第十八話 加勢者
実習が終わり筆記再開です。
ストーリーは巻きで進めていくので文章は雑になるかもしれません。
「さて、君は化け物を殺すために鍛えられたと見えるが果たして私に通用するかな?」
「お前も能力持ちなんだろ? なら人間兵器の弱点はそのまま持っているはずだ」
俺は拳銃を構えながら片手にナイフを握りしめた。大体の人間兵器相手ならこの装備で戦えることは大戦で証明されている。実際に俺もこの装備だけで人間兵器と呼ばれた子供たちと殺し合ったこともある。
しかし、老人は動揺するどころか顎をさすってにやりと微笑んだ。
「能力持ち……か。その表現はあまり適切ではないな」
「なに?」
老人はどす黒い物質を放出すると、それを使い水面に浮かぶ子供の遺体を引っ張り上げた。
「これは人の身に力を植え付けた物。いわゆる兵器というものだが……、私のこれは現象に近い」
「……お前がどんな存在かはどうでもいい……。その子達を、物みたいに扱ってんじゃねえ!」
俺は老人の言動に腹が沸き立つようであった。まるで水に浮かぶボートのおもちゃを拾い上げる子供の様に乱雑に遺体を掴み上げた老人に俺は我慢ならず一発弾丸をぶち込んだ。そして、それは直撃した。間違いなく。
「……雲をつかむようなものだぞ。あるいは空気に彫刻を彫ろうとしていると言った感じか?」
だが、老人は平然としていた。
俺は思わず息をのんだ。今までに出会った人間兵器と呼ばれる子供たちにもこのように再生能力を持った奴はいた。しかしここまで撃ちこまれても平然としている人間兵器はいなかった。
「なぜ、そこまで平気で……」
「当然だね。君は今雲をつかむためにもがいている状態だ。だが、いつまで経っても捕まるわけがない」
「お前は自分を現象のような物だと言ったな。つまりお前は自分が雲のような存在だと言いたいのか?」
「それが近いな。私はこの子らに力を植え付けた張本人だが、私はこの子供たちとは違う工程を経て力を得ている」
「やけに、丁寧に教えてくれるんだな」
「まあ、久しぶりの客人だからな。それに私はおしゃべりなんだ」
老人は余裕綽々に語り始めた。その内容は自分の能力とその狂った特性についてであった。
……結論から言うと、あの老人はもう人間ではないという事である。
「私は悪意の固体という能力そのものだ」
「そのもの?」
「ああ、そこの子供たちは能力を外付けしただけだが、私は体に能力が馴染むように肉体を能力、悪意の固体に変換するという改造を行っている」
「体を、作り変えただと!?」
「ああ、よってこの君が私と認識しているこの体は、触れれば霧散する悪意の固体の粒子という事になる」
俺は今のままでは絶対に敵わないことを悟った。というよりも、話にならない。攻撃を当てるどころか触る事すら出来ないというのはそういう事であった。ミシェルやノアに大見栄切った手前だが早々に俺は二人を連れて逃走する算段を頭にめぐらし始めた。
「……そんなに怯えることもないだろうに。私は無敵と言うわけではない。殴る蹴るではダメと言うだけのこと、ほかにもやりようはあるだろう。もっとも、いまその別の手段があるかは別の話だがね」
老人は嘲笑い挑発した。俺はグッと歯を噛みしめるしかない。確かに事前に情報があれば戦えないこともなかった。だが少なくとも今は戦えない。
「せめて、二人を逃がす時間だけは稼がねば……」
何としても、二人は生かさねばならない。俺個人としてもそうだし、あの老人の情報を外部に持ち出す必要もある。俺はここで死ぬかもしれないが、少なくとも価値のある死になるだろう。なぜならばあの二人が逃げることでこの狂人を打倒するチャンスを得られるからだ。
「ほう、一軍人、一個人として人類側の勝利に賭けるか。それもいいだろう」
「損な役回りだけどな。ま、俺一人で国を救えるなら名誉なことだろう。ミシェル、ノア! 逃げろ!」
俺は二人を逃がすためにこの身を盾にする。昔とやることは変わらない。なぜなら、俺は軍人だからだ。
後ろで幼女二人が何か言った気がした。しかし、今の俺はそんなことには構わずに手に握る武器を老人に突き立て――。
「……死ぬのは勝手だけど無駄死にになるよ」
――ようとした瞬間何者かによって動きを封じられた。
老人の方も驚いたように目を見開いていた。
後ろに気配がする。誰かが俺の背中に立っているのだ。
老人はその人物の姿を確認すると嬉しそうな笑みを浮かべて体からどす黒い物質を放出した。
「ちょっ!? 俺動けないだけど!?」
なぜか金縛りに合いピンチに陥っていた。
が、気が付くとなぜか目の前にミシェルの顔があった。いきなりあらわれたのだ。
「え?」
まるで瞬間移動したかのような気分だった。ミシェルやノアもパチパチと瞬きをしたり目を擦ったりしていた。
「何惚けてるの。対化け物殺しの専門家でしょ? なら能力で驚いてんじゃないの」
俺はどこかで聞いたことのあるような声の方を向いた。
「お、お前は!? いつぞやの吸血鬼か?」
「そ、久しぶりねお兄ちゃん……って、そんなに時間経ってないか。あと、ラビーって呼んでっていったよね?」
声の主、山頂の茶屋の所で死にかけていた吸血鬼ラビーニャがなぜか俺の首根っこを掴んでいた。
「急で話もつかめていないと思うけど、加勢したげる。あいつには借りがあるんだよね」
ラビーはそう言うと牙をむき出しにしてややドスの効いた声を出した。
どうやらあの老人とラビーの間にはただならぬ因縁が……、と言うか人間兵器ならば全員因縁があるか。
「……なんだかよく分からないが――」
――とりあえず何とかなるかもしれないと俺はひとまず安堵した。
読んでくださっていた少数の読者さんは多分もういないのでまた一からの気持ちで書いていくつもりです。




