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公爵令嬢は爆弾使い  作者: マリコ
入学編
12/17

第11話 遠足

今日は、校外学習、つまり遠足の日である。一年生は皆12区にある の森へ行き、4,5人のグループに別れて与えられたミッションを遂行する。


本日のミッションは三つ。

一つ、ヴィオレット草の採取

二つ、アウランティウムの実の採取

三つ、森の動物のスケッチ


ミッション自体は一年生だし簡単だが、いかに安全にミッションをこなせるかが重要になってくる。森には魔物がいる。奥の方には危険な魔物もいる中、どのようにして安全を確保し、的確にできるかが課題だ。


森に着き、班に別れたはいいが…


「どうして私があなたと同じグループなのかしら」


「それはこっちのセリフよ…」


グループはバランスをみて教師が決めるのだが、何の因果かアマーリエとクリスタが同じになってしまった。他はエレナと知らない一年だった。クリスタにとってはエレナと一緒になったのはいいが、アマーリエとなったことは痛手だった。まるで飴と鞭だ。


「はぁ、まあいいわ、自己紹介しましょう。私はクリスタ・フォン・ヴィッテル、愛称はクリスだけど、クリスタ、クリス、どちらで呼んでも構わないわ。魔法はElektrizitätよ。まぁ、生きて帰れるように頑張りましょう。」


「私はアマーリエ・フォン・ミュラー、ローゼン王国の名門貴族ミュラー侯爵家の娘よ。魔法はfrieren(フリーレン)。このメンバーでやっていけるのかすごく不安ですけれど、決まってしまった以上お互い頑張りましょう。 」


不安ですけれど、の時にちらっとクリスタの方に視線を向けた気がした。


「私はエレナ。エレナと呼んで頂戴。今日は1日頑張りましょう。」


((魔法は…?))


「次は私の番ね!私はアリス・ラゲル、別に何て呼んでもいいわよ。私は剣術派だから魔法はあまり使わないの。今回は不本意ながらこのグループに配置されたけど、まぁ、頑張るわよ」


アリスは赤髪を高いところで二つに結び、吊り上がり気味のグレーの目の美少女だった。言葉通り腰に剣を携えている。


「それでは、全員分の自己紹介も終わったことだし、まずはヴィオレット草を採取しに行きましょう」


アマーリエが皆に声を掛けた。


「まって、皆で行くのは効率が悪いから二手に別れた方がいいわ」


しかし、クリスタが制止する。


「なんであなたの言う事に従わなきゃいけないのよ」


アマーリエが反論する。喧嘩が勃発しそうな雰囲気だ。エレナとアリスは何も言わずただ状況を見ていた。


「二手に別れたらお互い顔を見なくてすむわ」


「それはいい案ね。では、やはりそうしましょう。皆は?」


お互い顔を見なくてすむ、というメリットにアマーリエはすんなりと納得した。


「賛成よ」

「私も賛成」


「決まりね。私はエレナと組むから、あなたたちは草と実、どっちやりたい?」


「そうね、では私たちはヴィオレット草を採取しますわ。アリス・ラゲルさんはそれでよろしくて?」


「うん。それと、アリスでいいわよ。」


「じゃあ私たちはアウランティウムの実を採取するね」


「スケッチの方はどうするのかしら?」


エレナが疑問の声を上げた。それにたいして皆は確かに、とスケッチの課題を思い出した。


「スケッチなんて本見て後で適当に写せばいいわ。確かあれだけ提出期限長かったし」


「そうね」


クリスタの言葉に皆は同意した。何も真面目に全ての課題をこなす必要はない。単位さえ貰えればそれで良いのだ。


「みんな、通信用魔導具持ってる? 採取し終わったら伝達すること、それからもし何かあったらすぐに連絡してね。それじゃあ、また後で」


二組はそれぞれ課題をこなすために森の中に入っていった。


---


「ふぅ、やっとあのうるさい奴と離れられたわ」


クリスタはため息まじりにつぶやいた。


『誰がうるさい奴ですって!?』


突然魔導具からアマーリエの声が響いてきてクリスタはビクッとした。


「あ、マイク切り忘れてた」


ぶちっ。慌てて切る。

クリスタは迂闊にも魔導具のマイクの電源を入れっぱなしにしていた。これではこちらの会話が向こうにだだ漏れだ。


---


「…」


「…」


アマーリエとアリスは無言で歩いていた。共通の話題も無かったし、お互い話すこともなかった。


カサカサッ


「きゃあー!蛇よ!」


何かが草むらを移動する音を聞いたアマーリエはそれを蛇だと思い込み、悲鳴をあげ、後ずさった。


「うわっ!いきなり大声出さないでちょうだい!ただの虫よ」


しかしアリスは冷静だった。反射的に剣を構えていたものの、ただの虫だとわかって剣を所定の位置に戻した。


「うぅ、ごめんなさい、そんなに驚かすつもりじゃなかったわ」


アマーリエは素直に謝った。


アリスは驚いた。彼女はアマーリエのことをプライドが高い貴族の令嬢だと思っていたので、まさか自分に謝罪するなんて思いもよらなかった。そう、アリスは、食堂での事件を一部始終見ていたのだ。だからこそ、その差に驚いた。


「別にいいわよ。…あなたはいつもそうしていればいいのに」


「どういうことかしら?」


「もっと素直になればいいのよ。私あなたのことあまり知らないけど、今のがあなたの素でしょう? でも、この間の食堂でのあなたは全然違ったわ。」


「確かに、今は限りなく素に近いけれど…。あなたも見てたのね、ええ、あなたの言う通りあの時は意図的にあんな態度を取ってたの」


「どうして?」


「クリスタが大嫌いだからよ」


アリスは薄々気づいていた。二人が犬猿の仲らしきことに。しかし、本人の口からはっきり聞いたのは初めてだ。


「やっぱりね」


「私、どうしてもあの人を許せないの。」


アマーリエは少し目を伏せた。


「あの人は、私が持っていないものを全て持っているから」


---


「あの二人うまくやってるかなぁ」


「さぁ、どうかしら」


一方、その頃クリスタとエレナは二人について話していた。


「アリスはともかくアマーリエが心配ね。ちゃんとできるのかなぁ、あの人箱入り令嬢だし」


「前から気になってたんだけど、あなたとアマーリエはどういう関係なのかしら?」


エレナが核心を突いた質問をした。


「どうもこうもただの他人同士よ。勝手に相手が突っかかってくるだけ」


「アマーリエのこと嫌い?」


「うーん、あまり好きじゃないわ」


「そう。なら良かったわ」


エレナはホッとした顔で頷いた。



それからさらに歩き、二人はついにアウランティウムの実を見つけることに成功。そのままノルマ分採取し、アマーリエに連絡を取ったのだが…


『はぁ、はぁ、今は、それどころじゃない、わ、またね、』


魔導具の向こうから息を切らしたアマーリエの声が届いた。

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