19話 戦艦は格好良く美しいはずなのに……
18話は修正を効かせるのが難しそうなので、お蔵入りになりました…
ジョージ6世戴冠記念観艦式も無事に終わり、イギリスでの公式行事も一通り済ませましたので、多少は肩の荷が下りた感じがしますね。まあ、私は大したことはしてませんけど。
観艦式の航行は、各国の招待艦の中で三番目の行進となりました。アメリカの戦艦ニューヨークが先頭で、続いてフランスの戦艦ダンケルク。その次が、我ら大日本帝国海軍が誇る比叡でした!
比叡の後ろに、アルゼンチンの戦艦モレノ、ソビエト連邦の戦艦マラート、ドイツの装甲艦アドミラル・グラーフ・シュペーと続きました。
実用性はともかく、ダンケルクの四連装砲塔は格好良いと思います! シュペーの三連装砲塔もなかなか味がありますよね。
それになんといっても、真打ちは、フッド! 世界で一番美しい戦艦。この名に恥じない威厳と美しさが備わっていると思います。
まあ、大和が完成すれば、大和の方が美しい気がしますがね。
ネルソン級は、まあそのなんだ、あれはあれで良いんじゃないかな? 三連装自体は格好良いですしね。キング・ジョージ5世級は、まだ建造が始まったばかりでしょうか?
それで、史実で参加した足柄の時は、もう少し後ろでの行進でしたので、なんとなくランクアップした気がしますよね? 具体的には、オランダの軽巡洋艦ジャワの後ろで、スウェーデンの海防戦艦の前での行進だったのです。
招待艦全体でいえば、史実では八番目の行進です。
なんで、行進の順番に拘っているのかといいますと、イギリスとの友好関係や各国の力関係が如実に表れるのが、この行進の順番なのであります。ようするに、国際政治の力学が観艦式にも働いてるということなのです。
つまり、米 仏 日 亜 ソ 独 希 蘭 典…etc… これが、イギリスから見た、友好関係や各国の実力を加味した、イギリスにおける各国の序列というヤツなのでしょうね。
昨年から進められていた、日英の関係改善の為に交渉を地道に続けて、その成果が表れ実を結んだのが、この序列だと考えても良いのでしょう。これは、比叡で参加した甲斐があったというものですよね!
もっとも、戦艦は見栄えが良いから、前方に並べたという理由も多少はあるのかも知れませんが。
そういえば、招待国の中に、イタリアが含まれていませんでしたね? 現在、絶賛内戦中のスペインですら、招待されて参加しているのにね。
アレかな? エチオピアを巡って、イギリスとの関係が冷え込んでいたのが影響したのかも知れませんね。
でも、招待されずに恥をかかされたドゥーチェは、いい面の皮ですよね。
大英帝国の面目躍如といったところでしょうか? 当て擦りがお上手だと思います。
しかし、スペインは、どっちの陣営が参加したのでしょう? 一応は、まだ正当な政府であるはずの、共和派から参加したのかな?
共和派は苦戦中なのに、参加してる余裕なんかあるのでしょうかね?
それにしても、ソビエト連邦所属のガングート級戦艦、マラートさん……
はっきり言って、ボロっちいですし、ダサいです。姿形が変ともいいます。三連装砲塔、それ自体は良いのですけどね。
世界中の戦艦の中で、ガングート級が一番好きだ! そんな人いるんですかね?
まあ、ロシア人の中で奇特な人の中には、いるのかも知れませんが。
艦橋も扶桑や山城も顔負けの違法建築物と化している気がしますね。それも前後に二つもあります。
まだ、アルゼンチンのリバダビア級戦艦、モレノの方がマシに見えますよ。
比叡とほぼ同年代に竣工しているはずなのに、どうしてこうも差が付いたんだ?
まさしく、どうしてこうなった?
これが、ぴったりと当て嵌まるのが、マラートなのですよ。ええ、本当にね。
比叡は近代化の改装すらしてないのにね? むしろ、練習艦として舷側装甲などを撤去して劣化改装を施されているのに、比叡の方が艦齢が若く見えますね。
これはけして、私が日本人で日本贔屓だから言ってるのではありませんよ? 私の目はそこまで曇ってませんので。多分ですけど。
ガングート級はドレッドノートよりは新しいはずなのに、なんでドレッドノートよりも古臭い設計なんでしょうかね? 舷側に張り出した副砲なんて、完全に19世紀の遺物でしょうに……
ロシアの戦艦の設計思想が保守的だったのかな? それか、ドイツやイタリアの設計を流用しているとの話もありますので、その影響なのでしょうかね?
船体後方に舷側部の切り欠けた一段下がった場所って、意味あるのでしょうか?
射角を取るために必要ではあったのでしょうけど、実用性については疑問ですね……
あと、見栄えが悪いのは、主砲の配置も関係している気がしますね。ガングート級の12インチ三連装砲、それ自体は良いのですがね。
でも、砲 橋 煙 砲 煙 砲 橋 砲 この配置は、いかがなものかと?
