3話 程良い大きさが好み
ちょっとえっちいシーンがあります。
「チチチチッ」
鳥の囀りだろうか、深い眠りについていた瞼を開らき朝日射し込む窓辺へ顔を向ける。
生まれてから(転生してから)約5ヶ月。
漸く首が据わり、目もよく見えるになって部屋の様子がわかるようになった。
以前、天井が木材?と疑問に思っていたのは正しく、部屋の中は真新しい木材で出来ていた。
深呼吸するととても良い木の香りが鼻孔をくすぐる。
(うーーんっ!よく寝たなぁ。)
生後5ヶ月程度ではそこまで筋肉はないだろうが、仰向けのまま身体を伸ばし縮まっていたであろう筋肉を解していく。
これをやらないと目覚めた!という気持ちにならないからだ。
(さてと……せーのっ!ふんっ!)
ある程度伸ばし終わった身体を、心の中でかけ声を出し苦労しながらもひっくり返す。
うつ伏せになったらまだハイハイは出来ないので、ほふく前進のように腹ばいで進みベッドの上から部屋を見渡す。
ここは夫婦の寝室なのだろう。
僕の寝ているベビーベッドとは比べ物にならないほど大きなベッドがすぐ横に鎮座している。
既に2人の姿はない。
そして視線を後ろに向けると、ベビーベッドを挟んだこちら側、少し離れたところに本棚が見える。
本棚と言っても入っているのは絵本が3冊だけで、空いているスペースにはすぐ使うのだろうタオル類が重ねて置いてある。
あの絵本は夜寝るときに母親が何度も読み聞かせてくれているもので、全てノンフィクションとのこと。
あの3冊の絵本のおかげもあり、この世界の言葉も聞くだけなら何を言っているのか分かるようになった。
(ありがとうママン。そして何度も読んでっ!とせがんでゴメンよ…早く言葉を覚えたかってん…。)
悪いことをしていると思いつつも、止めるわけにはいかなかった。
本の内容としては、若い冒険者の話や小さな魔法使いのお使い、過去の勇者の英雄譚だ。
特に僕のお気に入りなのが最後の絵本。
勇者の英雄譚だ。
英雄譚と言っても難しい内容ではなく、この世界(『レティ』というらしい)の神様に召喚された異世界の住人3人が勇者として世界を周り、相対する邪神の従者を倒しながら最後は邪神そのものを討つ。
という内容だ。
絵本なので詳しい描写は無いが、過去に異世界人がいた情報を知れたのはとても大きいと思う。
ただし、気に入っている理由はそこではない。
なんとこの絵本、巻末に読み書き用の文字列が書いてあるのだ。
そりゃあ気に入りもするし、早く言葉を覚えたいから何度もせがむだろう。
そして他の2つの絵本には目もくれず、何度もこの絵本を選ぶからか、ある日この絵本について母親が教えてくれた。
母親曰く、この絵本は過去の勇者が独自の技術で発行し、今後生まれてくる子供達の為に格安で販売したものだとか。
勇者亡き後は独自の技術を国に公開し、今は国により発行されているらしい。
説明し終わってから
「って、まだ分かる訳ないか。」
と反省していたが、そこは転生者クオリティだ。
安心して欲しい。
ちゃんと喋ることは出来ないが、理解するのはバッチリだ。
「あーーうーー」(説明ありがとうねママン。)
笑顔で言葉を発した僕に顔をほころばせ、頭を撫でて部屋を出ていったのだった。
感謝を伝えた後、改めて絵本と向き合った僕はまじまじと見つめ、過去の勇者達にも感謝する。
(ありがとう異世界の先輩方!!邪神討伐とかはちょっと意味分からないけど尊敬します!)
邪神云々はスルーとしても、これほど世界に貢献することはないのではないかと思う。
なにせ国の、世界の識字率を上げるのだ。
このレティに国が何カ国あり、言語もいくつあるか分からないが、少なくとも今の僕には必要不可欠なものだ。
しかもそれだけじゃなく、独自の技術。
たぶん印刷技術だと思うが、それが公開されたということは本もそれほど高い値段じゃないと思う。
さすがに日本みたく数百円で買えたりはしないだろうが、ウン万ウン十万する心配はしなくてもよさそうだ。
そして本棚から目を離しベッドの向こう側。
タンスがあるが僕が気になったのはその隣、大きな姿見……鏡があった。
しかも綺麗な鏡だ。
これも過去の勇者達が広めたものなのだろうか?
