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4話 感謝を






 えっちぃ部分が続きます。











 暫くマウンテン……いや、とても立派なおっぱいさんに釘付けになっていると視線に気付いたミオは、


 「あら~?私の胸が気になるんです~?でも残念ながら、おっぱいは出ませんよ~。」

 (いや、ちゃうねん。確かに気にはなってるけどちゃうねんてミオ先生。)


 生まれも育ちも関東なんだけど、前世でも見たことのないおっぱいさんに思わず関西弁でツッコんでしまう。

 毎週月曜にSNSでアップされるイラストよりあるんじゃないか?ってミオのサイズに、巨乳のはずのロロアの胸が普通に見える。


 「リンも〈男〉の子ですからね。それよりどうなさったんですか?」


 やけに男の部分を強調し、僕の頭を撫でながらおっぱい云々の言葉に肯定しつつ、居間で待っているはずだったミオに向き直るロロア。

 過去に男と胸で何か嫌なことでもあったのだろうか?


 「そうなんです~!早くまたリン君の顔が見たくて待ちきれなくなってしまって~。部屋を飛び出しちゃったんですよ~。」

 「ふふっ。そんなに慌てなくてもリンは逃げませんよ。まあ、早く顔を見たい気持ちはとても分かりますけど。」


 ロロアが若干親バカ発言をしているがそれはスルーして、このミオという人は余程子供が好きなようだ。


 「じゃあ、とりあえず居間に戻りましょう。そこで改めてお話をお願いします。」

 「そうですね~。あ、リン君を抱かせて貰ってもいいですか~?」

 「もちろんですよ。リン、お母さんは紅茶を淹れ直すからミオ先生と一緒に待っててね。」

 「うぃ!」(わかった!)


 そういうと僕はロロアからミオに渡される。

 つまりは、またあの大きなお山に包まれるわけで…


 (うっわ!!何これ何これ!こんな柔いものがあっていいの!あ…だめだこれ寝そう…。)


 翔としての以前の僕なら、あまりの柔らかさと温かさに理性が飛ぶかと思われたが、乳幼児の僕にとってのこのお山は超柔らかいベッドでしかないらしい。


 「あらあら、凄く気持ちよさそうな顔をしちゃって…。ちょっと妬けちゃうわね。」

 「!!?」(違うんだよママン。これはそういうんじゃなくてね…。ママンの胸も安心するんだけど、ミオ先生のはお日様に干した布団みたいな…。)


 妬いちゃうと言われ、とっさに浮気がバレた夫みたいなことを思ってしまったが、ロロアに顔を向け何とか途中から軌道修正した。

 その様子に満足したのか、僕の頭を撫で紅茶を淹れ直す為台所に向かうロロア。

 ロロアを横目に見ながら、ソファに腰を下ろすミオ。


 「それでは改めて~久しぶりリンく~ん。2人きりだね~。身体も重くなったね~。」

 「?あぅ!」(?初めまして!)


 久しぶりという言葉を疑問に思うが、助産師さんだから当然かと納得し、2人きり(台所にロロアがいるが)というミオに視線を合わせ返事をする。

 返事をしたことで、ただでさえふやけていたミオの顔が更に溶ける。


 「あ~ん!本当に可愛いです~!連れて帰りたいぐらい~!」

 「うぅ!?」(うぇ!?)


 今の発言に身の危険を感じ、思わず声を出し身構えてしまう。


 「ん~?冗談だから大丈夫ですよ~。連れて帰りたいぐらい可愛いのは~事実ですけど~。だけどロロアさんのお話通り、本当に言葉が分かるみたいですね~。」


 溶けていた顔を戻し、僕を目線の高さまで持ち上げて視線を合わせてくる。

 まるで内側まで見透かそうとするライトブルーの瞳に、居心地の悪さを感じる。

 が、それも長くは続かず目線の高さから抱え直し、話を戻すミオ。


 「そう言えば自己紹介がまだでしたね~。私の名前はミオ。ミオ・ジルベルトと申します~。今は教会でシスターをしています~。よろしくね~リンく~ん。」

 「あ、あぅ…。」(あ、それはそれはご丁寧にどうも…。)


 先程の視線の為、少し吃ってしまった。

 しかしシスターか…。修道服も着ていないし先生というから、助産師兼医者みたいなことをしているものだと思っていたので少し驚いた。


 そして驚きから落ち着いたことにより、気付いたことがある。


 (ミオ先生の髪ピンクだ…。しかも頭からなんか垂れてる?)


 そんなに動揺してるつもりはなかったのだが、改めておっぱいさんの威力に冷静さを欠いていた事に今更気付き、恥ずかしくなってしまう。


 「ん~?どうしたの~?……もしかしてこの髪かな?」


 僕の表情を見て何か感じたのだろう。

 ミオが答えてくれた。


 「私はね~。人間(ヒューマン)種じゃないのよ~。獣の特有がある獣人種なの~。この頭から垂れてるのもそ~。」


 獣人種。

 正確には獣人種族という。

 僕が読んで貰っていた2冊の絵本に登場した種族だ。

 純粋な人間(ヒューマン)種族に比べ身体能力が高く、獣人種族の中でもそれぞれ異なる特有を持つらしい。


 「この垂れてるのはね~、兎人種特有の耳なの~。本当はまっすぐ立ってるはずなんだけど~私は純粋な兎人種じゃなくてエルフ種とのハーフだからか垂れてるの~。」

 「うーあー!!」(エルフ!?エルフ種!?今エルフ種って言った!!)


