第7話 魔力測定
ようやく逆ハータグ回収です。これからどんどん増えていきます。
いきなり話は飛ぶが、六年後、クリスタ13歳。いよいよ王立魔法学校に入学する歳になった。といっても、全ての生徒が13歳きっかりで入学するわけではない。13歳からという制限はあるが、何歳までという上限はない。そのため、様々な年齢の生徒が在学している。
魔法学校に入学する前に魔力測定というものがある。これは、名前の通り魔力を測定し、魔法学校に入学できる条件を満たしているか判断するテストのようなものだ。
他に筆記試験もあるが、これは既に済ませた。もちろん合格。
魔力測定を受けるため、クリスタは魔法都市ゴスラーに来ていた。
魔法都市ゴスラーは全21地区からなる巨大な都市であり、ローゼン王国の北の方の海に浮かんでいる島だ。周りが海で囲まれているため敵の侵入の心配はないが、潜入が難しい。都市の中心にある大聖堂を始め、王立魔法学校や冒険者ギルド、ダンジョンなど様々なものがあり、人口も多く、王都とはまた違った魅力がある都市でもある。
クリスタは現在第5区に来ている。5区は王立魔法学校など教育機関が集中している地区だ。
学校の敷地内に足を踏み入れ、測定会場へ向かう。学校の敷地はただただ広く、会場への道はきちんと標識によって分かるようになっているのでないが、地図がないと迷いそうだ。
係員の誘導に従って会場の建物の中に入る。建物は学校だというのにやたらと豪華だった。
自分の番になり、部屋の中に入る。部屋の中心には透明で綺麗な水晶と水晶が置いてある台があり、試験官が数人いた。
つかつかと台まで歩いて行き、事前にあった説明通りに水晶の上に手をかざした。数秒経つと水晶に文字が浮かび上がった。
【Elektrizität C】
「魔法は電気系統、魔力量はCです。合格おめでとうございます。」
「ありがとうございます。よろしくお願いします。」
軽く頭を下げてから退出した。
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魔力を持つ者は、通常詠唱や魔法陣を使わなくても自由に発動できる自分だけの魔法を持っている。それは、ヴィントのマスターのような風、火、水などありふれた魔法から珍しい魔法まである。日本の苗字で例えたら佐藤さんや山田さん、田中さんなど絶対数が多い苗字と、剛力さんや能年さんなど非常に珍しい苗字もある、といった感じだ。普通は一人につき一つだが、稀に二つ以上持っている人もいる。
実は、クリスタはもう自分だけの魔法を使える。というのも、ある時を境に突然使えるようになった。魔力を持つ者はみんなそんな感じだ。
魔力量Cというのは、その名の通り個人の魔力総量のことで、魔力が多い順にS~Fだ。基準としてC,Dあたりが平均で、A,Bは多い方、Eは少ない方、Fはカスだ。ちなみにSは伝説級だ。魔力は人にもよるが、成長と共に伸びるものといわれている。あとは本人の努力次第といえる。
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「お姉様!学校の制服が届きましたわ!」
王都にあるヴィッテル公爵家の屋敷にて、突然クリスタの部屋の中に箱を持ったクリスタの妹、クローラが現れた。
「こら!いきなり空間移動して来るなって何度も言ってるでしょうが!」
声を上げて怒りを露わにしたのは、この部屋の主のクリスタだ。どうやら彼女は常習犯らしく、反省する様子はない。
クローラの魔法は少し珍しく空間系統の魔法だ。今のように空間移動(瞬間移動)したり、応用性があるので他にも色々できる。
「てへっ。そんなことより、ようやく制服が届きましたわ! さあ、ぜひ来てみてくださいまし!」
クローラは勝手に箱を開け、中身を取り出した。
「別にいいわよ。どうせ後で着るんだし」
「まあ、そんなこと言わずに試しに着てみてくださいまし。もし何かの手違いでサイズが合わなかったらどうするのですか? お姉様だけ変に目立ちますわよ」
(ま、手違いなんてあるわけないけど。)
クローラはただ大好きな姉の制服姿を見たいだけだった。
「うーん、それも困るわね。分かったわ、少し着てみる。少しだけよ」
クリスタはクローラから制服を受け取った。
「着替えるから早く出て行きなさいよ」
「えー、姉妹なんだからよいではありませんか。あ、お着替え手伝って差し上げましょう!」
「一人で出来るからいらないわよ!それに、あんたはなんか目線が気持ち悪いのよ!」
そう、何を隠そうクローラはお姉様をこよなく愛する、変態なのだ。
「お姉様ひどい…」
クローラは泣く真似をしながら消えた。空間を越えて物理的に。
(うひひ、お姉様の制服姿楽しみですわ。王立魔法学校の制服は可愛いと評判ですのよ)
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数分後、クローラは再び部屋に入り、念願のクリスタの制服姿を拝んだ。
上はセーラー服で白地になっており、襟の部分とネクタイが赤く、胸の逆三角形の部分に学校の紋章の刺繍が施されている。裏の両端にもある。
下は、赤いミニスカートだ。
真新しい制服に身を包み、どう?と微笑みながら聞くクリスタにクローラの時が止まった。
「お、お姉様!学校になんか行ってはいけませんわ!お姉様はこの屋敷の中で、私とずっと過ごしていれば良いのです!そんな格好、襲ってくださいと言ってるようなものですわ!」
時が動くと同時にクローラは一気にまくし立てた。鼻血が出ている。
「そうかしら? まあ、襲ってきたら返り討ちにすればいいわ。」
「お姉様…」
自信たっぷりに言い切るクリスタにクローラはうっとりした。
「でも、やっぱり私は心配ですわ。お姉様のあまりの美しさに命知らずな不埒な者が現れないか…。ああ、お姉様…。」
ここはやはり私が空間移動で、とかぶつぶつ言ってるクローラ。
「あー、それはやめといたほうがいいかも。魔法に関しては学校のセキュリティも甘くないと思うし」
「そうでしたわ…。ああ、残念…。」
(一年、たったの一年間の辛抱ですのよ!一年経ったらお姉様と一緒に学校に通えるわ!…ああ、されど一年。お姉様と離れ離れなんて耐えられないわ…)
「お姉様ぁ…」
クローラは急に寂しくなりクリスタに抱き着いた。
(ぐへへ、お姉様あったかい。)
(クローラそこ代われ!)
「ちょっと、いきなりどうしたのよ」
「姉妹のスキンシップですのよ」
仕方なく、クリスタはクローラの抱擁を受け入れた。そして、彼女の頭を撫で続けた。
(だからそこ代われって!)
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入学式前日。大量の荷物と共にクリスタは学校の寮に入った。寮は、事実上身分によって建物が別れていた。クリスタがいるのはもちろん王族・貴族用の高級な寮。部屋が無駄に広く、豪華で、一人部屋だ。寮にメイドさんもついている。寮の中に食堂もあり、メニューもやはり高級だった。
おっと、心の声が…