もしこれ以外にも広めたものがあるとすれば、このレティと言う世界は、結構過ごしやすい世界なのかもしれない。
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リンがちょうど部屋を見渡し終えた時、寝室の扉が開かれる。
「あら、リン起きたのね。おはよう。」
「あーうっ!」(おはようママン!)
先程の話に出てきた母親が、笑顔で挨拶しながら入ってきた。
すぐさま返事をするリン。
そう、転生したのだから名前は以前の鈴原翔ではない。
リン・ライルハーツ。
それが今の彼の名前だ。
「さ、ご飯出来たから一緒に食べましょ。」
リンをベッドから持ち上げ抱える母親。
彼女の名前は、ロロア・ライルハーツ(19歳)。
瞳の色はライトグリーン。
髪色は綺麗なライトブラウンで背中まで伸ばしているのをアップにして纏めている。
身長は170cmとモデルのような高身長でありながら体型に関しては巨乳で、腰は子供を産んだとは思えない細さしかなく脚もスラッとしている。
一言で伝えよう。
かなりの美人だ。
そんなロロアに抱えられながら姿見の前を通る時、一瞬だがリンは自分の顔を確認する。
瞳の色はイエロー。
頭に少しだけ生えてきた髪の色はロロアのライトブラウンより少し濃い色をしている。
(今は赤ちゃんだから分からないけど、ママンがこれだけ美人なら不細工ってことはないな。)
翔が不細工という訳ではないのだが、可もなく不可もなく平々凡々な顔立ちをしていたので、今の顔がどうなるのか不安だったのだろう。
寝室から出て廊下を歩いていると、リンの鼻に料理のいい匂いが漂ってきた。
ロロアが廊下の途中にある扉を開き中に入る。
そこにはソファやテーブル、椅子が置いてあり、前世のリビングダイニングのような部屋だ。
そしてテーブルの上にはついさっき出来たのであろう匂いの元の美味しそうな料理が並んでいる。
ロロアはリンを赤ちゃん用の椅子に座らせ、自身はその隣の椅子に腰を下ろす。
そしてロロアの向かい側、ソファに背を向けた椅子に1人の男性が座っている。
彼の名はルーク・ライルハーツ(18歳)。
瞳の色はリンと同じイエロー。
髪色はブラウンで短髪。
身長は185cmと高身長で、更にキリッとしたイケメン。
仕事は街の自警団に所属している。
朝のトレーニングと仕事の成果か、無駄な脂肪など一切ないほど引き締まったいい身体をしている。
「おはよう、リン。」
「あーうっ!」(おはようパパン!)
ロロアの時と同じように返事をするリン。
「おー!うちの子は返事が出来て偉いなぁ!絶対言葉分かってるよなロロア?うちの子天才じゃね?」
「ふふっ、そうかもね。でもあまり仕事場では言わないでよ?ただでさえ子供に甘いって言われてるのに、そんなこと言ったら親バカだって近所の人に笑われちゃうんだから。さ、それよりみんな揃ったしご飯食べましょ。」
キリッとした見た目に反し、息子のリンに超デレデレなルーク。
その態度を見る限りもう既に手遅れなのだが、そのことをこの夫婦は知らない。
----------〈リン視点〉-------------
(………はぁ…。)
思わず溜息がもれる。
それもそのはず、目の前でルークやロロアは美味しそうな野菜たっぷりシチューとパン、サラダを食べられるのに対し、最近母乳から解放されつつある僕はペースト状の離乳食…。
(早くご飯が食べられるようになりたい。)
そんなことを考えても仕方ないと思う。
蒸かした芋で作ったのだろう離乳食を、ロロアから食べさせて貰いつつローテンションで2人の会話を聞く。
「そう言えば、今日じゃなかったか?ミオ先生が来るのは。」
「そうよ。お昼頃に伺いますって連絡が来てたから、それまでに掃除を済ませておかなくちゃ。」
「…あまり無理するなよ?最近は体力戻ってきてはいるが、出産前並みの完全復活って訳じゃないんだから。」
「心配してくれてありがと。だけど大丈夫よ。というより動かないと体力戻らないんだから。」
(ミオ先生?)
