2話 僕はツッコミキャラじゃないのよ
「「ーーーーー。」」
波間に揺蕩うように眠っていた翔の耳に、聞いたことのない優しげな声が洞窟内を反響するように聞こえてくる。
(…誰だ?悪いけど今日はとんでもなく眠いんだ…。もう少し寝かせて…。)
いつも以上に眠いせいかそれ以外のことを考えられない翔。
そして自分の現状になにも疑問を持たずもう1度深い眠りについた。
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それからどれくらい眠っていたのだろうか、目覚めた僕は周りを柵のような物で囲われたシーツの上で横になっていた。
今は朝なのか、窓から入ってきている暖かな陽の光と程よい風が心地良い。
(ここは…ベッド…か?…あー……そういや事故ったんだっけ。誰かが救急車呼んでくれたのかな?……身体は…そんなに動かせないか…。トラックに跳ねられたんだもんな確か。最後潰されたような気もするんだけど…むしろよく生きてたな僕。)
寝ぼけながらも事故のことを鮮明に思い出し生きていることに安堵した。
(そういえば意識失う前、美希笑ってたな…。僕が死ぬことが嬉しいってか?……やめだやめ。とりあえず身体確かめないと。)
事故のことに続き嫌なことまで思い出してしまったが、思い通りに動かない身体を優先し、被害はどれほどのものかと確かめ始めることにした。
(あんまり動かせないけど、手足は繋がってるみたいだな。首も固定されてるからか、動かせないけどちゃんとあると。五体満足で生きてるとか結構頑丈なのかも。視界は…だいぶぼやけてる…ってか目が上手く開かないからほとんど見えないな…まあ、失明した訳じゃなさそうだしそのうち開くだろ。)
思っていたより軽い被害にほっとしたのか、心に余裕が出てきた。
そのせいか、ふと子供の頃に再放送で見たアニメを思い出す。
(………それよりこういう機会滅多にないし、とりあえず言っておこうかな。)
ぼやけてはいるが、身体の方に向けていた視線を天井に向け声を出す。
「ウゥーウアァ!?」(知らない天井だあぁ!?)
身体の様子を確認し終え、誰もが知るアニメだろう某有名作品のセリフを言ってみた結果、自分の声の予想外の高さに生きていること以上に驚いた。
(はっ!?えっ?声たかっ!え?身体は割と大丈夫だったけど、声帯おかしくした?何そのピンポイントな被害…。てか声も上手く出せないじゃん!なに今の…成人男性じゃなくて、まるで赤ちゃんみたいな………ん?)
天井を見ながら先程聞こえた自分の声に心の中でツッコミを入れていたが、ぼんやりと見える天井の色に気付きほとんど開いていない目を更に細める。
(あれ?そういえば…なんか天井暗くね?てか、あれ木材か?)
1つ奇妙な点に気付いたことを皮切りに、更に色々と気付きだす。
(天井が木材って…ここ本当に病院なのか?事故ったのマンションから駅までの道だよな?山奥ってんならあり得るかもだけど、わざわざそんな所まで運ぶ訳ないし…。…それにそうだよ。事故にあって動かないほどの身体なのに、点滴や心電図のコードが繋がってる様子がないじゃん!え、本当にどこなのここ?僕の身体どうなってんの!?)
さっきまでの落ち着きはどこへやら。
パニックを起こした僕は無意識に大声で泣き始めてしまった。
「ア"ァ"ー!!ウゥーア"ァ"ー!!」(何がどうなってんのー!!)
しばらく泣き続けていると、その泣き声が聞こえたのか廊下を歩くような足音が聞こえてきた。
そしてドアが開くキィ…という音が聞こえ、僕は自分が泣いていることに気付く。
(誰か来た!?てかうっわ、泣き叫んでた恥ずかしっ!でもちょうどいいや。上手く話せないけど、ここがどこで僕の身体がどうなってるのか教えて貰えるチャンスかもしれない。)
そう思いつき、近付いてくる人影に意識を向け目が覚めたことを伝えようとしたところ、身体を持ち上げられた。
「アーアァーーアウゥ!!?」(あのすみません、目が覚めたのですぅぅ!!?)
目覚めてから2度目となる予想外の驚き。
変な叫び声になってしまったのも仕方ないと思う。
「………。」(うっそ!いくら痩せ型とはいえ、僕の体重60はあるんですけど!?てかでっかいなこの人!!)
あまりの驚きに声も出なくなった。
すると、驚き固まっている僕を不思議に思ったのか話しかけてきた巨人。
「∟?φτΓэ?」
(しかも日本語じゃねぇーーー!!!)
驚きすぎたせいか、僕はとうとう意識を失った。
まもなく陽が沈むのだろう。
窓から入ってくる夕陽で部屋の中が茜色に染まっている……ような気がする。
(だって目がほとんど見えないんだもん。あ、僕、赤ちゃんっす、あと転生幼児っす。)
某ゾンビ漫画のセリフをアレンジしつつ、僕のすぐ横にあるぬいぐるみ?(竜の探索風スライム?)に見えなくもない物体に再び目覚めてから至った結論を報告をする。
(………1人寂しくて暇だからって何してんだろう…。)
やってから後悔したが、概ねそういう結論に至ったのは事実だ。
まあ、最近(鈴原翔として)の趣味が小説投稿サイトでの読書であり、特に異世界転移・転生ものを読んでいたからこそ気付けたのだが…。
もちろんそういうものはフィクションであり、現実に起こり得ないからこそ楽しめるものだ。
特に転移ものならまだしも、転生ものは死をきっかけにして女神に会い、チートと言われる能力を手に入れ異世界で無双する…というのが男の子としての冒険心?に強く反応するのだが…。
ともかく、女神に会う云々は無かったが事故死によって転生し新たな命を得たのは間違いない事実であり、現に僕の状態が生まれて間もない赤ちゃんのそれだ。
首が動かないのは据わってないからで、目が開かないのもそうだ。
手足も鈴原翔として動かしていたのに比べると上手く動かせないのにも当てはまる。
確かこれらが全て解決するのに3、4ヶ月ほどかかると聞いたことがあるような気がするが……今考えても仕方がないので放置することにした。
せっかく生まれ変わったんだ。
今の自分に出来ることを精一杯して、将来困らないように…(あと女性に裏切られないように)生きよう!と小さな心に誓った。
まあ、まずは1人で動き回れるようになるまでにコミュニケーションを取る為、先程の巨人(柔らかかったので多分ママン)の言葉を聞いて覚えようと思う。
……あ………英語苦手だったの思い出した(絶望)。
はい、第2話です。
ちゃんと続けますよ!
高校生の時、某ブログサイトで毎日更新してたのに比べると遅くなりますが、そこはご容赦を。(読んでる人がいるかわかりませんが)
まあ、いなくても自己満で書き始めたものですし、気にしないのですが…。
今回は前回よりも短くなってしまいましたが、修正しながら頑張っていきたいと思います。
そして次話はもう少し長く書けるように努力いたします。
12月13日
※1話の追加に続き、美希の件を追加しました。
※一部、漢字の表記を変更しました。(4ヵ月→4ヶ月)
12月14日
※点線以前の部分が翔視点になっていたので修正しました。