第八話 旅行準備編
試験的に正午投稿としてみました。掴み次第ではこのままの時間で行きます。
今回の話は後半エッチい話となっております。
朝日を感じ意識が覚醒し始めた。いつもならここからさらにまどろみの中でゆっくりするところなのだが、今日は状況が違った。
腰のあたりに急に重みを感じたため重たいまぶたを何事かと開く。そして、目の前に迫るものを両手でつかまえた。ミシェルが唇を突き出して迫ってきていたのである。
「お前、朝っぱらからずいぶんと盛んじゃないか……!」
「だ、だって! 奪われたままじゃ納得いかないんだもん!」
あの日、俺がノアに唇を奪われて以来ミシェルはずっとこんな調子だった。ノアのあれは挨拶みたいなものだと説明しても全く聞こうとせず、最初は単純に要求を言って来るだけであったが俺が頷かないのが分かると寝込みを襲うなどの暴挙に出始めたのであった。これで三回目である。俺のロリコンの自覚もあって、そろそろ色々な所が我慢の限界になろうとしていた。
不機嫌なミシェルを引き連れて俺たちは一階のリビングまで足を運んだ。朝食の時間まではまだ時間は早いが、朝刊を読むにはちょうどいいと思ったからである。リビングにたどり着くとノアがエプロン姿で皿を並べていた。
「あ、おはようございます」
そう言うとノアは眠そうなミシェルに駆け寄り、軽いキスをほっぺにいつものようにした。そして俺に屈むように手招きをして俺にも頬にあいさつ代わりのキスをするのだった。ちなみにメイドさんも毎朝されているらしくとてもとても、それはとてもうれしそうにしていた。
彼女にとっては挨拶と同意義なのでこれは拒む必要はない。気を張っていないと心臓が張り裂けそうにはなるが。
「……コウタ、私も朝のキッスをしてもいだろうか?」
「お前のは挨拶にならんだろ。ダメだ」
ミシェルは膨れた。
俺は自分のいつも座っているソファーに座ると目の前にいつもメイドさんが用意してくれている朝刊を開いた。
「何々……」
どうもここ最近、新聞には明るいニュースが乗っていない。殺人事件や戦後処理の事、さらには領土問題からの内戦など血生臭いニュースばかりが新聞の大半を占めていた。
しかし、そんな中に何とも面白そうな話題のニュースが記載されていた。
「……山の家が今年も営業開始、今年の目玉は山花火と川流し……、ほう」
山の家というのは俺も聞いたことがある旅亭である。何でも山の上にありたどり着くためには登山するしかない。しかしたどり着ければ極上の料理とサービスで心も体も癒されるという一年の限られた期間しか営業しない旅亭である。
「いいなここ」
「どうしたんだコウタ?」
「ミシェル、ここ行きたくないか?」
「……行く! 行きたい!」
ミシェルは山の家を見るなり瞳を輝かせた。山の家の話題は軍にいた時でもよく話題になっており、戦後の療養地としてよく話題に上がっていたところである。そのためミシェルも噂ながらにここの話題は聞いたことがあるのであった。
「ノアはどうだ?」
俺はノアにも新聞の記事を見せる。すると一瞬こちらも瞳に光が宿ったがすぐに目をギュッと閉じ、苦しそうに言った。
「私は、その、これ以上お世話になるわけにはいかないので……」
「そんなこと言うなよノア。俺はお前がいかないって言うならこの話を無しにするぞ。な、ミシェル」
「そうだぞ。私はすごく行きたいのにノアのせいで行けなくなってしまうなんて、一生恨むからな!」
俺たち二人の連携にノアは困惑していた。そして、前髪をクルクルしながら何かと葛藤した末に答えが出たのか、俺の服の袖をキュッと控えめにつかんだ。
「私も、行きたいです……」
「よし、決まりだな。メイドさんはどうせ行くって言うだろうし、確認するまでもないな」
「ちょっと、聞き捨てなりませんね」
メイドさんがティーポットとカップを持ってきた。そして俺の前に紅茶が注がれる。
「じゃあ行かないの?」
「当然行きます。決まってるではないですか。聞かなくても分かりますよね」
「ほれ見ろ」
俺は得意げに紅茶に口をつけた。そしてそれを思わず噴き出した。なんかしょっぱいというか、塩が入っているのだ。
メイドさんの方を見るとあっかんべーをしていた。確信犯であった。
「こ、この野郎……」
~~
電話で山の家に連絡を取ってみたところ、あっさりと予約が取れた。しかし、ここで満足してはいけない。山の家宿泊はここからが大変なのである。
俺はすぐにミシェルとノアを引き連れていつもの女性服店に向かった。そしてもう顔なじみとなった店員さんに山の家に行くからそれなりの装備を見繕ってほしいという旨を伝える。
