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7話 魔法書?






 説明回です。

 「セリフが一気に増えてます。」


 終わらなかったので次回も説明回になります。









 「今度こそ知らない天井だ。」


 ぼんやりとしていた意識が徐々に明確になり、未だにズキズキと痛む頭に顔をしかめながらも、自宅よりも古い木材で作られたであろう天井を見ながら声を出す。

 

 どうやらまだ生きているらしい。

 よかった…いくら何でも、また死んで新たに転生とかだった場合はちょっと笑えないから。

 転生し苦労して文字を覚え、魔法書なる地球にはない物を手に入れこれからドキドキワクワクの人生がって時に…。

 しかも死因が読書とか…意味が分からない。

 なぜ本を読むのに死を覚悟しなければならないのか。

 やはりあの魔法書は異質だったらしい。

 おのれルークめ!変な物を渡しやがって…あとでロロアにチクってやる!


 「それはそれとしてここはどこだ?」


 ルークへの怒りは一旦棚上げにして気持ちを切り替え、今まで寝かされていた少し固めのベッドの上で上体を起こし周囲を見渡す。

 ワンルームマンションの1室よりは広い部屋。

 壁は煉瓦で頑丈そうな作りになっている。

 部屋の中にはベッドや机、椅子、タンスがあり…窓は鎧窓だろうか?

 並ぶように2つ大きいのが付いていて、そこから夕陽が差し込んでいる。


 「そんなに意識失ってたの…。」


 目覚めの気分的には1、2時間程度寝ていた感じなのだけど、余程ダメージが大きかったらしい。

 まあ、事故の痛みよりも酷かったしねあれ…。

 そういえば、魔法書読んだんだから魔法覚えたんだよね?

 頭に文字入ってきたし。

 近くに魔法書も置いてないから、全部僕の中に入ったと思っていいのだろうか。

 ゲームとかだと、覚えた魔法一覧をメニューで見ることが出来るけど、この世界にステータス画面とか便利なものが無いのは検証済みだ。


 「しかしそうするとどうやって確認すれば…お?」


 腕を組み悩んでいると扉の向こう、複数人が廊下を歩く足音が聞こえる。

 そしてこの部屋の前で足音は止まり、ノックされる。


 「はい。………?」


 ノックされたので条件反射で返事をするも、誰1人として入ってこない。

 仕方ないのでベッドを出て扉を開けに行こうとした瞬間、勢いよく扉が開かれロロアが飛び込んできた。


 「リンー!気が付いたのね!!良かった…本当に良かった!!朝ご飯の片付け終わって戻ったら意識失って倒れてるんだもの!!静かだから寝てるのかと思ったら顔が真っ青で!もうお母さん心配で心配で!どこか痛いところない!急いで回復魔法かけたけど全然良くならなくてもうダメかと…。」

