますけど。



「まあ、戦争だから不本意な選択を強いられる場面があるのも一応は理解できます」


『ご理解いただいたようで、なによりです』


「ベルギーの場合は道路だから、私も仕方ないとは思いますけど」


『プリンセス藤宮、表立って道路と言ったらベルギーに失礼ですよ』


「あ、すみませんでした。気を付けます」



 ヒトラーに窘められてしまうとは! これでは、どっちが悪役なのか分からなくなってしまいますよ。


 これって激レアってヤツでしょうかね?

 もしかして、ヒトラーって意外と紳士だったのかな?


 まあそれも、フランスに勝った余裕の表れなんでしょうね。



「それで、フリーダムファイターは、オランダの自由を守るためだったんですよ!」


『ふーむ…… まあ、そういうことにしておきましょうか』


「それよりも、ヒトラーさんに貰った絵は、ちゃんと私の家のリビングで飾っているんですよ!」


『おおっ! それは嬉しいね。画家冥利に尽きるというヤツだ』



 家のリビングにヒトラーの絵を飾ってあるのは本当のことであります。



「また、ヒトラーさんの絵をおねだりしてもよろしいでしょうか?」


『いいとも! ドイツには私の絵の良さを理解してくれる人が少なくてね、プリンセス藤宮が欲しいというのなら喜んで差し上げよう』


「ありがとうございます! ヒトラーさんが描く絵は感性が先進的すぎて、きっと古典派の重鎮たちには良さが理解できないのですよ」



 ヒトラーの描く絵は、現代アート的な表現の仕方とでもいうのでしょうかね?

 でも、現代アートは脳味噌が破裂しそうな感じがするから意味が違うのか……


 いや? ある意味において、ヒトラーも逝っちゃってるのだから、現代アートのカテゴリーに入れてもいいのかも知れない。

 ともかく、ヒトラーの絵は、建築のデザイン画としての評価では、未来での評価はけして悪くなかったような気がしましたね。



『プリンセス藤宮は子供だからこそ、私の絵が理解できたと?』


「未来では間違いなく評価されるタッチセンスだと、私は思います」


『つまり、私は未来的な感性を持っているから、美術界の古典派連中には理解されなかったのか! 目から鱗が落ちる気分とは、まさにこのことだ……』



 そんなにもヒトラーが感動するようなことを言ったかな?

 もしかしたら、他人からの肯定的な評価に余程飢えていたのかも知れませんね。


 そうであるならば、リップサービスの一つでもしておきましょうかね?



「ほら、芸術家って死んでから評価されるとかって良くあるじゃないですか?」


『なるほど、なるほど。私の死後に評価されるのもそれはそれで悪くはないな』


「死後に評価されるためにも、これからも絵を描き続けてください」



 それで、この時代でヒトラーの絵を評価できる貴重な存在の私に描いた絵を貢いで下さい!

 その代わり、ヒトラー美術館でもそのうち建ててあげますから。



『しかし、最近は忙しくてね。残念ながらも絵を描いてる暇がないのだよ』


「平和になれば、また好きな絵を描く時間も生まれるのでは?」


『平和、平和か…… そうであったな。プリンセス藤宮の言うとおりだ』


「平和になれば、心にもゆとりが生まれます。それは絵を描くにあたって必要な要素ではないでしょうか?」


『まったくもって、そのとおりだと思うよ』



 それが分かっているのならば、さっさと戦争を終わらせて描いた絵を私に貢ぎたまえ。

 そういえばこの場は、戦争を終わらせるための和平交渉でしたね。


 ということは、第二次世界大戦が本当に短期間で終わってしまうのでしょうか?

 だけど、これでは独仏戦争とか西欧戦争とかの名称に変わってしまうではありませんか!


 しかしです……






 ……Operation Barbarossa!


 き、聴こえる。ソヴィエトマーチと軍靴の足音が確かに聴こえる……

 私の脳内では、ガンガンとけたたましくレッドアラートが鳴り響いているのです。


 だから、このまますんなりと平和にはなりそうにない予感がしますね。


読者のみなさんも台風には気を付けてください!

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― 新着の感想 ―
[良い点] ヒトラーと絵画談義って場面がいいですね! あの時代は前衛芸術とかで美術界の価値観が二転三転して挫折した画家が多かっただけに、時代を表す名場面だと思いますよ (ヒトラー本人も引退したら画家と…
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