 ミオの言葉に満面の笑顔で反応する。

 異世界定番の獣人種がいるのは絵本で知っていたが、エルフ種は絵本に出てきていなかった。

 だから僕はこの世界にエルフはいないものだと思っていたのだ。

 それがまさかミオから教えて貰えるとは。


 (しかもハーフ!ってことは種族間もそんなに仲悪いってことじゃないのかも!)

 「あら~。そんなに喜ばれるとは~。」


 僕の予想外の反応にミオも嬉しそうだ。

 そこに紅茶を淹れた直したロロアがクッキーだろうか?

 アールグレイのような紅茶の香りと共に、とてもいい匂いのするお菓子もお盆の上に乗せて戻る。

 それに気付いたミオは僕を隣に下ろしソファに座らせる。


 「お待たせしました…あら?もうすっかり打ち解けたみたいで。」

 「いえいえ~。そうなんですよ~。私の話をとてもよく理解してるみたいに喜んでくれるんです~。」

 「やっぱりミオ先生もそう思いますよね!でも以前、近所の奥様方が来た時には泣き出してしまったんですけど…。やっぱり胸なのかしら?」


 また胸について呟きだしたロロア。



 胸は関係ないのだが、ロロアの言う通り僕が生まれて間もない頃、近所の奥様方が僕を見に家に来たことがあった。

 しかしあの頃は美希の最後の顔を強く覚えていて、見える女性全てが僕を騙そうとする人に見えてしまい、大泣きしてしまったのだ。

 今はあれから5ヶ月経ち、美希の件も落ち着きを取り戻した。

 さすがに忘れることは出来ないが、以前のように泣き喚く程ではなくなったのだと思っている。

 まあ、初めて会う時は緊張でどうにかなってしまいそうなのだが…。


 「私の場合は~生まれてすぐの時ですかね~リン君が泣いてる時向かったんですけど~、私が抱き上げたらピタッと泣き止んでそのまま寝ちゃったんですよ~。」

 「あ、もしかして、出産直後で私がまだベッドで横になってる時ですか?」

 「そうですそうです~。」


 そんな2人の会話を耳に記憶を手繰り寄せる。


 (…………もしかして転生して来たと気付いた初日か?)


 他に思い当たることもないので多分そうだろう。

 確かにあの時は自分の現状に混乱して泣き叫び、巨人に抱き上げられた上、聞いたこともない言語で意識を失ってしまったが…。


 (そうか、あれがミオ先生との初対面だったのか。)


 それは覚えていなくても仕方ないと思う。

 だって目がよく見えなかったんだもの!

 柔らかかったことは覚えてるんだけどね…。


 「まぁ~男の子ですからね~。」

 「男の子ですもんね…。」


 そんな僕の考えを読んだかのようなタイミングで、2人して納得しないで欲しい。


 (確かに胸は好きだけど!大好きだけども!!)


 そんな中、ロロアが運んできた紅茶とクッキーの入った籠をテーブルの上に置き、反対のソファに腰を下ろす。

 焼いてからそんなに経っていないのか、香ばしいいい匂いがしてくる。


 (あの…ちょっとクッキーくれません?……あぁ、だめですよね…はい。)


 クッキーの匂いに反応した僕をダ~メっ!と優しく抑えるミオが、紅茶で喉を潤し話し始める。


 「それでロロアさん~、経過はどうですか~?」

 「はい。私の方はだいぶ体力も戻ってきてますね。さすがに冒険者として活動してた頃と比べるとあれですけど。」

 (なぬ?ママンが冒険者??)

 「それはそうですよ~。出産は体力の消耗が激しいですし~命を落とす可能性も高いですから~。」


 ロロアが元冒険者と聞いて驚きを隠せずジッとロロアを見つめる。

 全くもって冒険者という言葉に当てはまりそうにないほど、スラッとした細い手足。

 ルークが元冒険者だったという話を聞けば信じるが、ロロアが元冒険者だった…ではすぐに信じれる方がどうかしてると思う。


 「まぁ~命の危険があるのは冒険者も同じなんですけどね~。…ロロアさんの体力面は順調~っと…母乳の出はどうですか?」


 よく新米ママさん達から質問されるのだろう。

 慣れた様子でロロアの体調を聞き出すミオ。

 そして2、3程質問をし終えた頃、


 「それじゃあ、次はリン君ですね~。」


 呼ばれたのでミオを見上げる。

 横から見上るおっぱいも凄いなと思ったが、まじめな話っぽいので黙って聞いておく。


 「離乳食を始めたそうですが、食の進みはどうですか~?」

 「順調…。だと思います。残さず全部食べていますし。寧ろ、私達の方の料理を食べたそうにしてウーウー言ってるぐらいで。」


 チラッと僕を見るロロア。

 よく見られていたらしい。

 というかその言い方だと、まるで食い意地が張ってるようで恥ずかしいのですが…。


 (それはほら!ママンの料理が美味しそうだから仕方ないんだよ!)


