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公爵令嬢は爆弾使い  作者: マリコ
お見合い編
16/17

第15話 公爵令嬢と第2王子

クリスタは庭に向かって駆けていった。今日は天気も良く、日差しが暖かい。


「デイヴィー」


彼女は彼の姿を見つけ、微笑んだ。


「クリスタ」


彼もまた、彼女の姿を見て嬉しそうに笑った。


整然とした美しい庭を背景に微笑み合う美貌の2人の姿はまるで1枚の絵画のようだ。

彼らはふさふさの芝生の上に腰を下ろした。


「新学期はどうだった?」


「まだ始まったばかりだから分からないけど、悪くないわ」


「そうか。それは良かった」


「うん」


クリスタは彼の方を見て、彼の瞳に光がないことに気がついた。いつもはもっと目を爛々と輝かせ、きらきらしているのに。これはおかしいと思ったクリスタは彼に聞いてみることにした。


「ねぇ、何かあったの? 元気がないわ」


彼はクリスタからの指摘に驚いたような表情をした。


「別に、何もないよ」


「そう? ならいいけど」


やはり、彼は浮かない顔をしていたが、それ以上追求することもしなかった。


彼が芝生の上に寝っ転がった。


「こうして芝生の上で寝てると全てを忘れられて気持ちが良い」


クリスタも彼の真似をして芝生の上に寝っ転がってみた。


「そうね。お天気も良いしとても気持ちいいわ」


2人は秋の日差しが降り注ぐ中、しばらく微睡んでいた。


「クリスタ、もし私がいなくなったらどうする?」


彼は急に真剣な表情になってクリスタに聞いた。彼女は質問の意味を理解すると心臓が鷲掴みにされたかのような痛みを覚えた。


「そんなの、分からない。でもあなたにはいなくなって欲しくない。もしそんなことがあれば、私は一生そうなった原因を許さない」


彼女は彼がいなくなった時を想像して答えた。胸の痛みはまだ治らない。


「でも、どうして? デイヴィーはいなくなるの? 答えて」


クリスタは彼に詰め寄った。


「いや、ただなんとなく聞いてみただけだ。ごめんな、急にこんな変なこと聞いて」


「そう。ならいいわ」


彼女は納得したフリをしつつも納得はしていなかった。


(ダーヴィトがいなくなったら、私…)


彼がしたのは例え話なのに、動機が収まらない。自分はなぜこんなにも動揺しているのか、考えてみれば原因は一つだった。


クリスタはため息をついた。自分はいつからこんなにも彼のことを好きになっていたのだろう。思えば、初めて彼と戦って負けた時から彼に惹かれ始めていた。クリスタは、今まで自分の強さに絶対の自信を持っていた。実際にヴァントやアマーリエにも勝ってきたし、今まで負けたことなどなかった。それを、彼はいとも簡単に崩した。彼の圧倒的な強さを前に自分の自信は矜恃とともに砕け散った。


自分は2年という時を経て成長したなと思った。以前の自分なら結果を受け入れられなかっただろう。しかし、成長した彼女は負けを認め、その上彼の強さに惹かれた。


これが、恋なんだ。クリスタはそう思うと胸が今までにないくらい満たされていくのを感じた。と同時に少しの切なさも覚えた。いずれも今までに感じた事のない感情だった。


「私、あなたのことが好き」


気が付いたら口走っていた。今言っておかないと一生後悔するような気がしたから。


彼は驚きに目を見開いた。


「本当に?」


「うん。だから、もういなくなるとか言わないで」


彼女は抗議の意を滲ませて言うと、彼はなぜか少し笑った。


「ごめん。もう言わないから許して」


しかし、クリスタは頰を膨らませたままだ。そんな彼女の様子を見た彼は予想外の行動に出た。


「…!」


クリスタは、自身の唇が彼に塞がれたことに気付くと目を閉じた。

触れるだけの接吻は実際は秒で終わったが、クリスタには永遠に感じられた。


「クリスタ、結婚しよう」


彼は唐突に言い放った。

クリスタは驚きに大きな瞳を更に見開いた。


「…うん。でも、急すぎるわ」


「もちろん今すぐにとは言わない。まずは婚約して、婚約式を挙げて皆に知らしめて、それから結婚しよう。そうしよう、俺にはクリスタ以外考えられない」


「…嬉しい」


彼女は気がつくと涙を流していて、自分でも驚いた。


(人って、嬉しい時も泣くものなのね)


「クリスタ、君のことは一生私が守るから、私の妻になってほしい」


彼は真剣な表情で、真っ直ぐにクリスタを見つめて言った。彼女は迷うことなく彼に答えた。


「はい」


---


「号外ー!」


大量の新聞を手に持った生徒が声を張り上げ、掲示板の前で新聞を配っている。はじめは興味なさそうに傍観するか、ただ通り過ぎてるだけの生徒たちだったが、やがてニュースの重大さからざわめきは徐々に広まり、人だかりが出来ていった。

大勢の生徒が号外を求めて騒ぐ姿はまるでカオスだ。地面には揉みくちゃにされ、ところどころ破かれている新聞が散乱していた。


〝国境付近で軍事衝突か〟

〝交渉決裂回避できず〟


新聞の見出しにはこういったことが書いてあった。紙面を読んだある者は顔を青ざめさせ、またある者は興奮を抑えきれずにいた。


このビッグニュースは学園都市中を駆け巡り、やがてクリスタの耳にも入ることとなる。

今話題の号外

色々なところで配られているらしいけど、私はまだ貰ったことないですね…


ちなみにデイヴィーはダーヴィトの愛称です

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