 「お母さん!大丈夫だから落ち着いて!痛い!痛いから!」


 飛び込んできたロロアはベッド上で僕を泣きながら力強く抱きしめ、ここまでの経緯を口にするもいまいち要領を得れない。


 「ご、ごめんねっ!やっと目が覚めたのが嬉しくて嬉しくて…でも本当に良かった…。」


 そう言いロロアは抱きしめていた腕を放し、ベッドに腰掛け僕の頭を愛おしそうに撫でる。

 また心配をかけてしまったが、今回のは僕も予想外だったので許して欲しい。

 そして責めるならあの魔法書を渡してきたルークでお願いします。


 ロロアに頭を撫でられていると、さっきの足音の人達だろう3人の人が見覚えのある人と共にこちらに近付いてくる。


 「ミオ先生?」

 「はい~。おはようリンく~ん。調子はどうですか~?」

 「え、あ、はい。ちょっと頭がズキズキしますけど、それ以外は何ともないです。それより…後ろの方達は?」

 「そうですか~。それなら安心ですね~。後ろの方達は~この教会で働いているシスター達で私の同僚ですよ~。」


 確かに入ってきた3人とも同じ修道服を着ている。

 ただ、皆女性ばかりなので少しビクビクしてしまうが…。


 「シスターってことはここは教会ですか?」

 「はい。そうです。ここは村中央にあるサンペトリック教会トール支部になります。」

 「あ、ありがとうございます…あの、お姉さんは…」

 「これは失礼しました。私の名はシール。リンさんの意識がないとロロアさんが駆け込んできた時に対応致しました。どうぞお見知りおきを。」

 「ど、どうもありがとうございました…。リンといいます…。よ、よろしくお願いします…。」

 「シール…リンくん困ってるから。あ、わたしはニニ。よろしくねリンくんっ。君の話はミオから聞いてるよ。」


 僕の質問に答えてくれたのはシスターの中で唯一短髪のシールさん。

 全体的に細く色白で、僕にでも敬語で話しかけてくる。

 何事もキッチリしてそうな印象だ。

 メガネとかかけたら委員長っぽいかもしれない。

 ちょっと怖い。


 続いてフォローしてくれた人はニニさん。

 3人の中では1番背が低いが、程良く焼けている肌が健康的な印象を与えてくれる。

 こちらはシールさんとは打って変わって人懐こそうだ。

 もう少し離れて欲しい。

 そしてちょっと犬っぽい。

 いや、ケモミミはないから人間種なんだろうけど。


 「2人とも、リン君は病み上がりみたいな状態なんだから、余り近付かないの。疲れちゃうでしょ。」

 「大丈夫だよカナ。寧ろリンくんも男の子なんだし、女性ばかりに囲まれて嬉しいはずだよ!」

 (いや、寧ろ元気なくなってます。あまり近付かれると動悸が…。)


 そして最後の1人カナさんという人に視線を向け……驚く。


 「……え?黒髪黒目?」


 そう、黒髪黒目。日本人のような顔の作りに思わず固まってしまう。

 しかもロロアやミオに負けず劣らずの美人。


 「初めましてリン君。私はカナ・アオギリ。この辺じゃ珍しいでしょ、これ。私の家系はね、勇者様の血を引いている一族で代々この黒髪黒目になるの。私もリン君と同い年の娘がいるんだけどね、娘も黒髪黒目なのよ。」


 髪や目、顔の作り、更に名前までまんま日本人だ。

 カナさんの雰囲気はお店の女将さんって感じで、外人の中に1人だけ日本人が混じってる違和感がパナイ。


 「は、はぁ…初めまして。…え、でも、シスターなのに娘さん?」

 「あら、あなたよくそんなこと知ってるわね…本当に娘と同い年なの?…これが本当の天才ってやつなのかしら…。まあいいわ。そうよ、昔は未婚女性か子供が成長した後でなければシスターにはなれないのだけれど、今は違うの。それこそ私のご先祖様…勇者の1人であり、聖女として活躍していたと言われるユイ・アオギリ様のおかげなんだけどね。あ、因みに娘の名前も聖女様に肖ってユイにしたのよ。」