 誰に対して言い訳してるのか、心の中で叫ぶ。


 「そうですね~。今見た感じでも、クッキーに興味津々みたいですから~。でも~まだ母乳は上げてくださいね~?離乳食だけだと栄養不足ですから~。」

 「分かりました。」


 確認することが一段落付いたのか、クッキーを手に取り口へ運ぶ。

 サクッサクッといい音がしてクッキーが割れ、飲み込むミオ。

 これも思わずジッと見てしまう。

 クッキーで口の中の水分を奪われたのか、再びカップに手を伸ばし紅茶を飲む。


 「話は変わりますがロロアさん~リン君は今も英雄譚の絵本を読んでいるんですか~?」

 「はい?そうですね…今日も朝ご飯を食べて横になってから、ミオ先生がいらっしゃるまでずっと読んでましたね。それこそおしめが汚れても、泣き声さえ上げずに。」

 「は~。凄い集中力ですね~…。」

 「あの…やはり何か問題があるのでしょうか?私も夫も初めての子供ですし、自分が聞いていた赤ちゃんの時とだいぶ違うようなのですが…。」

 (ママン…。)


 どうやら余計な心配をかけていたらしい。

 確かに今までの行動を顧みれば、赤ちゃんらしくないと思われても仕方ないのかもしれない。


 「う~ん。そこまで心配されなくても大丈夫だと思いますよ~?気に入った物をずっと持ち続ける子は他にもいらっしゃいますし~、ご飯に関しては少し早いですが、他の人の食べてる物を食べてみたがってるだけだと思いますし~。それに赤ちゃんの成長速度は人それぞれなので~不安に思うかもしれませんが、それに合わせて頑張っていきましょう~。大丈夫ですよロロアさん~この町には子育てを経験した先輩ママさんも沢山いますし、私だっています~。何かあった時、不安な時はお助けしますから~。」

 「……はい…ありがとう…ございます…ミオ先生…。」

 (………。)


 余程不安だったのだろうか、ミオの優しい言葉に泣き出してしまったロロア。

 僕は座っていた体勢を崩し、ずりばいしながらロロアの方へ向かう。

 すると僕の考えが分かったのか、優しく微笑みながら抱き上げるミオ。

 そしてロロアとの距離を少し開けソファの反対側に座り僕を下ろす。

 その行動の意味が分からず泣きながら見つめてくるロロア。

 生後5ヶ月…未だ筋肉が発達しきれていない身体だが、少しずつ少しずつ時間をかけてロロアとの距離を詰める。

 



 生前。

 いや…翔として生きていた時、僕は実の両親を事故で失った。

 それこそ今とそう変わらない時期だったと聞いている。

 教えてくれたのは、僕を引き取り育ててくれた両親だ。

 実の父親の妹であり、僕にとっては叔母にあたる。


 勿論育ててくれた2人には感謝しているし、実の両親と同じく事故で亡くなってしまったことに罪悪感がある。

 あまり迷惑をかけたくないと高校卒業後すぐに社会に出てからというもの、何も連絡出来ず親孝行さえしていない。

 きっと既に連絡が入っていることだろう。

 1度くらいちゃんと感謝を伝えておくべきだった。




 暫くそうして進んでいただろう、漸く僕はロロアの太ももに手を着く。

 そして伝わらないだろうが顔を上げ、視線を合わせ言葉を伝える。


 「あー…うー……まぁーまぁー。うー…うー。」(心配かけてゴメンね…でも大丈夫だよママン。僕はちゃんと元気に育つから。)


 驚き目を見開くロロア。

 涙に濡れていた瞳が更に歪む。


 「ミオ先生…!今…リンが…ま、ママって…。き、聞き間違いじゃないですよね!?」

 「…はい。私も聞きました。やはり他の子と比べて成長が早いですね~。」

 (え、まじで?ママンって言えた?)


 狙ったわけではないのだが、上手く言葉を発せたみたいだ。

 自分が喋れたことに軽く驚いていると、ミオの返事を聞き、僕を抱え抱きしめるロロア。


 「ありがと…ありがとうね。リン。不安なこといっぱいだけど、ママも頑張るから…!!」

 (よかった…ありがとう。僕も頑張るよ…お母さん。)


 抱きしめ泣きながらも言葉を伝えてくるロロア。

 僕はロロアの……この世界での母の…涙に濡れた頬に触れながら、感謝を伝えるのだった。











 こういう終わり方をするつもりはなかったのですが…なぜこうなった…。


 次回に続きます。



 2016年12月16日

 ※シルフとエルフを間違えるというアホをやらかしました…。

 修正しました。





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