どうしても、艦の前方に背負い式で二基。後部に一基か二基がスタンダードですし、それの方が見栄えも良く見える気がするのですよ。
もっとも、マラートの12インチ砲は些か時代遅れではありますけど、それ自体は悪くはないと思いますよ? 巡洋艦以下には無双出来そうですしね。当然ですけど、砲弾が当たればの話ですが……
『当たらなければどうという事はない』
この言葉は、まったくもって至言だと思います。
もっとも、大和や武蔵の46cm砲でしたら、至近弾でも相当な被害が出そうな気もしますが。
あと、至近弾って海面に着弾した後で、水中弾になるのでしたね。確か水中を、50m以上進むのでしたっけ?
魚雷よりも速く進んで、なおかつ砲弾重量も炸薬量も多い46cm砲弾を喫水線下にでも喰らったら、当たり所が悪ければ戦艦でも一発で轟沈しそうな気がしますね。
おおっ怖っ!
話が逸れた。
つまり、なにが言いたいかと申しますと、
見苦しいから、さっさとルーデルに沈められてしまえ!
こんな感じですかね?
それにしても、ロイヤルネイビーと英連邦諸国の艦艇が145隻に、招待された外国艦が18隻。それに、商船やヨットを併せれば、合計で200隻を超える艦船が一堂に会して行う観艦式は、壮大なスケールでとても感動しました!
こんな光景は、前世では絶対に見れなかった光景ですし、感動も一入です。この時代における、人類の叡智の結晶、最高峰が見れた瞬間だと思いますね。
ロンドン テムズ川桟橋
「もう行くの?」
「次の訪問先に行く予定が詰まってるからね」
テムズ川の河口には、ポーツマスから回航された比叡が待機してくれてますので、あまり待たせるわけにはいかないのです。
だから、見送りに来てくれたローズとは、テムズ川の桟橋でお別れです。
「行っちゃヤダー!」
ぐへへへ、ローズちゃん、可愛ええのぉ。おっと、いかん。地が……
「また遊びにくるよ。ローズも日本にも遊びに来てください」
日本の皇室とイギリスの王室の国際親善は、日英の友好を深めるのに大切ですしね。
「そうだね! 私もいつかは日本に行ってみたいなぁ」
「大歓迎ですよ。是非、いらしてください」
「藤宮様、そろそろお時間です」
おっと、時間切れでしたか。名残惜しいですけど、ここまでみたいですね。
「それじゃあ、ローズ、またね」
「うん、また遊びに来てね」
「今度は、折り紙もっと教えてね!」
「わかったよ。それまではローズも折り紙を練習しておいてね」
日本の伝統文化でもある折り紙で、ローズの心をガッチリと鷲掴みにする作戦です。
まあ、そんな打算抜きにしても、折り紙がイギリスに広まれば、少しは日本に対して好意を持ってもらえらばいいなぁ。そう思ってはいるのですがね。
これでは、打算ありきだったか……
「うん!」
「バイバイ! またね!」
「またね!」
ローズちゃんに、スリスリと頬擦り。ついでに、頬っぺにチュー。
ロリコンじゃないよ? 親愛の情を欧米流に表現したのです。
断じて、役得ではない! 断じて!
こうした方が、より友情と親愛が深まるって聞きましたので、、レッツ実践であります!
もっとも、前世も今世も日本人である、私にとっては、この表現方法は些か恥ずかしいのですけれども。日本人はシャイなんですよ。
まあ、些細なことでしたね。
それでは、これから第二の訪問先であるオランダヘと旅立つとしますか。
もっとも、旅立つだなんて言っても、テムズ川河口からロッテルダムまで距離にして、250kmもないのですがね。一晩で辿り着いちゃう距離ですよね。そう考えると、欧州ってコンパクトに纏まってるのが実感できる距離感だと思います。
オランダの首都であるアムステルダムの内海でもある、エイセル湖やマルセル湖の方へは、水深が浅すぎて比叡では入れませんので、欧州大陸有数の国際港でもあるロッテルダムへの入港になります。
女王陛下が腐女子でないことを神様に祈りましょう。
あ、ついでに、ロイヤル・ヴィクトリア勲章の二等デイム・コマンダーを貰いました。
コマンダーって中佐ですかね?
え? なんで子供の私が貰えるのかって?
受賞の理由は、私が皇族だからなんでしょうねぇ……
お父様は、ロイヤル・ヴィクトリア勲章の一等ナイト・グランド・クロスを、お母様も同じく、一等のデイム・グランド・クロスを貰ってますし、まあ、いわゆる一つの、外交的なサービスってヤツなのではないでしょうか?
ちなみに天皇陛下は、最高勲章であるガーター勲章を既に受章しております。
運営に再確認して貰いますので、取り敢えずここまで。