最終話 問題だらけのロリっ子に愛され完結する物語
最終話です。
まぶたが重い。
俺は眠っているのか?
いや、それとも気を失っているのか?
俺はゆっくりと鉛のようなまぶたを開け、あたりを見渡す。
見慣れた光景、瓦礫と炎が支配する町並み……。
――そうだ。俺は戦っていた。裏切り者と、侵略者と。
立ち上がらなければいけない。そして早くこの瓦礫と大火を生み出した兵器共を皆殺しにしなければいけない。
「ラビー?」
俺は頼れるパートナーの姿を探した。そして、すぐ隣で眠っているのに気が付いた。首筋からもう助からないほどの流血を流している以外は、穏やかな表情だった。
「……こ、う、た……。のう、りょくを」
青くなった唇から小さいつぶやきが漏れた。
俺は何も言わずにその口をふさいだ。たぶん、これが最後になる。
全身に熱が巡り、一時的にだが能力者となった。
ラビーは薄く笑うと、それっきり動かなくなった。
「……すまん」
俺は立ち上がる。そして、サブマシンガンの状態を確認した。壊れてはいないようだ。
その瞬間、後ろの方から瓦礫を踏みしめる音が鳴り俺はサブマシンガンを構えて後ろを振り返った。
「ミシェル……!」
醜悪な人間兵器の姿がそこにあった。背中から赤いマグマのような触手を生やし、その触手の先には多くの同胞の遺体が突き刺さっていた。
「見つけた。もう逃がさない。お前だけは、私が殺す。そこに転がるゴミに随分と邪魔をされたけど、もう私を阻むものはない」
俺は歯を噛みしめ、怒りで震える銃口を悪魔へと向ける。
「――お前、泣いてるのか?」
しかし、俺は銃口を下した。
どういうわけか、ミシェルが涙を流していたからである。
「……え? そんなわけない。泣いてなんて……、あれ? どうして泣いてるの?」
能力の使い過ぎで虚ろになっているミシェルの目に涙が流れていた。俺はそれを見て、毒気を抜かれたようにサブマシンガンを完全に手から放した。自殺行為だと分かっていても、なぜかもう武器を持っていてはいけないと思ってしまった。
「……ねえ、コウタ? 私夢を見たんだ。私とコウタは、どこか知らない町で好き勝手に暮らして、お互いに愛し合って、どんな困難にも立ち向かていくんだよ?」
「……ああ。……それで、どうなるんだ?」
「私はね、あれが欲しいこれが欲しいって駄々をこねて、コウタが嫌々私のわがままを聞いてくれるの。可笑しいよね? こんな夢、今更見るなんて」
「……そう、だな……」
ミシェルは血がこびりついて黒くなった自分の手を見た。
「たくさん殺したよ。嫌だとか言っていながら、本当は楽しかった。どうしてだと思う?」
「……どうしてだ?」
「コウタが、認めてくれるから……。たくさん殺せば、よくやったって頭を撫でてくれるから……」
俺達は何もかも間違っていた。そうするしかない世界だった。他人を殺す以外に生きる術も持ち合わせてはいなかった。だから俺がミシェルをほめることが出来たのは、誰かを殺した時だけ。それがあの子に歪みを作ってしまった。
「……ねえ、褒めて? たくさん、殺したよ?」
ミシェルは背中の触手を消し、俺の方におぼつかない足取りで歩いてくる。その後ろでは無数の死体が音を上げて積み重なっていった。
受け入れて、いいのか?
今なら簡単に殺せる。
あの子の期待や希望を摘み取れば、あの子は死ぬ。
そうだ。
そうすればいい。
――そう思った瞬間、どういうわけかその先の未来が見えた気がした――
俺を困惑気味な表情で見つめ、裏切られたショックと怒りで口を震わせ、死の瞬間まで俺を見つめ続ける……。そんな光景が見えた気が、した。
――そして同時に夢を見た――
それは温かい夢。俺とミシェルは楽しそうに暮らしていた。そんな、あるはずのない夢物語。
「コウタ?」
気が付けば、俺はミシェルを抱きしめていた。ミシェルは疲れ切った表情で俺の奇行を困惑気味に受け止めていた。
俺は今おかしくなっている。ありもしない夢に魅せられている。
……でも、それでもいいと思えた。
もう疲れた。
「ミシェル、ごめんな? 今まで辛かったよな……」
「……うん」
「俺もさ、夢を見たんだ。幸せな夢。お前との夢の物語」
「うん」
俺は柄にもなく涙を流していた。バカバカしい。戦争のし過ぎで頭がイカれたのだろう。
「お前は、どうしたい? 俺としては――」
「コウタと一緒にいたい」
「……そうか。なら、やらなけれいけないことがあるな」
「やらなければいけないこと?」
「ああ、俺達をこんな目に合わせた奴がいる。そいつをぶっ倒すんだ」
俺はミシェルのぼさぼさになった髪を梳かしながら微笑んだ。心が、軽くなった気がした。
「一緒に、戦ってくれるか? たぶん辛いことになると思うけど……」
「……」
ミシェルは無言だったが、大きく分かりやすく頷いた。
「決まりだな」
俺は立ち上がった。そしてミシェルの小さな手を掴んで歩き始めた。
「なあ、コウタ?」
「ん?」
俺はミシェルの方を向いた。
「私やっぱりコウタが好きだ。大好きだ! 世界一……」
初めて聞いたミシェルの好意。俺は面食らってしまい目を見開いた。ミシェルは先ほどまでの青ざめた頬が赤くなっており、俺の手を握る強さも強くなっていた。
「……ああ、俺もだ」
瓦礫と炎の町をすすみながら、俺は今まで生きた中で一番の笑顔になった。
この物語はミツイコウタの物語です。そして、フードの男が裏の主人公……、というかこいつが主人公と言っても過言ではないですね。タイトル思いついた時もこの別世界のミツイコウタが幸せになる物語って感じで考えていたので。
さて、もし通しで読んで下さった人がいるのならありがとうと言いたいです。正直実習入ったときはエタるなと確信していましたが、ブックマークがあんまり減っていなくてやる気も継続、何とか終わらせることが出来ました。
評価を貰えないとダメになる卑しい作者であるのでエタる率は高いです。そんな私が心折れずにやってこれたのも読んで下さった方々のおかげです。
この作品を見ていただいた全ての方に、熱い御礼を申し上げてこの作品、完結とさせていただきます。
ありがとうございました!