聞いたことのない名前に僕が反応したのを、ルークが気付く。
「ミオ先生っていうのはな、お母さんからリンが生まれてくるのを手伝ってくれた女の人なんだぞ。」
「そんなこと言っても分からないわよ。」
「いや、分かってはいるんだが…なんとなく誰?って顔した気がしてな。」
ロロアにツッコまれ、笑いながら説明するルーク。
当たっているのでルークは結構鋭いのかもしれない。
(出産の手伝い…つまりは助産師さんかな?)
その助産師さんが来る理由があるとすれば、経過観察の為だと思う。
ロロアも体力戻ってないと言っていたから、間違いないだろう。
(だけど…女の人か…。ロロアはママンだから大丈夫なんだけど、美希の件以来ちょっと女性が苦手になっちゃったんだよな…。優しい人ならいいんだけど…。)
1人不安になっていると、食事を終えたのかルークが席を立つ。
「ごっそさん。それじゃロロア、リン、そろそろ行ってくる。何かあったら、伝えにくるんだぞ?」
「分かってるわ。今日も気を付けてね。」
「うー!」(いってらっさい!)
僕の声に一瞬デレッとした顔をしたルークだったが、再びキリッと顔を引き締め出掛けていく。
「さてと…それじゃあ片付けてから洗濯と掃除かな…。リンはまたあの絵本読む?」
「うぃ!」(読む!)
「ふふっ。なにその返事。じゃあ、ベッドに戻りましょうね。」
離乳食を食べ終わった僕をロロアは再び抱え、寝室へ運んでいく。
そして僕をベッドに横たえ、ロロアは本棚から英雄譚の絵本を取り出す。
「あ、おしめ見なくちゃ。朝変えたから大丈夫だと思うけど…。うん、大丈夫みたいね。」
確認し終え大丈夫だと分かったのか、絵本を隣に置いてさっさと戻っていく。
「じゃあリン、大人しくしてるのよ?何かあったら呼んでね。」
「うー。」(分かったー。)
寝室の扉が閉められ1人になる。
(さて、今日も勉強頑張りますか。)
僕は気合いを入れ絵本を開いていく。
それからどれ位経ったのだろう。
寝室の扉が開き、ロロアが入ってくる。
「リン、起きてる?ミオ先生がいらっしゃったから一緒に挨拶しましょ。」
そう言いながら僕のおしめを素早く変え、抱え上げる。
ミオ先生が来たということはもう既にお昼になっていたらしい。
しかもいつの間にか用を足していたと…。
赤ちゃん生活も長いからか、垂れ流していたようだ。
(これはトイレの訓練も頑張らないと不味いことになりそうだ…。)
ショックを受けながらも運ばれ、リビングダイニングに向かう。
ロロアが扉の前に立つ。
僕は視線を扉に向け、どんな人なのかと緊張しながら中に入るのを待つ。
するとロロアがドアノブに手をかける前に扉が開き、ピンク色の物体が飛び出してきて僕の顔に思いきり覆い被さる。
「キャッ!」
「う"」
「きゃぁ~!?」
(痛っ!……くはないな…それよか息が出来なくて苦しい!!)
後頭部をロロアの巨乳に押し付けられたからか、あまりダメージはない。
だか、前からも柔らかなものが顔を覆い息が出来ない。
「ちょっ!?ミオ先生!退いて退いて!リンが苦しんでる!」
「あっ!ごめんなさい~!すぐ退きます~!!」
そんなやりとりの後、僕の顔を覆っていた柔らかなものが外され、新鮮な空気と一緒に何かの花の香りだろうか?
とても女性的な香りが鼻孔をくすぐる。
すると、
「ごめんなさいリン君~。大丈夫ですか~?」
やけに間延びする語尾が気になるが、この人がミオ先生なのかと息を整えながら顔を見ようと視線を向ける。
が、そこにあったのは顔ではなく……
「………うぅ!?」(………マ、マウンテン!?)
まるで山のように大きいおっぱいだった。
たわわなおっぱい!!
2016年12月15日
※名前の表記を間違っていたので修正しました。
同年12月16日
※ミオ先生とぶつかった時、花の香りを追加しました。