店員さんも今回は真剣な表情で店の在庫を漁りに店の奥に入って行った。
「……あの、山の家に行くのにお洋服が必要なのですか?」
ノアの素朴な質問に俺は苦笑いを浮かべた。
「ノアは山の家が標高何メートルにあるか知ってるか?」
「……ごめんなさい。知りません」
「標高二千メートルだ。この高さに昇ろうとしたら、相応の装備が必要だ。登山のな」
予約をしていたとしても普通のお金持ちではたどり着くこともできない。なぜならというか、考えるまでもなくそれは登山の過酷さである。山のふもとには山の家まで運んでくれる運び屋がいるのだが数が少なく一度に運べる人数も少ない。したがって普通は自分の足で登ることになるのだが、山を舐めた装備で行くと即刻登山中に脱落することになる。
「なあコウタ。お金は大丈夫なのか?」
「心配には及ばんよ。今回は俺の自腹だ。使い道もないからいい機会だ」
今回はそこそこ出費の出る旅行となるので軍から出ている予算にはあまり手を付けず、少女二人分は自分で支払うことにしたのである。ちなみにメイドさんは完全自腹である。それでも行きたいと本人が願い出たので問題ないだろう。
そして少し待っていると程なくして大量に装備を抱えた店員さんが戻ってきた。もちろんすべて購入した。
~~
毎日塗り薬を顔の痣にぷにぷにとすり込んでいるおかげか、ノアの痣はほとんど残ってはおらず俺とメイドさんは心底安堵した。後になったらどうしようかと二人で心配したものである。
更にメイドさん曰く体の方にも痣が見受けられたらしく、そちらは全部メイドさんに任せた。まったく、この痣をつけたやつは後で見つけたらガソリンでも注射してやりたい気分である。冗談ではあるが。
「あの、ミツイさん。外のお花に水やり終わりました」
てこてことノアが駆け寄ってくる。俺は思わず抱きしめたい衝動に駆られるが、まだノアは対人恐怖症のような物が残っているので自重する。
「そうか。ならミシェルと遊んできな」
「あ、その、ちょっといいですか?」
ノアは何か言いたそうな表情でこちらを見つめていた。
「なんだ?」
彼女の方から何かを言おうとしてくるのは大変珍しいので俺はしゃがんでノアと目線を合わせ、聞きの体勢に入る。ノアは少しもじもじしたかと思うと意を決したように顔をあげた。
「お、お花のお世話を、旅行の間に誰かほかの人に頼みたいのですが……」
「もう頼んでるから気にしなくてもいいぞ」
「え、あ、そうなんですか? ありがとうございます……」
ノアの問題はすぐに解決した。しかし、彼女はまだ何かを言いたそうな表情をしていた。
「……俺はゆっくり待ってるから、言いたくなったらいいな」
俺の言葉にノアは頷く。そして、少し沈黙が流れた後ノアは口を開いた。
「胸のあたりが、最近擦れて痛いんです……」
……。
「う、うん。俺にするような話ではないな。メイドさんを呼ぶか」
「待ってください! 真剣な話なんです!」
余りの剣幕に俺は頷いた。ノアは再び話し始める。
「なんか、胸のあたりが擦れるんです。歩くたびに。触ってみてくれませんか?」
何を言っているのだこのがきんちょ、と言ってやろうと思ったが言葉が出なかった。口がパクパクとだけ動いていた。
そうしているうちにノアは俺の腕を掴んで自分の胸の方に持って行こうとした。流石にまずいと思い抵抗しようとしたが、流石は強化人間、力では敵わなかった。
俺は次の瞬間、予想外のぷにっとした感触に理性を吹っ飛ばされそうになる。
意外に大きいのだ。少なくとも揉めるくらい。しかも指を動かすとちょっと固いぽっちのような物も感じられる。
脳みそが蒸発しそうになった。このままいけば襲ってしまうかもしれない、そう感じるほどに感情の高ぶりを感じた。
おまけにノアは何かを期待するように俺の右手を包み込みながら見つめてくるのだ。正直たまらない。
と、そこで俺は急に冷静になり気が付いた。何に気が付いたかというと胸が擦れる理由である。
それはこの子の発育がよろしすぎるというのと、この子にある下着を買い与えていないというのが原因なのだろう。
「……山の家に行く前に気が付けてよかった」
山の家に行く途中なんかに言われたらどうしようもなかったし、炎症なんかになられても困ったことになったから本当に気が付けてよかったと俺は安堵した。
その日、俺はノアを連れて行きつけの女性服店に向かうのだった。ノアはなぜか残念そうな表情をしていたが、深く考えると俺の理性が持たないので何も考えないことにした。
クラスに一人はいる発育のいい女子って感じの設定です。