4話 桜子ですけど、宮様はつらいよ
【帝国は臣民の貢献に期待している!
十円以上購入された方には、門外不出、御禁制である藤宮様の特製カラー写真をもれなく進呈!
更に十円購入毎に一枚づつ、違ったポーズの愛くるしい藤宮様の御姿が入手できます!
君は全てを揃えることができるか? 目指せ! 百枚コンプリート!
この機会に是非、個人国債の購入をご検討下さい!
秋の個人国債購入強化月間絶賛開催中!】
御禁制の品を景品にして市井に流出させたらあきまへんがな。
御禁制の意味とはいったい……
どうしてこうなった?
まあ、国内の澱んだ空気を払拭するには、国民に開かれた皇室、国民が親しみを持てる皇室の方が良いって、私がポロっと言ってしまったのが運の尽きってヤツなんだけどさ。
それじゃあ、ついでとばかりに、個人国債のイメージガールならぬイメージ幼女をさせられたというわけでして。そのついでに、誰が言ったのか知らないけど購入特典を付ければ、もっと国債が売れるんじゃね?
そんな不埒な事を考えた輩がいまして、ポスターのイメージ幼女も私なので、購入特典のフォトカードの中身も私がモデルをする破目になりまして……
もうこうなったら、やけくそです。マスコットでもピエロでもこなしてみせましょう!
昔から元々皇族は日本国民を纏める為の、人身御供みたいなモノだしね。
それにしても、私のフォトカードを百枚集めるのに国債を合計で千円も買う必要があるとか、握手券商法顔負けのあくどさな気がしないでもない。
この時代の1円の価値はというと、21世紀では約5~6千円ぐらいに相当するはずだから、千円だと5~6百万円ということか。
個人で5百万とか、裕福な家庭しか買わないでしょ。
でも、個人国債が一口十円から、つまり5~6万円から購入できるというのは、多少は良心的なのかな?
それに国債は償還期限を過ぎたら手元に戻って来るしね!
この個人国債は日本国内限定。日本国民限定というのが肝です。手元不如意になって転売しようにも外国人には売れないのが味噌ですよね。
これで、円環の理の完成じゃー!
5万円で桜子ちゃんのプリチーなフォトカードがオマケで貰えるなら、安い買い物だと思える臣民が大勢いることに期待しましょう!
臣民というより、愚民な気がしないでもないですけれども。
え?
インフレで目減りする? そんなの知らんがな。
いま現在、帝国を取り巻く世界情勢は悪化の一途を辿っているのです。国家の非常事態一歩手前、寸前なのですから。もう既に棺桶に片足どころか腰まで入ってるぐらい危険な水準だと思います。
つまり、臣民の銭は国の銭。国家とは居直り強盗にも化ける可能性を秘めているのです!
国家の暴力装置たる軍からして、
『予算を寄越さなければ国は守れん! もっと予算を寄越せ!』
こんな感じで、居直り強盗の常習犯ですしね。
軍国主義真っ盛りですから、軍人の鼻息が荒くなるのも仕方がないのかも知れませんが。
まあ、軍人と軍属には良い時代なんでしょうけど。
軍需産業というのは、再生産が限りなく効き難い産業なのですから、もっと民需に、基礎工業力にリソースを振り分けた方が有効的な気がしますね。
それなのに軍人と軍属ときたら、やれ、『戦艦が欲しい』だの、『戦車が欲しい』だの、『兵を増やせ』だのと、国力を無視した要求ばかりしているみたいなのです。
それも、中年や初老のいい歳した大人であるはずの高級軍人が、これらをクソ真面目に、いかにも正論ぶって言っているのですから、開いた口が塞がりません。
これではまるで、子供が玩具を欲しがって駄々を捏ねているのと、何ら変わりないではありませんか。
もっとも、これらの要求は、私が直接見聞きしたわけではありませんが、又聞きで耳に入ってくるのですよ。
まあ、彼等、軍人軍属の言い分も、多少なりとも理解はできるのですよ。
世界中を見渡せば、食うか食われるか帝国主義全盛期の時代ですしね。
日本以外のアジアで列強の植民地にされずに、ちゃんとした独立を保っているのは、イギリスの植民地であるビルマとフランスの植民地であるインドシナの間に挟まれた、タイ王国しか残っていないのですから。
そのタイ王国ですら、イギリスとフランスの緩衝地帯という名目で、辛うじて独立を許されているだけの気がしますし、この時代の日本人が欧米列強の圧力に恐怖を感じて、軍事偏重になるのもやむを得ない気もします。
少年時代や青年時代に日露戦争を体験している世代は、特にそんな感じがしますね。
その世代が今現在、発言力のある中年や初老の世代なのですから、声高に軍備増強を唱えるのも致し方なしなのかも知れません。
いや?
もしかして、欧米列強の恐ろしさを肌で感じているのは、元老クラスの世代なのかな?
だとすれば、今現在、中心となって日本を動かしている世代は、日清戦争、日露戦争と第一次世界大戦。その全てで戦勝国となった、大日本帝国という幻想に酔っている人間が多い世代なのかも知れませんね。
視野狭窄で近視眼的で夜郎自大な人間が多いのが、この時代の特徴ですしね。まあ、未来でも夜郎自大以外は大して変わらなかったりするのが、日本人らしいと言えばらしいのですが。
なんか、非常に不味い気がしてきたのですが……
そして、帝国主義の最後のフロンティアである中国大陸への策源地といいますか、橋頭保、後背地として近隣にある島国が、大日本帝国。
いやー、本当に、地政学的に泣けてくる場所に、日本という国はある気がしますよね……
そりゃ、アメリカが日本という国を邪魔な国だと思うわけだよ。
この時代で過ごすうちに、なんだか私まで、白人は全て敵みたいな感覚に囚われてしまいそうになるわ。
だからこそ、アメリカが日本に手を出したら、噛みつかれて痛い目に遭うぞ。そう思わせれる最低限の軍備は必要だと理解しています。私もなにも、軍備を疎かにして良いとは思ってません。
しかし、まず最初は国力の増進。その増えた国力でもって、軍備を整えた方が良さげだと思うのです。
軍という組織が、限度を超えて肥大化するのは考えものですよね?
それにつけてもなんといいますか、
記憶が蘇ってから数ヶ月が経ちますけど、なんかもう既に色々と疲れました……
未来人の私にとっては、この時代は生き難い時代だよ。トホホ……