 ユイ・アオギリ。

 勇者の1人で聖女様とは…よく出来たお話だ。

 きっと回復魔法が得意で怪我人とかを治療していたのだろう。


 異世界転生話では典型的なパティーンだ。


 「終わったか?俺もリンの顔を見たいんだけど…。」


 粗方自己紹介が終わった時、シール、ニニ、カナの3人の後ろからルークが出てきた。


 「お父さんっ!あの魔法書なんなの!聞いてなっ……どうしたのその顔…。」


 チャンスとばかりに今回の元凶に文句を言おうとしたところ、なぜか紅葉型に真っ赤に腫れて痛々しいルークの両頬。

 ルークも苦笑している。

 するとニニが


 「えー…っとね、リンくん…。ルークさんが仕事を抜けて慌ててここまで来て、魔法書云々の説明をしてた途中でね…ロロアさんにね…。」

 「あ、はい、もう分かったんでいいです。」

 「しかしあの往復ビンタのクオリティは素晴らしかった。実に無駄のない動き…私にも伝授してくれないだろうか。」


 既に折檻(おしおき)済みだった。

 そしてシールさん真顔で恐ろしいことを言わないで下さい。

 きっとあれだろう。

 デンプシーロールみたく、∞の動きで叩いたのが想像できる。

 チラッとロロアを見たらルークを見ないように顔背けてるし。


 「はいは~い。自己紹介も済んだし、リン君も大丈夫みたいだから~皆はもう戻って残りの仕事片付けてね~。」

 「それでは皆さん。私たちはこれで。リンさんお大事に。」

 「はい。シールさんありがとうございました。」

 「リンくんっお大事にね!また何かあったらここに来てね。何もなくても来てもいいけど。」

 「はい。ニニさん。また今度遊びに来ます。」

 「じゃあね、リン君。今度ユイを紹介するから仲良くしてあげてね。」

 「はい。カナさん。楽しみにしてます。」


 ミオの号令で、それぞれ挨拶をし部屋を出ていく3人に言葉を返し別れる。

 何気に面白い人達だった。


 そして部屋の中にはライルハーツ家の3人とミオだけになった。

 すると、ルークがベッドに近付いてきて


 「リンごめんな。まさか魔法書で意識失うとは思わなくてな…。冒険者として活動してた時も、使ったやつがそんなことにはならなかったから安心してたんだが…。」

 「だからって母親の私に説明もなくリンに渡すのはどうなの?」

 「それは本当に申し訳なく…。」


 そのやり取りで静まり返る部屋内。

 い、息苦しい…。

 確かに元凶はルークだが、あまりの空気に居たたまれなくなって来たのでフォローに入る。


 「お母さん、相談しなかった僕も悪いんだからもうお父さんを責めないであげて。ごめんなさい。」

 「リン…。」

 「そもそも本が欲しいって言ったのは僕で、お父さんはそれに答えてくれただけだし、これからはちゃんと相談するから。ね?」

 「………………はぁ…分かったわよ。もう責めない…それと約束。何かする時はお母さんに相談すること。………ルークもいいわね?」

 「は、ハイッ!…リンありがとな。」


 無言のところでだいぶ悩んだのだろう。

 胸中で納得したのか、溜息をついてルークを許すロロア。


 そして一段落したところで、ミオが椅子に座り


 「仲直りできてよかったです~。怒ってたロロアさんはとても怖かったですから~。それでリンく~ん?意識を失うまでの細かいことを、リン君から改めて聞きたいんだけど…いいかな~?」

 「そんなに怖くはありません!」

 「いやいや…超こ…「なにか?」……なんでもないです。はい。」

 「……はい…大丈夫です…。」


 後ろの2人のことはほうっておいて、ミオに返事をする。

 どうやらこの為にシスター達には出てってもらったみたいだ。

 何か聞かせたくないことでもあるのだろうか?


 そしてゆっくりと意識を失うまでの経緯を思い出しながら、ミオに説明し始める。


 「えっと…朝ご飯の後、お母さんと一緒にお父さんを送り出してからお母さんは後片付け始めたので、僕はまず魔法書が出てくる絵本を読み始めたんです。」


 粗方予想していたのだろう。

 何も言わず黙って聞いているルーク、ロロア、ミオ。


 「それで小さな魔法使いのお使いを読み終わったら、魔法書のことで不思議に思ったことがあるんです。」

 「不思議なこと?」


 ロロアが反応する。


 「うん。1つ目は魔法書って読めば魔法が使えるようになるって書いてあったから本当なのかな?ってのと。2つ目、魔法書は簡単に手に入るのかな…値段はいくらなのかな?3つ目、魔法書じゃなくて他に魔法を覚える方法あるのかな?4つ目、魔法書は全部同じ物なのかな?5つ目、誰が作ってるのかな?6つ目、どうして作ってるのかな?ってことなんだけど……あのー…。」


