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第二十一話 殺し屋との共闘

あと数話で決着をつけます。三十部は行きません。

「お前は何者なんだ?」


「その問いかけに応じることは出来ない」


 フードの男はそう言うとカツカツとこちらに近づいてきた。初対面の時はあれほど感じた威圧感を感じない。恐らく本当に敵意はないのだろう。


「お兄ちゃん。まさかこいつと組むとか言わないでしょうね?」


「ラビーは反対か?」


「ラビーだけじゃありません。私も反対ですよ。コウタさん」


 ラビーとノアはフードの男の方を見ると警戒した風に後ろに下がった。


「ま、確かにお前たちが警戒している通り信用できるかは分からないが、しかし今は少しでも手が欲しい。それこそ、この戦いが終わったら殺し合うことになるようなやつでもな」


「……お兄ちゃん、殺すと決めたら見境ないのね」


「まあな。もしも悪魔があのクソ野郎と敵対したら、俺は悪魔に好意的なキャンペーンを行う自信がある」


 将来の敵になる可能性も敵のスパイの可能性も十分にあるが、それを判断している時間はほとんどないだろう。

 結局のところ信じるしかないのだ。

 それに戦争で手段を選ぶ気はない。使えるものはすべて使い、持てる力の限りを尽くして殺しつくすだけの話だ。


「で、お前は俺たちに何をもたらせる? 何を知っている?」


「……俺はあの男が何をエネルギーとして能力を使っているのか、この異変の原因とこの世界の仕組み、そしてラビーニャの能力について知識を持っている」


「は? なんであんたが私の情報を持っているの? 嘘は休み休みにしなさい」


 ラビーは険悪な表情でフードの男を睨むが、男はそれをスルーする。


「吸血鬼の基礎知識はあるな? 血を吸わなければ能力を使えない。異性の血以外吸えない。能力は通常の人間兵器よりも特異で強力……とまあ、この辺りがすべての吸血鬼についての知識だが、彼女は固有能力でキスした相手に自分の能力を一回分だけコピーさせることが出来るという能力がある」


「!? な、なんでそれを!?」


 ラビーの顔色が急に変わった。どうやら当たりのようである。俺はフードの男に再び目を戻した。


「能力を受け渡された人はその力を使うと体内の血液を消耗するが、能力の持ち主と変わらない性能の能力が使えるようになる。あっているか?」


「……ええ、そうね。なぜ知ってるの? これはアドルフですら知らない事実なのだけれど」


「俺にもいろいろあってな。……で、どうだ? 少しは真剣に聞く気になったか、俺の話をな」


「……ぜひとも、聞かせてもらうけど……」


 ラビーは前髪を指でいじりながらフードの男を冷たい目で見つめる。


「どこで知ったか、後できっちりと教えてもらう。話の出どころは潰しておかないといけないしね」


「それはそれは、恐ろしい話だ」


 ラビーは不機嫌そうに顔をそむける。よっぽど知られるのが嫌な情報だったのだろう。


「で、続きいいか? アドルフは何をエネルギーとして悪意の固体を使用しているんだ?」


「アドルフのいた場所にデカい湖があっただろう。そこに子供が浮いていたはずだ。あれが奴にエネルギーを受け渡している。おおよそ三日後にはエネルギーが尽き始め、一週間ほどで奴は消滅する。が、その三日後には世界に起こっている異変が人類の存亡に致命的な傷を残すことになる」


「致命的な傷?」


「そう。奴の目指す人類同士の闘争による滅亡を達成するためのパーツが、東の大国ボリシェで誕生する」


「……ボリシェで? 何が起こるんだ?」


「革命さ。国がただでさえ不安定なあの国がこの異変に耐えられるわけもなく、国民の不満が爆発してな」


「信じられると思うか? そんな話」


「信じる必要はない。が、起こりうることだ。まあ深く考える必要はない。三日以内にアドルフを殺せばいいだけのことだ」


 フードの男はそう言っておどけた。


「この異変はあのアドルフがこの世界の構造にメスを入れた結果起こったものだからな。あいつを倒せばすべて解決だ」


「構造か……。それはもしかして、おとぎ話の星の時計盤のことか? いや、ないか……。あれは空想の話だからな」


「その、まさかなんだ。アドルフが手を加えたのはその時計盤だよ」


 星の時計盤と言うのはアメストールやほかの国で古くから語り継がれているおとぎ話である。この世界の中心には時計盤が埋め込まれていてこの世界の進む時間や空間を調整しており、そしてその時計盤からあふれる力を宿すと超人的な力を引き出せるというものである。アメストールではそれを主題にした英雄譚が人気を博している。


「アドルフはどうやって人間兵器のような化け物を生み出したと思っているんだ? どうして人間兵器は超常的な力を持っている? それはもちろん、あの男がおとぎの時計盤を見つけ出したからに違いない」


「……にわかに信じがたいが、確かに人間兵器の力はおとぎ話の英雄に似ているな……。この異変もあいつが時計盤をいじったから起こっているのか?」


「そうだな」


 フードの男は頷く。嘘を言っているかもしれない。しかし、少なくとも信憑性はある。辻褄も合う。この男が信用に値するかどうかが分からない以外はこの現状を説明する最も説得力のあるものだと感じた。

 星の時計盤についても、今の異変がすでにまともでない以上存在するかもしれないと思うのが妥当だろう。


「……それで、お前としてはこれからどうしたいと考えている?」


 俺はフードの男に問いかけた。そのどうするかが決まっているから俺達に協力を求めたと考えたからだ。まだ見当もついていなかった俺たちの意見よりはずっと当てになるはずである。


「アドルフとの早期決着と星の時計盤の修繕を行いたい。出来れば三日以内に、だ」


「……」


 無理だと俺は思った。アドルフは勝とうと思って勝てる相手ではない。あれは入念に準備してまるで城を、いや、要塞を攻略するほどの手間をかけて殺しきれる化け物だ。

 だがフードの男が考えているのはほぼ個人戦闘での勝利である。あの化け物に勝つには十人や二十人の死では足りないというのに、である。


「勝機はある。アドルフは全力を出せない。お前たちが逃げられたのもそれが理由だ」


「ほ、本当か!? 何を根拠にそれが分かるんだ?」


「簡単な話だ。お前は精密機械を組み立てる工房でネズミが入って来たとして、爆弾を使うか? あの場所に星の時計盤があるんだよ」


「言いたいことは分かったがたとえがおかしい。ネズミ退治に爆弾は使わねーよ」


「で、どうする? 出来れば俺は今すぐにでもアドルフ討伐に向かいたいが」


「……協力する。が、その前に名前教えろ」


 俺は消去法でフードの男案に乗ることにした。現状ではこれ以外に言い策が思いつかないのである。

 と、その時俺はフードの男の名前を知らないことに気が付いたので名前を聞くことにした。

 しかし帰って来たのは沈黙であった。


「……」


「どうした? まさか恥ずかしい名前だからな乗りたくないとか……」


「違う。……違うが名乗れない。殺し屋とでも呼んでくれ」


 殺し屋はそう言うと後ろを向いて部屋のほうに歩いて行ってしまった。


「……本当に何者だ? あいつ」


ソ連大好き共産趣味者です。本当ならもっと革命の部分を掘り下げてレーニンみたいなキャラとか出したかったけど、それは後の作品に取っておきますけど

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