38話 平和への使者
【ハンガリーがスロバキア南部とカルパチア・ルテニアの割譲を要求!】
え? ズデーテン問題は、それに付随した諸問題の解決が、まだ終わってなかったということでしたか。そういえば、スロバキア領内にはマジャール人もそこそこ住んでいたのでしたね。
hoiのチェコ併合イベントでも、スロバキアにドイツの傀儡政権を立てるか、ドイツとハンガリーが同盟して、ハンガリーにスロバキアを食べさせるかどうかの、IFの選択肢がありましたっけ。
それで、史実でのドイツの選択は、傀儡政権を樹立したのでしたね。
【ポーランドがチェシンの割譲を要求!】
チェコ側のチェシンは、猫の額程度の土地でしたっけ? それにしても、チェコスロバキアは近隣の各国から、ここぞとばかりにフルボッコ状態にいじめられて、可哀想に思えてきましたよ……
まあ、隙を見せたら喰われる、弱肉強食な帝国主義の時代ですから、仕方ないのかも知れません。
【チェンバレン英首相が再度訪独! ヒトラー総統と会談!】
チェンバレンも短期間に、イギリスとドイツを行ったり来たりでお忙しいですね。
【英独首脳の会談は物別れに終わる!】
無駄骨に終わりましたか。ご苦労さまでした。
【チェコスロバキアは総動員を布告! 開戦待ったなしか?】
むむっ!? ズデーテンで開戦とな? 史実とは違う歩みを進んでいる感じですね。
【ドイツはズデーテンラントの即時割譲を要求! 事実上の最後通牒か?】
ドイツは、いけいけどんどんですなぁ。おおっ、怖っ!
【フランスもチェコ支援で部分動員を開始!】
部分動員? チェコだけの限定戦争に収めるつもりなのかな?
まあ、先の大戦からいって、限定戦争で収めるのは、おそらく無理の気がしますね。
【フランス世論は戦争に反対の模様!】
ふむ? フランス人が冷静だと? これは、意外な感じがしますね。
【ドイツは9月28日午後2時までと、期限を切って最後通牒を通告!】
戦争キターーーーーーっ!!
【英仏は介入するとドイツに警告を発する!】
戦争キタキターーーーーーっ!!
【ドイツは受けて立つ見込み! 第二次欧州大戦勃発か!?】
戦争キタキタキターーーーーーっ!!
【ソ連はフランスがチェコを軍事支援すれば、ソ連も支援すると発表!】
戦争キタキタキタキターーーーーーっ!!
【イタリアのムッソリーニ首相がズデーテン問題の仲介に乗り出す!】
あれ? 戦争ドコー?
【ドイツのヒトラー総統は開戦の延期を表明!】
あれ? 戦争ドコ?
【周辺各国も歓迎の意向を示す】
あれ? 戦争……
【独のミュンヘンで英独仏伊四ヶ国の首脳が会談!】
あー、ここで、ようやくドゥーチェの出番だったのかぁ。
といことは、もしかしてこれは、史実通りなのかな?
【ミュンヘン協定締結!】
はい。めでたしめでたし。
でも、ドゥーチェにとっては、晴れの舞台があって良かったね!
【チェコスロバキア政府は協定を受諾!】
はいはい。めでたしめでたし。チェコスロバキアは泣いてもいいんやで。
【英独は海軍協定を締結!】
さすがは、ブリカス。自分の事しか考えていませんね。でもそれは、イギリスの国益を考えた観点から見れば、恐らく正しいのだと思います。確か、二国標準主義でしたっけ?
でも、この場合の二ヶ国って、ドイツと何処の国が基準になるのでしょうかね? フランス? それともソ連? アメリカや日本ではなさそうだよなぁ。
【英独相互不戦の象徴として英独共同声明を発表!】
はいはい、わろすわろす。歴史を知っている私からすれば、英独海軍協定は、とんだ茶番にしか見えないのですけど、当事者の一人であるチェンバレンさんからしてみれば、必死だったんだろうなぁ。
でも、ドイツに騙されるのですけどね! ご愁傷様でした……
一応は、駐日英国大使にでも、『ドイツは海軍協定を破る可能性が極めて高い』とかなんとか、そう忠告しておいた方が無難そうですね。
日本はイギリス寄りの姿勢だよ! そういうアリバイ作りにもなりますしね。
【チェンバレン英首相が、『我々の平和は保たれた』と宣言!】
チェンバレンさんは、紙切れ一枚を振りかざして、得意満面の笑顔ですね……
結局は、史実通りということでしたか。
【ポーランドは協定に応じる構え。チェシンは住民投票でポーランドに編入か?】
へー、ポーランドに割譲じゃなくて、住民投票を行うのか。
【ハンガリーは協定に応じず! 軍を動員してチェコ政府に対して恫喝の構え!】
あらら、ハンガリーは強気の構えですね。チェコの国力が弱体化したから、強引に押しても行けると踏んだのでしょうか?
【ドイツ軍がズデーテン地方に進駐!】
まあ、ズデーテンドイツ人にとっては、これで良かったのかな?
【協定に反対した英海軍大臣が辞任!】
うん? ミュンヘン協定と英独海軍協定、どっちの協定に反対して辞任したんだ? この新聞は主語が抜け落ちているではありませんか!
まあ、海軍大臣なんだから、英独海軍協定に反対だったのかな? 海軍卿なんだから陸の事案は二の次、そう考えるのが無難そうではありますが。それか、両方の協定共に反対だったのかも知れませんけれども。
【パリ・ソワールが平和を齎した英仏の閣僚に別荘を贈るキャンペーンを展開】
は? なんですか、このお気楽な出来事は? まあ、それだけ、フランス人の大多数が戦争は懲り懲りだと思っている証拠とも言えるのでしょうけど。
第一次世界大戦で、フランス人の人口ピラミッドは、極端に歪になってしまいましたからね。つまり、成人男性が大勢戦死して減ってしまったので、婚姻数も減って、生まれてくる赤ちゃんも減るという、悪循環に陥ってしまったのです。
もっとも、第二次世界大戦後のロシアよりは、まだマシな気がしますがね! あの、左側だけ10年ぐらい続いた丙午のピラミッドを見た時は、いくらなんでも死に過ぎだろうと思いましたよ……
戦争なんてするものではない。そう教えてくれたグラフでした!
でも、一つだけ分かったことがある。これで、無茶をしても英仏は介入しないと、ヒトラーが誤った判断をした結果、ナチスドイツの暴走は止まらなくなったということだ。まあ、いまでも既に大概だとは思いますが。
戦争への道は善意で舗装されているということか……
「藤宮様、ため息をついてどうなされましたか?」
「いやね? 結局のところ、戦争は避けられないみたいだなぁって」
「そうなんですか? ミュンヘン協定で平和になったのでは?」
「開戦が半年か一年先延ばしになっただけだよ」
「でも、ため息をつくと幸せが逃げてしまいますよ?」
まあ、新聞を読んで、ため息をつく小学生は、日本でも私ぐらいのものでしょうね。
はぁ~、これから、どうなることやら……