 やばい…初っぱなから暴走しすぎた…。

 普通に考えて、3歳の子供が考えることじゃないよなこれ。

 ミオは何か真剣に考えてるけど、それより身内の反応が。

 ルークは顎が外れそうな程に開いてるし、ロロアも口元は手で隠しているけど目はひんむいてるし。


 「ふんふん…で、リンく~ん。その不思議なことは何か分かった~?」


 ミオが話を促す。


 「え?あ、いえ…3つ目の魔法書以外にも魔法を覚える方法があるってことしか分からなくて…。絵本の少女が魔法書を読む前から風魔法を使えてたってことだから多分ですけど。」

 「そうですね~。それらを説明すると~まず1つ目、本当です。私も魔法書の使用経験がありますから、ちゃんと覚えられますよ~。次に3つ目…正確には誰かに師事して貰い、年月をかけて詠唱する事で魔法は使えるようになります~。そして魔法書とは~、本来師事して貰うことをせず魔法を使えるようになる為の魔法具として、錬金術ギルドと魔法ギルドが共同開発~。帝都など大きな都市にて販売されています~。」

 「帝都…錬金術…ギルド…。」



 錬金術と聞くと、義手豆チビ兄とねこ好き(ふんどし)鎧弟の漫画を思い出して手パンしたくなる。

 手パン。

 僕は真理を見た!



 「これで1つ目2つ目と3、5、6はわかりましたね~。あ、値段はですね~簡単な火魔法…ランプに火を灯すような小さいのなら~銅紙幣2、3枚で~弱い魔物を5、6匹纏めて殲滅するような大きいのは~金貨30枚位でしょうか~。印刷技術が無かった頃はもっと高かったと言われてますね~。」

 「あの、ミオ先生…お金の価値が分かりません。」

 「あら~私ったら…リン君のことだから知ってるものと~。ごめんなさい、今説明しますね~。」


 ミオの説明よるとこういうことらしい。



 銅紙幣=100円

 銀紙幣=1000円

 金紙幣=1万円

 白金紙幣=10万円

 金貨=100万円

 白金貨=1億円


 紙幣があるのは、印刷技術を広めた勇者達によるものでちゃんと透かしまで入っているそうだ。

 それ以前は全て硬貨で


 銅貨

 大銅貨

 銀貨

 大銀貨

 金貨

 白金貨


 だったと。

 硬貨はかさばるので商人達がだいぶ苦労していたが、紙幣の誕生により様々な取引が楽になったらしい。

 最初は紛い物、偽札が流通していが今現在は国が厳重に取り締まっているので、全く問題ないとのこと。



 (って、ことは…範囲魔法覚えるには金貨30枚だから、3000万か!?うっわー…えげつなー。都内に家建つじゃん家。)

 「なので~大体の魔法使いは誰かに師事して貰って、ゆっくりと覚えるんですよ~。」

 「なるほど…よく分かりました。…あれ?ミオ先生、じゃあ4つ目は?」


 1つだけ抜けていることに気付き質問する。

 ルークとロロアも疑問に思っているらしく頷いてる。

 すると、ミオは柔らかい笑顔から一変、真剣な表情になる。


 「それが今回の原因なんです。」

 「…ミオ先生?」


 え、あの…ミオ先生、語尾は…?

 伸びないの?

 あ、今まで狙ってやってたのね。


 「リン君は4つ目を、何でそう思いました?」

 「…挿絵です。」

 「挿絵?」


 あまりにも真剣な表情なので、直接はツッコまず答えるとルークが呟く。


 「うん。絵本には、魔法書の挿絵として薄い紙をくるくる巻いた絵が描いてあったの。だけど、お父さんから渡された魔法書はすごく厚くて重い本だったから変だな不思議だなって。」


 言葉を選びつつ、ルークに話すとその言葉を引き継ぎミオが


 「そう、本来の魔法書は薄いもの。じゃあなぜリン君の読んだ魔法書は厚かったのか…それは魔法書ではないからです。」

 「ちょっ、ちょっと待ってくれミオ先生!魔法書じゃないならあれはいったい…。」


 魔法書ではないもの…何か分からないものを僕に渡してしまったことに慌てるルーク。

 そんな彼の質問に


 「人の手では創り出せないもの『魔導本』です。」


 淡々と答えたミオ。












 ここまで読んで下さりありがとうございました。




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